私の恋愛身分証明 第三話 フリースタイルな男 | なんやかんやあって最終的にYouTuberになった人のブログ

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ここではその情報やなんか適当にぺぺーいと記事書きますよ

 私は生娘ではない。人並みに恥じらう事はあるけれど、決して純粋ではない。
 容姿はどちらかというと童顔で、身長も160センチには届かない。女性のシンボルの最高峰をエベレストと例えると、残念ながら私は青色の猫型ロボットが住んでいる町の裏山程度だ。別に気にはしていない。顔面を大学で例えるなら、私の顔面偏差値はオックスフォード大学だから。残念ながら私の通う学校には日本を飛び出せるような顔面偏差値を持つ者は居ないようだ。

「もしもし? いま何してるの?」

「今? 何していたと思う?」

 一時期、知らない人と通話をする事を楽しむアプリに嵌っていた。容姿が可愛くても声が残念と言われる人もいる。私の場合、性格と山脈以外は優勢遺伝子の塊なので、もちろん声も一級品だ。
 あの口の悪いあいつからも"悔しいけど外見だけは認める"と言われた。思い出すとおもわず顔がにやけてしまう。ただ、喜びすぎた時に涎を垂らす癖は治した方が良いと忠告されたが、事実なだけに反論が出来なかった。

 当たり前の事だけれど、通話アプリには色んな人がいた。

・話が異常に面白い人
・ずっと"はぁはぁ"言ってる人
・純粋に出会いを求めている人
・ただただ暇を持て余している人
・体を求めている人

たまに相手の下半身が露出した状態で通話が始まる時があり、その場合は点数を付けて切ることにしている。

「お前って純粋だよな?」

「え?www」

 耳を疑った。私が純粋? あいつらしからぬ発言だ。純粋とは清廉潔白な交際をしている高校生カップルの事を言うべきだ。

「どこが?www」

「いや、ほら? 欲に対して純粋だろ」

 日本語は便利だと思った。正も負も、混じり気が無ければ純粋なのだ。
 私の肩書に純粋な女という称号が手に入った。

「確かにwww 治した方がいい?」

「人に迷惑かけてないなら良いんじゃない?」

「迷惑はかけてない!www」

「でも心配をさせたらだめだぞ」

「は?w お前心配してくれてんの?www」

 気にかけてくれていたのかと普通なら嬉しくなるのだろうが、あの頃私は"保護者かよ"としか思ってなかった。今思えばいつも見守ってくれていた。見守る事しかしないけど。

「心配しないわけじゃないけどwww そうじゃくて、愛花が心配していたぞ?」

「なんて言ってた?」

 愛花は過保護なくらい心配をしてくれる。ありがたいとは思うけれど、私としては愛花の方が心配になる。自分に自信がなく、"私なんかが"と自虐に走る。正義感は強いが、八方美人なところもあり中途半端になる事も屡々ある。体型はだらしのないフォルムになっているけれど顔のパーツや配置は良い。所謂、痩せたら可愛くなる系女子。それが愛花だった。

「なんか怪しげなアプリに嵌ってるって」

「わろたwww」

「何してんのお前www」

「え?渡辺さんだけど?」

「あね、お前の暇なんだな」

「うんwww」

 この頃から、多くを語らずとも理解してくれるようになっていた。

「刺激を求めるもの良いけどさ?もっと裏でこそこそやれよwww 愛花から心配する連絡が来るんだよ」

 愛花は私に何かあるとすぐにあいつに連絡をする。それをいつも"放っておけ"と一蹴するらしいが、なんだかんだ優しさを見せる。そんなあいつの事を愛花は"おとん"とたまに呼ぶらしい。なぜか愛花の母もあいつの事を認識しているらしく、良い人だねえと呑気な事を言っていると聞いた。あいつの存在感半端ない。

「知らないよw 既読無視したら?www」

「いや、未読無視しとくわwww」

「ひどいwww」

 別にいじわるで既読無視をしているわけではなく、愛花は熱くなると長文を送ってくるので読み終えた後に力尽きるのだ。

「ねえねえ?愛花って痩せたら可愛くなると思わない?」

「痩せたらね」

「だよね! お前から言ってよ! ささみが言ってもダメなんだよ」

「面倒くさっ!」

「いいじゃん!」

「だって愛花は痩せたら可愛いと言われて満足してる感じあるだろ?」

「ある」

「だからトラウマレベルで罵倒くらいされないと痩せないよ? だから本人のやる気次第」

「絶対可愛くなるのに…もったいない」

 この私が認めるレベルなのに努力をしないなんて意味がわからない。この優勢遺伝子の塊の私でも、肌のケアやメイクの研究、洋服の着こなしと努力はする。ダイヤモンドの原石を持っていても、磨かなければただの石。あいつは愛花にそう辛辣に言ったとか言わなかったとか。泣くから手加減してあげてとお願いした事もあったけれど、そんな配慮をあいつがしてくれるわけがない。ただ、それが功を奏していたのか数年かけて愛花は少しずつ綺麗にはなっていった。全然関係のない話だけれど。

「まあ、ほどほどにな」

「うんwww」

 この手のプライベートな遊びに関して、あいつが干渉してくる事はほぼない。むしろ楽しんでいる節がある。危険性や自己防衛を促させる事はあるけれど、そんな事はわかっているから話を聞いたふりだけしているし、それを指摘もされる。何もかも見透かされている。最後に“お前バカだから"と付け加えられる

 一言多いんだよ 本当嫌なやつだ

 私が渡辺さんをする理由は暇だからというのもあるけれど、刺激のある生活がしたいからに他ならない。
 そんな私を刺激するかのように魅力的な男が現れた。その男はフリースタイルのダンサーで、顔はイケメンだった。話も面白かったけれど、ダンサーという未知の領域は私にこれまでにない刺激を与えてくれた。

「会わない?」

「いいよ」

 あいつ曰く、私は"ちょろい女"らしい。それは自分でも薄々は自覚はしていて、特に肩書きに弱い事に気付いた。それ故にフリースタイルのダンサーと聞いて会わないという選択肢はなかった。

 想像通り、この出会いは刺激的だった。NORIと名乗る男は私の目の前で道具を使いながらダンスを踊る。
その姿は鮮明に覚えている。ただただ格好よかった。

 色んな話をした、どれも新鮮で楽しい時間だった

 その日のうちに家へ遊びに行った

 遊びと分かっていた、私もそうだ

 たまたま利害が一致して、出会っただけ

 会ったその日にSEXをするのはいけない事なの?

 わからない

 楽しければいいじゃん

 次の日、また日常に戻っていく。あれからNORIとは連絡すら取っていないし、興味も薄れていた。感傷に浸るような悲劇のヒロインみないな思考をしていない私はには楽しかったとしか記憶にない。
 精神的に不安定だから男に依存していると勘違いして説教する大人もいるけれど、違う、そうじゃない。
 自分が楽しいと思える事をしているだけで、カラオケが好きだからカラオケに行く!その感覚と一緒なのだ。私の場合、カラオケではなく好奇心と刺激ある出会いだっただけで、そこに大きな違いはない。
 ただ、相手がそこそこ有名なダンサーだったというだけのお話しだよ。

 私の前をダンサーが通り過ぎて行った。