「なに、あほう見たいに叫んでんだ。席につけー」
教室の前の扉が開き、スーツ姿の女性が入って来た。髪型は、フロントサイドに縦巻きロールでバ ックはストレートの黒髪だ。スーツのスカートからすらりと伸びた美脚は大人の女性と言った感じ だ。
女性は黒板前の教壇に立つと、教室全体を見回した。女性が教壇に立つとファッションショーでも始まるかのような雰囲気を出していた。
女性は立っている智也をみた。
「男女(おとこおんな)もこのクラスか、ノンケ宣言とかマジないわ。立ってないで早く座りな」
女性は威圧的に智也に話しかけた。
「クソが……」
智也は女性を睨め付けながら座った。その様子をみて、女性は右手を額につけてため息をしたあと、再び教室内を見回した。
「これから、このクラスの担任になった、神木静枝(かみきしずえ)です。よろしくお願いします」
女性は先程の智也への口調とうって変わって、笑顔で優しく微笑んだ。
「おい、智也」
春は前に座っている智也の背中をつついた。
「神木ってもしかして」
「俺の姉貴だ」
智也は前を向いたまま小さく言った。
「美人な姉さんだな」
「見た目だけな」
教壇に立っている静枝は手元にある座席表に目を通した。そして、春に目を向けた。
「宇町くん、先生が話している時は静かにしましょうね」
静枝がそう言うと、別の生徒が手を挙げた。静枝は再び座席表を見る。
「刀利さんどうしました?」
「静枝先生は神木智也くんと同じ苗字ですけど、お姉さんか何かですか?」
利亜の質問に静枝はにっこりと笑顔を作った。
「嫁ですよ」
静枝は笑顔のまま言った。


第11話へ
第一話へ

↓この回が良かったと思っていただけたなら1票(クリック)お願いします↓
     
人気ブログランキングへ
読者登録してね
ペタしてね

「クラスも分かったとこだし、早く教室へ行こう」
 劉勇は理亜が鞄の中にクッキーをしまうのを確認すると、すかさず言った。
春と劉勇は二年の教室へ向かうべく、同じ方向へ歩きだした。そして、なぜか理亜だけが真逆の方向へと足を運んだ。
「おい、お前どこへ行くんだ?」
 春は理亜の肩に手を置き、制止させて言った。
「教室へ行くところだけど?」
 理亜の返答に春は呆れ顔になる。
「理亜は何年生になったんだ?」
 横で見ていた劉勇が質問した。
「あっ……、そう言えば私たちもう二年生なんだよね。一年生の時の教室に行くところだったよ」
 理亜は恥ずかしそうに答えた。
「いま、お前が俺たちにクラスを教えてくれたんだろ。なにやってんだよ」
 春は笑いながら理亜を指差して言った。
「てへへ、ついつい。すいませんでした」
 理亜は恥ずかしさと笑顔が混じった顔で言った。
 三人は改めて、二年生の教室へと向かった。二年生の教室は校舎の二階にあるため、三人は階段を上った。
「それじゃ、俺はA組だから」 
 階段を上りきったあとで、劉勇は春と理亜に別れを告げ、A組の方へ歩いて行った
「ゆゆちゃんまたね」
 理亜は劉勇に手を振った。
「俺たちはこっちだな」
 春と理亜はC組の方へ歩いて行った。
 二人が教室の中へ入ると、教師はまだ来ておらず、教室内は生徒の話し声でガヤガヤしていた。どうやらクラス替え効果の影響で、各々の生徒が新しくクラスメイトとなる者と話していたり、挨拶したりしているようだった。
クラス替え当日の何だかぎこちない雰囲気が漂っていた。
「しゅんくん。間に合ったみたいだね」
 誰も立っていない黒板前の教壇を見て理亜が言った。
「そうだな。クラス替え当日に二人揃って遅刻したら、色々と面倒なことになるからな」
 春はクラス内の男子の視線を感じながら言った。というのも、理亜はけっこう男子から人気があったりするのだ。
「どういうこと?」
 理亜は首を傾げながら春を見た。
「お前はもっと、自分と言うものを自覚した方がいいぞ」
 春は理亜だけに聞こえるような小さな声で言った。その言葉に理亜は再び首を傾げるのであった。
「しゅんー。お前の席はここだぞー」
 教室の真ん中あたりから、席に座ったまま春に向かって手を振る生徒がいた。髪はショートヘアーで茶色く、後ろ姿はまるで女子みたいな男子だ。実際、前から見ても女の子みたいな顔つきをしており、そこら辺の女子と比べても可愛い部類に入ってしまう。彼の名前は神木智也(かみき ともや)、一年生の時から春と同じクラスである。
「お、智也おはよう」
 春は教室の入口から右手を挙げて挨拶した。
「じゃあ、私はこっちみたいだから」
 理亜も友達から手招きをされて、そちらの方へ向かった。理亜の席は廊下側の前から三番目のようだった。
 春は手招きをし続ける智也の方へ向かい智也の後ろの席に座った。机の右上には名前のシールが貼ってあり、始めから誰がどの席に座るのかが決まっているようだった。春の席は、教室のちょうど真ん中の列の六席あるうちの前から四番目であった。
 春は席に座ると鞄を机の上に置き、周りを見渡した。生徒のほとんどは、まだ立ち歩いたり、おしゃべりをしていた。
 そう、クラス替えの当日と言うのは誰もが自分の立場を得るために必死だったりするのである。もし、この場で黙っていたりしていようものならば、寂しい奴というレッテルを貼られ、この先ずっとクラスに溶け込めなくなったりするのだ。
 しかし、目の前の智也からはそんな必死さは感じられなかった。
「智也、お前は他の奴としゃべったりしてねーの?」
 春は、席に座り片足を組んで余裕そうにこちら側を向いている智也に話しかけた。
「してないよ」
 智也は別に気にする様子もなく答えた。
「俺が来るまで、お前は何をしていたんだ」
「黙って座っていた」
「お前、いいのか? クラス替え当日にそんなんじゃこの先、大変だぞ?」
「別に気にしてないけど」
「俺にはお前のその余裕さが理解できねーよ」
「そうかな? 俺はただ、しゅんと話しができればそれでいいんだけどな」
 その言葉に、なぜか周りの女子からの冷たい視線が春に突き刺さった。智也も実はその容姿から、女子から絶大な人気があったりするのだ。
(なんで俺は朝から、男子と女子のダブルから冷たい視線を受けるはめになるんだよ……)と、春は心の中で思うのであった。
「智也、今の台詞マジなの?」
 春は真偽を確かめるように、恐る恐る尋ねた。
「嘘はつかないよ」
 再び春に女子からの冷たい視線が浴びせられた。
「撤回しろよ。な?」
「ほんとのことだし」
「つまりあれか、お前のその余裕は俺と話が出来ればそれでいいと言うところから来ているのか?」
「まあ、そうなるね」
 智也は笑顔で答えた。
「俺、背筋に寒気が走るんだが……」
「しゅん。俺はノンケだから大丈夫だ」
 智也は真顔になり、真剣な表情で言った。その言葉に、周りの女子から安堵のため息が聞こえて来るような気がした。
「俺、自分でノンケ宣言するやつを信用できないんだけど……」
 春は疑いの眼差しで智也をみた。と、そのとき、春の背中をツンツンと突っつく者がいた。
 春が後ろを振り向くと、小柄で小太りの生徒が後ろの席に座っていた。
「は、はじめまして、ぼ、僕の名前は影取拓磨(かげとりたくま)です」
 その生徒は春に目を合わせることもなく、下を向きながら自己紹介をした。
「俺は宇宙町春(そらまちしゅん)。これからよろしく。少し失礼かもだけど、あまり見ない顔だね。一年生の時はなん組だったの?」
「僕は、B組だったんだ。でも、学校にはぜんぜん来なかったから……」
「どうして?病気だったの?」
 春は何気なく尋ねた。
「ちょ、ちょっとね……。ところで、そらまちくんの前の席の人は男? 女?」
 拓磨がその質問をすると、春の表情がニコリと笑った。
「自分で聞いてみ」
 春は楽しそうに答えた。
「で、でも、そんな質問は失礼だし」
「いーから、いーから」
 春は下を向いたままの拓磨の肩をポンポンと叩きながら言った。
「で、でも……」
「おい、智也、拓磨くんがお前に質問があるみたいだぞ」
 春は、躊躇する拓磨をよそに智也に話しかけた。
「どうした?」
 智也は拓磨を見て言った。
「で、で、でも」
 拓磨は始めて顔を上げて、春に助けを求めるような眼差しを送った。
「いーから、言ってみろって」
 春は首で智也をさしながら拓磨に言った。その言葉に決心がついたのか、拓磨は息を吸った。
「き、き、きみは!ど、どっちなの!」
 拓磨は緊張のあまり、声に変な力が入りつい大声を出してしまった。春もその予想だにしない大声に目を丸くした。
 クラス中が一気に静まりかえり、拓磨へ視線が集中した。クラス中の視線を浴びた拓磨は顔と耳を真っ赤にして、下を向いた
 すると、クラス内の多方からヒソヒソ声が聞こえてきた。
「おい、あれなんだ?」
「私、みたことあるかも」
「なんで今更学校きたんだ」
「ちょっとキモくない?」
「あいつ、入学直後にパシりにされてたやつじゃね」
「ははは、なにそれただのイジメじゃん」
「俺だったら学校これねーわ」
「キモ拓ってあいつか」
「私も聞いたことあるー」
 それぞれの本当に小さな声が幾重にも重なり、軽蔑や蔑む視線と共に一気に拓磨に押し寄せた。
「ぼ、僕……」
 拓磨の声は震えていた。
「……」
 その様子を見ていた春は、どんな声を掛けていいのか迷っていた。
「ぼ、僕、今までの自分を変えたくて……。このままじゃダメだと思って……。学校に来たのに……。声も頑張って掛けたのに……来ないとよかった……馬鹿だった、甘かった。こんな僕が受け入れてもらえるはずないんだ。帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい」
 拓磨は目に涙を浮かべて下を向き、つぶやいていた。春は拳を強く握った。未だに、どう声を掛けていいのかわからなかったが、努力している人を笑うのは許せなかった。この状況で立ち上がれば、春自身の立場も危うくなるだろう。いじめの対象にも成りかねない。しかし、目の前の状況を無視して得られる立場なんていらなかった。ほうっては置けなかった。
 ガタンッ! 春は無意識のうちに立ち上がっていた。クラス中の冷たい視線が春に対象を変えた。春が声を出そうと息を吸った次の瞬間、
「俺は!! 男で!! ノンケだーーーーー。そう、つまり女の子が好きなんだーーーー!!」
 智也は突然立ち上がり、両手を上げて叫んだ。その声は周りの声をかき消し、春への視線も遮断した。一瞬の沈黙のあと、クラス内で笑いがおこった。
「おい、なんだよあれ」
「ははは、あれ智也って言うんだよ」
「残念なイケメン」
「いいぞー」
 クラスのあちこちから声援やら笑いが聞こえてきた。それは、先程までの状況を一変させた。
「と、智也くん……」
 拓磨は上を向き、智也を見た。その様子を見ていた智也は、立っている春に向かって、軽くウインクをした。
第12話へ

第10話へ
第一話へ

↓この回が良かったと思っていただけたなら1票(クリック)お願いします↓
     
人気ブログランキングへ
読者登録してね
ペタしてね
 春(しゅん)と劉勇(ゆゆ)は校門を突破すると、東堂を回避すべく、正面から玄関へ向かわず、門の右横からわき道にそれて、校舎の周りを回るように走っていた。
「どこか、扉か窓は開いていないか?」
 劉勇は走りながら言った。2人は開いている窓を探しながらフェンス沿いを走っていた。
「ん? これは」
 途中で春はフェンスに無造作に穴が開いているのに気がついた。その穴は、ひと一人がしゃがんで通れるくらいの穴だった。
(これを使っていれば、もっと簡単に敷地内に浸入できたよな……)
 春は心のなかでそんなことを思いながらも、口にはださず、今度遅刻したらこの穴を使おうと思っていた。
「おい、しゅん。あそこの窓が開いているぞ」
 前を走っていた劉勇は足を止めて、開けっ放しの窓を指差した。春は劉勇の指差した方を確認する。
「家庭科室か。よし、あそこから入ろう」
 春は劉勇の言葉に応じた。
 2人は開けっ放しの窓へ近づいて行く。
 劉勇は窓の近くにいくと、中へ入るべく、足を窓の縁に掛けた。
「ん?何か、甘い臭いがしないか?」
 劉勇は窓に足を掛けながら、周りの臭いを確かめるようにして言った。
「するな。お菓子みたいな臭いだよな」
 春も甘い臭いを感じとった。

「ちみたち!遅刻はいけないのだぞ!」
 不意に、部屋の中から高くて子供っぽい声が聞こえてきた。劉勇は窓を飛び越えて部屋の中に入り、声のする方を見た。
 そこには、ピンク色のショートの髪に制服の上からエプロンを着て丸イスの上で足を組んで座っている女の子がいた。
 テーブルには、白のテーブルクロスがひかれ、その上にはアップルティーの入ったティーカップと、お皿には数枚のクッキーが並べられていた。ちなみに、ティーカップとお皿は家庭科室の備品である。

 劉勇のあとに、春も窓を飛び越えて部屋の中へ入ってきた。
「なんで小学生がいるんだ?」
 春は奥でティータイム中の女の子を見て言った。
「わっ、わっ、私は小学生じゃないのだ!高校三年の高槻マリアなのだ!」
 マリアと名乗った少女は顔を赤くして、早口で答えた。
「ところで、お嬢ちゃんはここで何をしていたのかな?」
 劉勇は幼稚園の子供に尋ねるような口調で言った。
「マリアは……」
 少女は目に涙を浮かべて、今にも泣きそうに呟いた。ティーカップに手を掛けた少女の手には力が入り、カップと受け皿がカタカタと小さな音を立てた。
「はぁ。ゆゆ、小さい子を泣かせちゃだめだろ」
 春は呆れたようにため息をついた。
「マリアは……マリアは……泣かないもん!」
 マリアの持つティーカップが先程よりも大きな音を立てた。
 そして、今にも泣きそうな表情を沈めるためにアップルティーを口に含んだ。
 しかし、
「熱っ!」
 少女は小柄な体をビクつかせて、瞬時に目をつぶった。目に浮かべた涙が飛び散りそうな勢いだ。
「おい、やっぱり泣きそうだぞ」
 春は劉勇の耳元に小声で囁いた。
「グスンっ」
 少女は鼻をすすると、左手でエプロンの端を持って目を拭き、ゆっくりとティーカップを受け皿の上に置いた。そして、組んでいた足をほどいて、再び二人を見た。

「ところで……ちみたちのその制服は二年生のものなのだ?上級生のレディにはそれなりの聞き方をするのが紳士なのだ」
 マリアは指をさしながら、まだ赤い顔のまま言った。
「ゆゆ、時間が無いからもう行こうぜ」
 春はそう言って、家庭科室から出るために少女に背を向けた。
「ごめんね。僕たちもう行くから」
 劉勇は申し訳なさそうに言うと、少女に背を向けた。
「グスンっ。グスンっ」
 春と劉勇が歩き出そうとすると、後ろから鼻をすする音が聞こえてきた。その音はまるで、わざと 2人に音が聞こえるようにしている感じだ。
「マリアは……マリアは」
 少女に背を向けた春は、肘で隣にいる劉勇のうでを小突いた。
(わかったよ)
 劉備は小声で呟いた。
「高槻さんだっけ?先輩はここで一体何をなさっていたんですか?」
 劉勇はぎこちなく聞いた。
「ふふーん」
 先程まで泣きそうだった少女は一変して、敬語を使われたことに何だか嬉しそうだった。
「授業に出る前に、ティータイムをして心を落ち着かせて、清らかな心で勉学に勤しむのが、淑女のたしなみなのだ」
 マリアは自慢気に答え、静かにティーカップを口へ近づけた。
「でも、ゆっくりしすぎじゃねー? これじゃあ先輩も遅刻ですよ?」
 春は首を掻きながら言った。
「ふふーん」
 マリアは再び自信満々に喉を鳴らした。
「マリアは、すでに二時間前からここにいて、クッキーを焼いていたのだ! つまり、ちゃんと時間前に登校完了なのだ。よって、遅刻ではなーいのだ」
 マリアは笑顔で答えた。
「確かに」
 春は感心したように頷いた。
 その様子を見ていた劉勇は呆れていた。
「家庭科室を勝手に使うのは駄目ではないのだか?」
 春は再び少女に尋ねた。
「おい、しゅん。うつってる、うつってる」劉勇は平手で春の肩にツッコミをいれた。
「あっ、ついつい」
 マリアはその様子を首を傾げて見ていた。

「マリアがここを使っていても、誰も注意はできないのだ。そうだ、マリアと話してくれたお礼にこれをあげるのだ」
 そう言ってマリアは、二人の元へと歩いていき、可愛い袋でラッピングされたクッキーの入った袋をそれぞれに手渡した。
「マリアからのプレゼントなのだ」
「ありがとうございます」
 二人は声を揃えて言った。
「それじゃ、先生に怒られないように、早くいくのだ」
 そう言って、マリアは二人を家庭科室の出口の方へ向かせると、二人の背中を優しく、ポンと押した。
 春と劉勇は促されるように、家庭科室の出口へ向かった。途中で春が少しだけ、後ろを振り向くと、マリアは立ち尽くし、床を見ていた。
 春はその様子を見て、再び声をかけようとしたが、
「いいから、行くのだ」
 とマリアに言われて、そのまま家庭科室を出た。

「しゅん。下駄箱前の掲示板にいくぞ」
「え、何で?」
「二年になったらクラス替えだろ、俺たちがどのクラスになったか見に行かないと」
「あ、そっか」
 二人は下駄箱へ向かって走って行った。

 二人が下駄箱前の掲示板へ着くと、すでに理亜がクラス表を見ていた。
「理亜、俺たちのクラスどうなった?」
 春は息を切らし、膝に手をついて尋ねた。
「うんとね、私としゅんくんはC組で、ゆゆちゃんはA組だよ。あ……三人一緒になれなかったね」
 理亜は残念そうに答えた。
「はぁ」
 劉勇は深いため息をついた。
「ところで、二人とも手に持っている可愛いのは何?」
 理亜は春と劉勇の手に握られた、可愛い色の袋で包装されたクッキーに気が付いた。
「ん?」
 春と劉勇はお互いの手を確認した。
「おい、ゆゆ。お前、それどうしたんだ?」春は不思議そうに劉勇に尋ねた。
「お前こそ、それどうしたんだよ?」
 劉勇も、何がなんだわからないと言った表情で尋ねた。
「二人とも変なの」
 その様子を見ていた理亜も不思議そうに言った。
「まあ、いいや。理亜、これやるよ」
 春は理亜にクッキーを渡した。
「俺のも、はい」
 劉勇も理亜にクッキーを渡した。
「二人ともいいの?」
「俺らも良くわからないし、可愛いのお前好きだろ、だからやるよ」
 春は何気なくクッキーを手渡した。
「二人ともありがとうー」
 理亜は気味悪がる様子もなく、笑顔でクッキーを受け取ると、嬉しそうにそれを鞄の中にしまった。

第11話へ
第九話下編へ
第一話へ

↓この回が良かったと思っていただけたなら1票(クリック)お願いします↓
     
人気ブログランキングへ
読者登録してね
ペタしてね
「それでは、行ってきます」
 理亜は、春と劉勇に敬礼をしながら言った。
『ご武運を祈る』
  春と劉勇は口を合わせて、静かに敬礼をした。
 理亜は鼻息と共に頷くと、門の前に立っている東堂の元へと歩みを進めた。
「お、刀利!遅刻はいかんぞ!」
 東堂が先に、声をかけた。
「とーどう先生!」
 利亜は堂々とした態度で東堂の名前を呼んだ。
「お、おう」
 いつものおっとりした利亜から、気合いたっぷりに名前を呼ばれ、東堂は少し動揺した。その様子を、後ろで覗いていた春は
「いいぞ、もっとヤレー!」
 と呟き、何だかうれしそうだ。

「とーどう先生!私、怪我をしている猫を助けていて遅れました!」

「ん?何処かで聞いたことのある理由だが?」
 東堂は顎に手をあてて、首をかしげた。
「まあ、いいだろう。刀利、良いことをしたな。通って良いぞ」
 東堂は笑顔でそう言うと、利亜をすんなりと通した。
「なんだよあれ!あいつ、俺をペットショップで働かせたことを忘れてやがる!しかも、俺のときはダメだったのに、利亜をすんなりと通したぞ!」
 春は苛立ちながら言った。
「春、しょうがないよ。あれがピュア感てことなんだ」
 劉勇は春を慰めるように言った。
「理不尽だ……、理不尽だ……」
 春はブツブツと繰返していた。
  一方、東堂を難なく通過した理亜は下駄箱へ向かう途中で足を止めた。
 再生中の映像を急に一時停止した感じだ。

「おい、劉勇。あれなんだと思う?」
 停止した理亜を見て、春が劉勇に尋ねた。
「あれは、思考停止してるね。おそらく、東堂先生を引き付ける方法が思い浮かばないんだ」
(どうしよう……どうしよう……どうやって、東堂先生を引き付けよう……)
 理亜の額から汗が滲みでる。
「あ!ゆーふぉーだ!」
 理亜は唐突に大声を出した。
「ん?」
東堂は一瞬だけ後ろを向いたが、すぐにまた前をむいて、そのまま、
「刀利、変なことは言わずにさっさと教室に行きなさい」
 と言って、聞き流した。
(うー……どうしよう……東堂先生、全然反応してくれないよー。よーしこうなったら)
「あ!隕石が落ちてくるよ!しかも学校に直撃コースだよ!」
 理亜は再び大声を出した。
「わかったから、さっさと行きなさい。あまり先生をからかうんじゃない」
 東堂は振り向きもせずに、肩越しに猫でも追い払うかのように手を振った。
理亜の様子を見ていた春は
「おい劉勇、あいつ一体なんなんだ?なにがしたいんだ?」
 と指をさしながら言った。
「しょうがない。理亜は嘘がつけないんだよ」
 劉勇は呆れた口調で言った。
(どうしよう……どうしよう……もうダメだよ……どうすればいいの!)
 理亜は切羽詰まり、手をバタバタとさせながら、騒がしく行ったり来たりしていた。
「俺、素直に罰を受けるよ」
 春はため息を付いた。
そんな春の肩に軽く手を置いた劉勇は
「すまない、俺が行っていた方が、まだ何とかなった気がした」
 と、春を慰めるように言った。

  2人は諦めた……

「それじゃ、行こうか」
  劉勇が春の肩を軽く叩き、いざ東堂の元へ行こうとした次の瞬間
 
「きゃうんっ!!!」
 門の向こう側から、悲鳴が聞こえてきた。
春と劉勇は思わぬ悲鳴に、門の向こう側へと目をやる。
当然、自分のすぐ後ろで、悲鳴を聞いた東堂も、思わず振り返った。
そこには、ピンクのシマシマがあった。
 そしてそれは強烈に目に飛び込んできた。
(おー……)
春と劉勇はもちろん、東堂までもが感嘆した。
そこには、まるで見せつけるかのように、お尻をつきだして転んだ理亜の姿があった。
ふっくらとした白い太ももの付け根には、白とピンクのシマシマの布があり、それは、やわらか そうな肉を押さえつけ、滑らかな曲線の丘を描いていた。
めくり上がった訳でもなく、自然と見えてしまった感じの短いスカートがまた男心を揺さぶった。

「いてて、自分の足につまづいて転んじゃったよ」
 理亜は態勢を立て直しながら、恥ずかしそうに言った。
そして、よくいう女の子座りの態勢になった。
ここで、理亜は東堂と目が合った。
「先生……私の……見た?」
 理亜は顔を赤らめながら小さな声で尋ねた。
「先生は先生だから見てないぞ」
 東堂は首を振りながら、早口で答えた。
「むー。先生の……エッチ」
 理亜は東堂に疑いの目を向けた。
「だからっ、先生は見ていないと言っているだろう」
 東堂は動揺が隠せなくなっていた。

「おいっ春!今のうちだ」
 劉勇は春の手を引っ張った。
「理亜、ありがとう」
春は理亜のパンモロにお礼をいったのか、囮となってくれた理亜にお礼をいったのか、さだかではないが、門の方へ走りだした。

春と劉勇が門を通過する際に、それを見つけた理亜は2人に対して、親指をつき立てた。
春と劉勇も理亜に親指をつき立てて応じた。
理亜の行動に不信を持った東堂が門の方を振り返ったときには、すでに2人の姿は無かった。

第10話へ
第九話上編へ
第一話へ

↓この回が良かったと思っていただけたなら1票(クリック)お願いします↓
     
人気ブログランキングへ
読者登録してね
ペタしてね
私は一体なにを描いているんだ……(;´д`)トホホ…

右はまあまあうまくいったんだけど、左が微妙……。キャラが左よりのときの練習が必要ですね!

影、線は途中で疲れてテキトウです
$小説
ポージングの練習で色々描いてるけど……なんか方向性がズレてきたような( ̄□ ̄;)
気にしない♪気にしない♪

↓この回が良かったと思っていただけたなら1票(クリック)お願いします↓
     
人気ブログランキングへ
読者登録してねペタしてね
エヴァの映画公開に触発されてアスカ描いてみましたが……失敗。(´д`lll)
バランスや線の描き方が納得いきません(´□`。)
まあ、練習なんで一応UPします。
いつか描き直します!!
$小説

↓この回が良かったと思っていただけたなら1票(クリック)お願いします↓
     
人気ブログランキングへ
読者登録してねペタしてね