MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

「外国人医療通訳者のための医療日本語講座」(全3回)

2024-04-01 11:03:03 | 通訳者のつぶやき
MEDINTの2024年度がはじまりました。
そのまえに、2023年度の活動報告がまだできていなかったので、
ブログを使って、皆さんにお伝えします。
HPには、もっと詳細な内容をあっぷしますので、そちらもご覧下さい。

まずは、「日本語を母語としない医療通訳者のための医療日本語講座」です。

日本で開催される医療通訳向けの研修は、そのほとんどが日本人通訳者向けに企画されてきました。
しかし、技能実習生、留学生、技能・人文知識・国際業務の在留資格をもつ比較的若い労働者が全体の3割を超える中で
通訳言語が多様化し、その多くを、日本語を母語としない通訳者が担うようになっています。
そのため、言語の多様化に伴い医療通訳研修のあり方も変えていかなければなりません。

今回は、今後の医療通訳研修(言語)のあり方のモデルケースを作る目的で行いました。
工夫した点は、医療者(看護師、医師)と日本語教師がペアになって講義を行うことです。
毎回、事前に打ち合せを行い、日本語教師が単語ノートを作成し、それに基づいて医療者が、
場面の説明やどうしてそういう表現をするかなどを説明します。
最初の30分を医療者の説明、次の30分を日本語教師の解説、そしてそのあとの30分を質疑応答、
最後の30分はフリートーク(なんでも話そう!)としました。
小児科場面の言葉は地域の言葉が多用されるため、今回は「関西弁」がよく使われ、
関西以外の参加者には少し違和感があったかもしれません。
また、議論の中で、医療通訳者が疑問に思っていても聴くことができないことや、
それぞれの文化の違いの紹介、薬の使い方等言葉だけでなく、医療についての勉強にも結びつけることができました。
国籍や使う言葉は違っても、共に学ぶことが実証できたことは、
今後の医療通訳研修にとってのモデルケースとなるので、
今後も、助成金がとれれば何らかの形で開催を検討したいと思っています。
引き続き応援よろしくお願いします。

日本語を母語としない医療通訳者のための医療日本語講座 申込25名
第1回 2023年12月17日(日)10:00から12:00「小児看護の日本語」
講師 りんくう総合医療センター国際診療部看護師 新垣智子さん
   にほんごサポートひまわり会 代表 斎藤裕子さん

第2回 2024年1月14日(日) 10:00から12:00「痛みを伝える」
講師 AMDAひょうご副代表・医師 中川卯衣さん
   にほんごサポートひまわり会 代表 斎藤裕子さん

第3回 2024年1月28日(日) 10:00から12:00「こどもの風邪」
   講師 AMDAひょうご副代表・医師 中川卯衣さん
   にほんごサポートひまわり会 代表 斎藤裕子さん
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ずいぶんご無沙汰してしまいました。

2023-11-13 17:46:01 | 通訳者のつぶやき
前回の投稿から半年以上経過しました。
すっかり空気は秋から冬へ。
「そよ風」から「木枯らし」へ。
季節の移り変わりの速さになかなかついていけません。

私自身はSNSを一切やっていないので、
直接お会いするか、メールで連絡を取る人以外の人と
情報交換する機会が少ないのです。
活動を続けながら、こんなことも、伝えられればいいなあと思いつつ、
ブログへの投稿もずいぶんしてなかったなと反省しています。

このブログを書きながら、書くことができる喜びを感じています。
正直に言うと介護と看取りを繰り返していたここ10年ほどは、
文字を読んだり書いたりすることが、とても苦痛でした。
頭の中が散らかっていたんだなと思います。

コロナ禍では、外国人相談での対応が精一杯でした。
世の中がオンラインになったことにも、
年齢的に逃げ切れると思っていたのに、逃げ切れませんでした(笑)。
そんなこんなで医療通訳がお留守になっていた部分もあるので、
MEDINTのリフォームも考えていきたいと思っています。
今後ともよろしくお願いします。




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南海トラフ地震を想定した医療通訳研修2022

2023-04-01 22:14:44 | 通訳者のつぶやき
MEDINTの年度は、4月から3月です。
3月で一旦2022年度の活動を総括し、
4月からの新しい年の計画を立てるのですが、
2020年からの3年間は、研修を活動の中心とする団体には試練の年でした。

コロナ禍までは、すべての研修は5言語同じ日に西宮市で開催していました。
他の言語の方々と入れ替え時間に顔を合わせて情報交換したり、
他の言語の研修をちょっとのぞいてみたり、
それはそれで、貴重な時間だったと思います。
ただ、ご対応いただいた先生方は大変だったと思いますが、
集合研修が難しくなって、ZOOM研修に切り替えたことで、
関東や東海地方のベテラン医療通訳さん達が
研修に参加してくれるようになり、研修レベルがあがったことは
うれしい誤算でした。

MEDINTは、5言語分科会の研修会を年4回開催することと、
毎年ワンテーマで医療通訳について社会啓発をしています。
コロナ前はシンポジウムを行って、記録冊子を発行していましたが、
コロナ禍では、集合することが難しかったために
いつもと違う形式での研修会を行いました。

2023年のテーマは「南海トラフ地震を想定した医療通訳」でした。
兵庫県国際交流協会の民間国際交流事業助成金をいただいて、
私自身、阪神淡路大震災の時は被災をして、すぐに言語支援を行えませんでした。
でも、その頃にはなかった携帯電話やインターネットが今はあります。
コロナ禍で、医療通訳は同行ありきではないということが、
多くのかたに理解されたと思います。
災害現場も、医療通訳者が行くよりも、遠隔で通訳を行う方が合理的です。
岡山のAMDAでは、来るかもしれない「南海トラフ地震」を想定して
様々な取り組みをしています。
その会議に出席したときに、被災地にWifiを持って行くというお話しをされていて
それであれば、私たちもZOOMなどで被災地の外からでも通訳ができると思いました。
ただ、被災現場を通訳者が知らなければ、何が起こっているのかがわかりません。
今回の研修では、発災直後の72時間ではなく、
生活を立て直していく発災後数ヶ月間の通訳を想定した内容を扱いました。
海外の災害現場や東日本大震災の被災地を経験された医師や助産師のみなさんに
災害現場で必要な知識についてのお話しをしていただきました。
テーマとしては、避難所で起きる病気や避難所の公衆衛生、異文化における避難行動などを
講師の先生方には経験を交えたお話しです。
また、5言語の先生方には、それぞれ災害時に想定される言語分科会も開催していただきました。

実は、これには続きがあります。
できれば、実際の避難訓練で遠隔通訳を使ってみようという取り組みです。
今回の講師をご紹介下さったAMDAひょうごさんと、近いうちにできるようにと話しています。
また、その際に、電話でもいいのですが、せっかくwifiがあるのであれば
ZOOMを使ったビデオ通訳を想定したいと思っています。
通常の通訳ではZOOMはセキュリティに問題があると言われていますが、
災害時では、誰でも使える汎用性が重要です。
会員さんからの提案で、ZOOMの使い方講座も急遽追加しました。

「医療通者者が社会にどう役に立てるのか」
医療通訳者として常に考えて準備しておくことはとても大切なことです。

医療通訳は、単に言葉を右から左に何も足さずに置き換える仕事だと思われていますが、
実際はもっと奥深い活動であると思っています。

今年は、医療通訳者のための「日本語」の研修会を行います。
2年前に母子保健で開催して、とても盛り上がりました。
今回は内科など基本的なところから初めて、できれば言語分科会になればいいと考えています。

2023年度もよろしくお願いします。




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MEDINTも成人式です

2023-01-15 00:09:35 | 通訳者のつぶやき
医療通訳研究会(MEDINT)は2002年10月に活動を開始しました。

昨年、2022年はちょうど20周年に当たります。

コロナ禍で医療関係や外国人支援者のみなさんも
まだまだ安心できないなかで、お祝いムードとはいかなかったのですが、
とりあえず、会員さんたちと2つの記念行事を行いました。

ひとつは、MEDINT設立当初から、ずっとご支援いただいている
AMDAひょうごさんとのコラボ企画で、「医療通訳者のための災害支援研修」です。
これは、被災地支援のエキスパートの先生方に研修をお願いして、
南海トラフの際に、被災地にWifiを持ち込めると想定して、
避難所や生活復興時の通訳を被災しなかった地域の医療通訳者が行うために必要な知識を学ぶものです。

MEDINTの会員さんは、集合研修だった頃は関西中心だったのですが、
コロナ禍でZOOMでの研修が中心になってからは、
関東や東海、四国などからも参加があります。
ですので、動ける通訳さんが、被災地にいくのではなく、
ご自分の住んでいる地域から遠隔で通訳支援できるように
避難所の運営や通訳機材に慣れていただくことを目的としています。
今後は、実際にシュミレーション訓練なども行えればと思っています。

もうひとつは、会員表彰です。
20年はあっという間でしたが、やはり大変でした。
でも、続けてこれたのは、スタッフの力とともに
支え続けてくださった会員の方々のお陰です。
今回は、会員制度が始まった2005年に会員になってくださり、
現在も会員として参加し続けてくださっている3名の方々を
表彰させてもらいました。

20年前を考えると医療通訳の環境は大きく変わりました。
医療通訳には報酬が必要であることや
通訳者にも研修やサポートが必要であることにも異論はないと思います。
「冷蔵庫を買ってお金を払わないのは泥棒なのに、
見えないからと言って通訳を使ってお金を払わないのは泥棒ではないのですか」と
言っていた頃が随分昔のような気がします。

大きな都市や集住都市の問題だと思われていた医療通訳も
平成の30年間で約3倍に増えた外国人住民が日本各地で生活する中で、
他所の問題ではなくなってきたのがこれからの課題だと思います。

いろんな専門職の皆さんを巻き込んで
「病気になったときくらい、安心して母語で医療を受けられる社会」の第2章が始まります。


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今年もよろしくおねがいします。

2023-01-03 11:54:22 | 通訳者のつぶやき
MEDINT便りをご覧の皆様

お久しぶりです。
MEDINTです。

ここ数年、なかなか書けなくて、ほとんど休眠ブログになっていました。
もし、その間に、時々のぞきに来てくださっていたならごめんなさい。
そして、ありがとうございます。

仕事と家族と体調といろんなものがごちゃごちゃになっていて
文字を書いたり、読んだりするのが辛かったのですが、
家族が落ち着いてきて、少し心穏やかになってきました。

そんな間に、自分にとって大切なものがよくわかってきた気がします。

コロナ禍は医療通訳体制の大きな転換になりました。
2019年以降、「外国人材」という言葉は嫌いですが、
日本は明らかに外国人労働者を受け入れる方向に舵を切りました。
この受け入れた外国人が日本で安心して暮らしていけるにはどうしたらいいかが
今の課題だと考えています。
医療通訳も英語や中国語、ポルトガル語等が主流だった頃から、
ベトナム語やネパール語、ミャンマー語の需要が増えてきています。

MEDINTは2022年で20周年を迎えました。
2005年から始めた会員制度で、今までずっと会を支えてくださった会員3名を表彰しました。
これからも心強いスタッフと会員の皆さんに支えてもらいながら、
今のステージにあった活動にシフトしていきたいと思います。

医療通訳やコミュニティ通訳を学ぶ大学院もできて、
これから多くの研究が出てくることに期待しています。

今の時代には少し合わないかもしれませんが、
これからもブログで思いを発信していければと思います。

よろしくおねがいします。





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嘘つきじゃない

2021-06-13 17:17:51 | 通訳者のつぶやき
ワクチン接種について、少し個人的な話からはじめます。

私には80歳の母がいます。
数年前に大きな病気をしたので、
要介護状態で一人暮らしを始めましたが、
よいケアマネさんとデイサービスさんに恵まれて
一人で散歩ができるくらいまでに回復しました。

その母は、ずっとワクチン接種はしたくないと言っていたのです。
それが先週、6月末くらいまで様子を見たい・・・に変わってきたので、
先日、電話でそろそろ、かかりつけの先生に相談しようかという話をしました。
すると「先週、先生が往診に来たときに、ワクチン打ってくれたよ」というのです。
温度管理が大変で、少しの間、ショックが出ないかの観察が必要なワクチンを
往診先の自宅でうつかなあ・・・・と思っていましたが、
「うったあと、腕が少し痛かったが大丈夫」
「先生は、一瓶が6人分だからあと5人に打つ予定と言った」と話す内容も具体的です。
2回目の接種のこともあるので半信半疑で、かかりつけ医に電話してみました。

すると、医師から「先週行った時、おかあさんは、ワクチン打ちたくないっておっしゃってましたよ」とのこと。

母に確認すると、「あれ~。そうだったかなあ。それならそうなのかな~」と言われました。
デイサービスの方に連絡すると、たぶんデイサービスで皆さんがワクチンの話をしているし
テレビでも高齢者が接種している報道をみているから、そんな気になったのかな~と言われました。

ご飯を食べることも、家族のことも、おつりの計算もしっかりわかる母ですが
短期記憶、とくに病気関係(嫌なこと)はとても苦手です。
「誰かがうちなさいと言ったら打つんだけどね」とも言ってました。(え?丸投げ?)

65歳以下の人たちのワクチン接種が始まります。
65歳以上で打ちたいのに漏れている人はいないでしょうか。
もちろん、今回のワクチンは任意接種です。
神戸市では認知症や精神障害、いろんな事情で自分で「ワクチンを打つ」ことを選べない人は
ケアマネさんが接種の申請をすることになっているようです。

でも、たとえばケアマネさんをつけていない、外国人高齢者はきちんとワクチンをうてているんだろうか。
クーポンも予診票も日本語で届いて、なんとなく日本でもワクチンがはじまっている感じはしていても
誰に手伝ってもらったらいいのか、どこで予約したらいいのかわからない人もいるだろうと思います。
そのうちに、うちの母のように接種した気になっていたり、接種が面倒に思う人もいるかもしれません。

相談窓口に来る人は、皆さん「これは必要なこと」としっかり認識している人です。
家族が手伝える人は家族がやっていると思います。
では、ひとりで暮らしている人は?
友人が少なかったり、日本のニュースが入りづらかったり、一人で外出できない人は?
高齢でなくても、支援を求められない人もいます。
「誰一人取り残さない」というSDGsのスローガンの中に
日本に住んでいる日本語が苦手な外国人はちゃんと含まれているんだろうかと思うことがあります。

今コロナ禍で取り残されている人たちはいないだろうか。
外国人支援は(人と人)点ではなくて(地域)面で行わなければいけないのだと思います。
たとえば、社会福祉協議会、病院、ケアマネと通訳者、国際交流協会、支援団体が
得意分野を連携できれば、もう少しなんとかなるはずなのでは。
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日々雑感

2021-06-03 23:36:24 | 通訳者のつぶやき
緊急事態宣言が延長になりました。

それに伴い、週4勤務のうちの1日在宅勤務も延長になり
週に1回は自宅で電話相談を受けています。
ご近所さんは、謎のスペイン語がどこからか聞こえてきて
いったいなにを話しているんだろう・・・と思っているだろうな。

HIAの相談電話は、相談員に携帯電話が支給されており、
事務所にかかってきた相談をその携帯に転送してもらって対応しているのですが、
トリオフォン(3者通話)なので、自宅からもう一カ所に電話をかけて通訳することができません。
窓口に来た人の書類チェックや記入の手伝いも在宅勤務ではできません。
その分、出勤している職員の負担になってしまいます。
早く緊急事態宣言が解除になって欲しいと思っています。

ただ私にできることは、できるだけ出勤以外は、外には出ないこと。
買い物などは出勤日にまとめてします。
ユーチューブで温泉の動画やパンダの動画を見て我慢の毎日です。

緊急事態宣言下の未だ、感染はとても身近に感じます。

ところで、筆無精の私は5年で1冊の日記を付けています。
ちょうど、今付けている日記が2020年はじまりなので
今日の日記は、去年の今日の下に書きます。
去年は5月末に緊急事態宣言がいったん解除になったので
緊張感はあるものの、夏には終息しているのではと思っていました。
新しい生活様式になれることで精一杯だった気がします。
そしてちょうど今頃、3月以降、延期になっていた対面の勉強会や会議をいつ、どのように再開するか
悩んでいたように思います。
少なくとも1年後の今も同じ状態であると言うことは予想していませんでした。
私たちは、今、記憶と記録に残る日々を過ごしているのだなと思います。

去年と違うのは、ZOOMなどの会議システムが行き渡り、
遠方の人たちとも会議をしたり、議論をすることに距離の壁がなくなったこと。
MEDINTも地域の壁を取り外したら、関東や東海地方の人たちが
勉強会に参加してくれるようになって、会員数が増えました。
感染症下で同行通訳が難しい中、いろんな多言語ツールも使えるようになっています。

立ち止まるのではなく、やらなければいけないことは、まだまだたくさんある。
と、やっと最近思えるようになりました。
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災害の構造

2021-05-20 03:00:01 | 通訳者のつぶやき
関西はいつもより早い梅雨入りから、
ずっと雨の日が続いています。
皆さん、お元気ですか。

雨の日はいつもより相談件数が少ないのですが
なにかやろうという気分になるには天気は重要な要因かもしれませんね。

新型コロナの感染拡大がはじまってから1年。
2度目の春が終わりました。

最近、通訳をしていて感じることは、
さすがに、この状況にみんな疲弊してきたなということです。

でも、この状況を「災害」それも長期にわたる災害と理解することで
対応が見えてくるように感じます。

発災直後は、みんな同じ方向を向いて
乗り越えようとします。
生き延びたから、一日も早く生活を取り戻したいという方向へ
歩みの速度は違っても動こうとします。
政府の支援策も示されて、去年の春は、そういう雰囲気だったと思います。

今年の春は、明らかに去年より感染者も死者も多く
医療崩壊が起こっていて、すべてに手が回っていません。
回復の目処はたっていないのに、
経済的な支援は終了したり、減額になったりしています。

外国人相談窓口にもいろんな声が寄せられます。
持って行き場のない感情をぶつけられることもあります。
きっと保健所や病院、行政やコールセンターの方々は
もっと大変だろうなと思います。

通訳をしていても、結果がうまくいかないと
ぶつけどころのない怒りや悲しみが、通訳にぶつけられます。
「私はあなたの通訳をしただけ」といっても
通常、よほど信頼関係のある人でないと
通訳が悪かったからうまくいかなかったと言われます。
誠意をもって対応しても、それは仕方がない時があります。

阪神淡路大震災の時も
復興に乗り遅れていく人たちの中に
こうした感情が、澱のように溜っていきました。
あのときに似ている気がします。

しかし、支援者側にも、こうした許容の限界を感じる時があります。

通訳者は、その場にいる唯一の両方の言葉のわかる人間です。
つまり、その言葉の含む感情も理解できる人間なのです。
わかるからこそ、加害者のいない災害だからこそ、
やり場のない感情をどうすればいいのかと思い悩みます。

医療従事者以外のワクチン接種がはじまりました。
外国人の高齢者の方々も予約をしています。
厚生労働省が予診票やファイザー社製ワクチンの説明の翻訳を出してくれているので
それを見てもらいながら説明し、日本語版に記入していきます。
おかげでずいぶん楽になりました。
ワクチン接種はこれからが本番です。
打ちたいと思う人が適切な時期にきちんと打てるようにと思います。
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ヤングケアラー

2021-05-09 21:42:59 | 通訳者のつぶやき
ちょうど1ヶ月ほど前、厚生労働省が初の実態調査を行い、
中学生の約17人に1人がヤングケアラーであるという報道がありました。

「ヤングケアラー」中学生の約17人に1人 国 初の実態調査(NHK)


定義については厚生労働省がHP上で定義しています

ヤングケアラーとはこんな子どもたちです
(厚生労働省のHPより)

その定義の中に「日本語が第一言語ではない家族や障害のある家族のために通訳をしている」という項目があります。

私たちは、2013年に開催したシンポジウム「通訳を担うこどもたち~医療とコミュニケーション」の中で
子どもたちが、手話や外国語を使って家族の通訳をしている現状について扱いました。
当時は、誰かがついて行かなければ医療が受けられない状況も少なくなくて、
「誰か連れてきて下さい」と通訳の調達は患者自身に任されていました。
通訳を連れて行けないことで、受診ができない、初診が遅れるということが起こっていました。
そこで、費用がかからず、守秘義務も守れる通訳者として子どもたちが、同行していました。
母語と日本語ができる子どもは親だけでなく、親戚や他の大人の通訳も頼まれます。

病院だけでなく、行政窓口や裁判所など、こうした通訳が必要な場所はほとんど平日昼間です。
学校を休んだり、部活動などを早引きしたりしなければなりませんでした。

医療通訳を制度化するにあたり、
もっとも考えなければいけなかったのは
こうした子ども達が担っている通訳のことです。

詳細は恐縮ですがMEDINTシンポジウムのプロシーディングを読んでいただければ
当時、手話・ベトナム語・スペイン語の元子ども達が
どんな思いで通訳をしていたかを知ることができます。

家族が助け合うのが悪いわけではないのです。
その通訳を子どもがやっていいものなのかを
きちんと専門職が精査しなければいけない。
風邪をひいた時の通訳とがんの告知の通訳は明らかに重さが違います。
今でも、医療通訳の制度のない地域では、子どもがこうした通訳を担っている現状があります。

ヤングケアラーの概念の中に、通訳をするこどもが入ったことで
この問題が明らかになったと思います。

「医療通訳」は「お手伝い」の範疇を明らかに超えていると言うことを
私たち大人がしっかりと認識する必要があります。
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あなたはどうしますか

2021-04-26 23:55:04 | 通訳者のつぶやき
先日、他分野の研究者の方と医療通訳に関する議論をしていたときに、
「不法滞在(非正規滞在)の人に医療通訳が必要な時、どうしますか」と聞かれました。

「普通に通訳しますよ」と答えました。

医師や看護師といった医療従事者の方々も
目の前に患者がいれば、その人の救命に全力を注がれると思います。

もし、患者のバックグラウンドによって通訳が変わるようであれば
それは自分が受けてはいけない通訳だと思います。
私たちは人間なので、いろんな感情や価値観があります。

医療通訳者としての仕事(役割)が、自分の感情や価値観に飲み込まれそうなときは
きちんと断ることが必要です。

ソーシャルワークの中に「自己覚知(じこかくち)」という言葉がありますが、
それは、支援者が「自分のことを知っておくこと」つまり通訳者にあてはめると
「通訳者としての自分をコントロールするために、自分の価値観を知っておくこと」です。

医療通訳の学習の中に「医療通訳者の自己管理」という単元があります。
この自己覚知は、職業人としての自分をコントロールして、よい通訳をするために、必要なことです。
そして、それは通訳者としての自分自身を守るとともに、患者を守ることにもなります。

感染症は、すべての人が対象です。
ワクチンも治療もすべての人が対象にならなければ感染は収まりません。
高齢者のワクチン接種が始まりました。
言葉の問題で、ワクチン接種を受けるべき人が受けられないことがないように
医療通訳者ができることをやろうと思います。
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MEDINTのマスコットキャラを作っています

2021-04-16 22:43:34 | 通訳者のつぶやき
クラウドファンディングの返礼で
MEDINTのマスコットキャラを作っていただくことになりました。

そのクラウドファンディングは
「がん医療におけるマインドフルネス」講演会で知った
別府市で活動されているマックネットシステムさん
「医療用ケアキャップの作成でがん患者さんの働く場所を作る」というものです。

妹が抗がん剤で髪が抜けたとき、
病院ボランティアの方が、タオル地で作った肌にやさしいキャップを下さいました。
キャップ自身はシンプルなものでしたが、そこに添えられていた手紙がとても暖かく
闘病中の本人と家族には大変ありがたいものでした。

ただ、帰宅など外に出るときには、少しおしゃれなものをと思って
デパートに探しに行ったのですが、健常者向けで少し高齢者向けのデザインが多く
医療ケア用のキャップはなかなかいいものが見つかりませんでした。
もちろん、ウィッグ(カツラ)も用意していたのですが、
何となく髪だけが元気すぎるような印象を受けました。

また、このプロジェクトは、先輩患者さんが次の患者さんの背中を押すという
循環型の当事者支援であることがとても良いと思いました。

世の中に足りないサービスやお手伝いの部分を
民間のNPOやボランティアが資金調達をして行える
クラウドファンディングのシステムは
支援者同士が直接繋がれていいですね。

で、返礼はふるさと納税と同じで「おまけ」ではあるのですが、
キャラクターを作成していただくことになりました。

MEDINTの20周年にむけてのキャラクターです。

今まで、MEDINTではスタッフがすてきなHPを作ってくれていますが、
シンボルのようなものをもちませんでした。
皆さんにお披露目できる日を楽しみにしています。

PS:報道の通り、4月以降、大阪と兵庫の感染者が増えています。
相談窓口にいても、明らかに陽性者からの相談が増えてきています。
当たり前ですが、1人の感染者に10人の濃厚接触者がいたとしたら
感染者が100人なら1000人だけど、500人なら5000人です。
濃厚接触者というだけでは、感染者とはいえないけれど
素人なりに感染力が強いなということは感じます。
そんな現実を背中で感じ始めています。
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報告書の季節

2021-04-07 00:19:50 | 通訳者のつぶやき
MEDINTの会員制度は年度制になっています。
4月に新しい年がはじまり、3月に終わるというものです。
1年ごとに会員の更新をして、年会費を納めてもらいます。
MEDINTとしては、その年会費に見合った研修やサービスを提供して
会員の皆さんにも一緒に活動してもらうというものです。
言語によっては分科会がなかったり、
忙しくでなかなか参加できない人もいます。
医療従事者や研究者として
応援してくれている人もいます。
とてもありがたいです。

なんで1年ごとと思うかもしれませんが、
本音を言うと2002年にMEDINTを作ったときには
いつまでやれるかの自信がありませんでした。
法人格もとらないし、専従もおかない、事務所も借りない。
会費のほとんどを講師謝金に使い、経費は助成金を活用する。
だから、助成団体や会員さんにそっぽを向かれたら、活動は終わりです。

まず、10年やってみて、だめなら撤退しなさいと言う言葉を胸に、
1年ずつ続けてきたというのが正直なところです。

医療通訳をめぐる状況は、近年大きく変わってきています。
ボランティアからビジネスへ。
英語中心から多言語対応へ。
昔は在住外国人を対象とした通訳には関心をしめしてくれなかった
優秀な通訳者さんたちが、医療通訳に参入してきています。

MEDINTはボランティアであっても、アマチュアであってはならないという思いから
どんな形であっても、医療通訳者の技術は同じでなければならない、
研修を受けることと同時に、同じ言語の仲間を作ることを目標に行ってきたつもりです。

ただ、最近は、YoutubeやZOOMの普及によって、
自宅で様々な研修が安価で受けられるようになりました。
そろそろ、研修の方向性も考える時期がきたなと思っています。

4月は報告書の季節です。
2020年度は、助成金も減って、活動の継続も大変でしたが、
それでも、3カ所から助成金をいただき、その報告書を今書いています。
報告書を書くことで、自分たちの活動を見直すことができるのですが、
報告書を書きながら
研修に関しても転換点にきているなと感じます。

2002年にはじまったMEDINTの活動も
来年2022年に20周年をむかえます。
2021年度は、これからの活動の方向をしっかり考える1年にしたいと思います。

一部の言語は、今年度もZOOMを使った講座を開催する予定です。
関西圏以外の方々のご参加をお待ちしています。






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暖かくなってきました

2021-03-25 10:27:02 | 通訳者のつぶやき
お久しぶりです。

コロナ禍で、同行通訳が減少したり
MEDINTも集合研修ができなくなったりで、
医療通訳者のモチベーションを下げないことと
研修を継続することが課題の1年でした。

なんとか、次の日曜日の医療英語分科会(第4回・ZOOM)で
計画していた6言語分科会、年間4回の会員さんとのお約束は守れそうで
スタッフ一同ほっとしています。

この1年、遠隔(電話・ビデオ)通訳や音声翻訳ソフトが
使い勝手もよくなり、ユーザー側にはどちらがいいではなく、
場面によって使い分ける知識と力が必要になってきたと思います。

それによって、医療通訳者に求められるスキルも
「なんでも医療通訳者」ではなく、「医療通訳者でなければ」というものに
シフトしていくのだろうと思います。

医療通訳を始めた頃は
医療者が不安だから、とりあえず日本語のできる人連れてきてということも
少なくなかったのですが、最近では減りました。

母語で受診する権利は守りつつ、
現実に沿った対応を求められてくると思います。

最近の福祉の現場では「自立支援」という言葉はあまり使わず
「意思決定支援」という言葉を使います。
こちらのほうが、私にはしっくりきます。

「なんでも自分でできること」はそんなに大切ではない。
だれもが誰かの手を借りて生きている。
それよりも「自分で決めること」を大切にしたい。
できないことは誰かの手を借りることは悪いことじゃないと思います。

相談支援の窓口でも、
仕事して、子育てして、学校行って、日常をしっかり頑張っている人たちが、
困ったことに遭遇したり、体調が悪くなったときには通訳の助けが必要になります。
そんなときにこそ役に立てる医療通訳者を育成したいと考えます。

宣伝になりますが、
27日(土)に「多言語相談窓口の実態調査中間報告会」が開催されます。

オンライン開催です。
私もアドバイザー・シンポジストとして登壇します。
すでに申込期限が来てますが、当日参加される方はよろしくお願いします。
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少しづつ活動を再開しています

2020-09-23 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
皆さん、お久しぶりです。
非常事態宣言でブログを一度閉じてから
もう5か月が過ぎました。
季節は春から夏、そして秋へ。
2020は明るいオリンピックイヤーのはずが、
とんでもコロナ禍に今も振り回されています。

MEDINTも8月から限定的に活動を再開しています。
昨日、ベトナム語の講師、スタッフとZOOMで打ち合わせをしたんですが、
スタッフからそろそろブログを再開するようにとの指示があり
考えてみると、ずいぶんブログを書いていないことに気づきました。

今は元気にやっているのですが、
この直前のブログでも書きましたが
情報過多の状態で、意識的にデジタルデトックス(?)をしないと
一日ネットを見てるんじゃないかと思うくらいでした。
なので意識的にテレビはネットは必要以上に見ないようにしていました。
(ニュースはラジオで聞いてました)

相談窓口は非常事態宣言で対面をやめて電話のみに切り替え
週3日出勤、週1日を在宅にして職場の人口密度を減らしてました。
解除以降は、対面相談も解禁になりましたが、
衝立越しの拘置所の面談みたいで
毎回消毒したり、神経を使う状況が継続しています。
相談者の方も、ほとんどが、マスクをされています。

MEDINTの活動はいろいろ話し合いをして、
8月に飯田先生の事例検討会をZOOMで行いました。
その後、中国語、スペイン語、ポルトガル語、タイ語の言語分科会を
やはりZOOMで行いました。
ポルトガル語は会員さんでない方にもビジターで参加していただき
県外だけでなく、海外からも参加していただきました。
これは新しい取り組みというか発見でした。

会員の中にはご自身が医療従事者だったり持病があったり、ご家族に高齢の方がいたりと、
いろんな事情を抱えているので、今年は4言語はとりあえずZOOMで開催しようと考えています。
また、英語は人数を制限して対面、ベトナム語は10月以降にZOOMで開催します。
今年度、休会する方や退会される方もいらっしゃいますが、
MEDINTはもともと単年度会員なので、
落ち着いたら、また戻ってきてくださいね。

ただ、ZOOMにすると、家にPCがない人や
wifiが不安定な人にはハードルが高いと感じられます。
大学でも教えているのですが
前期は間に合わなかったのですべてYoutubeのビデオ配信をしました。
来年度以降については良い部分と悪い部分を見据えて、
皆さんの意見も聞いて
様子を見ながら考えたいと思います。

どちらにしても2020年は記憶に残る年になると思います。
どのようにお過ごしですか?
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11年前のブログ

2020-04-19 12:40:58 | 通訳者のつぶやき
今回のコロナウィルスの感染拡大は世界的な規模で
緊急事態宣言や都市封鎖などが起きています。

MEDINTも今のままでは通常5月に予定している言語分科会の開催は難しく
先生方にお願いして6月以降で調整をし直しています。
ただ、それも集合研修としては時期的に開催が微妙な状況です。

MEDINTの言語分科会は
台風などの災害での開催中止は近年の記憶にもあると思いますが
2009年の新型インフルエンザの時も開催を中止したことがあります。
古い会員さんは覚えていらっしゃる方もいるかと思います。
その時は、「不要不急の自粛」はあったものの、今回のような政治的な判断ではなく、
参加者に危険がないように、それぞれが判断して決めたと記憶しています。
また、当時の会場だった山西福祉記念会館さんがキャンセル料の措置をとらなかったことが
ありがたく今でもはっきり覚えています。

新型インフルエンザ~その後 2009年5月20日

当時も今と同じように、みんながマスクをして、
通訳も同行ありきではなく、保健所や病院とトリオフォン通訳体制をとりました。
思えば、あのときから遠隔通訳の重要性が理解され始めたと思います。
たった11年前のことなのに・・・忘れていることが多いですね。

当時と今の比較については
NHK解説員の方が昨年5月に新型インフルエンザから10年をテーマに
解説されている記事が、今となってはすごく参考になります。

NHK解説委員室2019年05月07日 (火)
「新型インフルエンザから10年 いまパンデミックが起きたら」
中村 幸司 解説委員

今回の感染拡大をめぐり、通訳者、相談員として気をつけていることが2つあります。

(1)情報の精査
当時と比較して、私たちの周囲にはSNSやネットの情報がとても多くなっていますが
中にはフェイクニュースやエビデンスのない個人的な見解も混ざっています。
専門職として、外国人の方々への情報提供は
新聞やNHKなどの公共放送の情報などでチェックしてから
厚生労働省や都道府県などのHPからウラ取りをして
はじめて情報提供するくらいの慎重さが必要です。
外国人の方々の日本の中の情報ソースは非常に限定的です。
私たちの言葉に惑わされてしまうことがないように発言に責任をもてるようにしましょう。
(ただし、今回の給付金30万円から10万円への転換は政府の発表であったにもかかわらず
簡単に変更になったので、今後コミュニティの中でかなりの混乱を招くことが予想され、頭が痛いです)

(2)他専門職への敬意と配慮
医療機関や保健所、日常インフラを支えるみなさんは
日々、感染の危険性やストレスを抱えながらお仕事をされています。
だから電話をしたり、通訳をしたりするときに
いつもの5割増しで感謝の言葉を伝えるようにしています。
また、通訳でできることは限られてはいますが
私たちのできることをきちんとすることで現場のお手伝いになればと思います。

こうした時期は、
個人が社会のために何ができるかの視点で過ごす必要があります。
自宅で待機していることも、感染を広げない大切な活動です。

それと、是非、今の時期のことを記録に残しておいて下さい。
未来の役にたつとおもいます。
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