ある「ブライダル写真業者」さんのHPを見ていたら、その業者さんの「アピールポイント」として、「バックアップ撮影をしています」というのがありました。

 

ブライダルの撮影って、「やり直しの効かない一発勝負」という性質のもので、万一の機材トラブルに備えて「バックアップ撮影」が非常に重要で、フィルムカメラの時代から、ちゃんとした写真業者であれば、やっていました。

 

具体的には、「同じ場面を、2台のカメラでほぼ同時に撮影する」というものです。

 

結婚式場に行って、スタジオで「親族集合写真」とかを撮られた経験のある人であればご理解いただけると思いますが、こういう「とても重要な写真」の場合、2台のカメラで撮影しますから、1台目のメインカメラで3~4枚撮影したあとに、「じゃあ、カメラを替えますので、今度はこっちの小さなカメラを見て下さい」とか言って、2台目のカメラで同じものを撮影し、万一、1台目のカメラが故障していても、予備の2台目のカメラの写真が残っているので、なんとかなるわけです。

 

これを、写真業界では「バックアップ撮影」と呼び、カメラマンの中では「おさえ」と言っています。

 

バックアップ撮影は、良心的な業者であれば、スナップ撮影でもやっています。

ですから、披露宴の「各テーブルでの小集合写真」なんかでも、1台目で2枚撮って、「カメラ替えますね」と言ってから、「2台目でもう一枚」なんていう撮影方法をしているので、ご記憶のある人もいるのではないでしょうか?

撮っている写真はまったく同じものです。同じものを2台に分けて撮っているから「バックアップ撮影」なのです。

 

というふうに、業界歴の長い自分は思っていたのですが、上記業者さんの言う「バックアップ撮影しています」というのは、「1台のカメラ」の話でした。

 

カメラは1台なんですが、「1台のカメラの中で、2枚の記録メディアに写真を記録している」そうなんです。そして、そのことを、この業者さんは「バックアップ撮影しています」と述べています。

 

実は、デジカメの中で、プロが使用するような高級機種は、万一の事態に備えるために、「記録メディアを2枚挿せるようになっている」ものなんです。専門用語では「ダブルスロット機能」と呼んでいます。

 

これはプロのカメラには必須の機能です。1枚のカードをなんらかのトラブルでだめにしてしまった場合でも、もう1枚のカードから画像を取り出すことができます。

 

なので、このことを「バックアップ撮影しています」と表現するのは、偽りではないのですが、ちょっと我々からすると「違うんじゃないかな」と感じます。

 

うちの場合、ウェディング関係で使っているカメラはすべて「ダブルスロット対応機種」なので、それを2台使用して、ひとつの場面を撮っていますから、実際には「同じ写真を4枚の記録カードに記録している」ということになります。

ちゃんとしたプロというのは、ここまでの安全策を講じているということです。

 

逆に言うと、こういう「お金と手間のかかる安全対策」をしなければ、コストは安く抑えられますし、そんなに技術のないカメラマンでもなんとか撮れてしまうわけです。

ですから、マッチングサイトなどでは、異常とも思える低価格で「結婚式のスナップ写真を撮ります」と謳っているカメラマンさんがいるのです。

 

 

業者を検討する際は、「バックアップ撮影してますか?」「そのバックアップってどういう意味ですか?」を確認してから、決定するといいと思います。