Q&A3679 胚選択など質問 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2022.8.1「☆Q&A3375 プロラクチンが高いのに投薬なしです」、2022.11.9「Q&A3475 タイミングでの刺激法は?」、2023.2.26「Q&A3584 初回採卵移植の結果で」で回答いただきました。

その後、不信感のあった前院から転院しました。

直近のAMHは0.32、クロミッド朝晩1錠ずつ+ゴナール225単位を隔日注射で採卵して、5個とれて3個胚盤胞になりました(2個は空胞)。胚盤胞は下記の3つです。
①Day3で9cell G3→Day5 PMで4AB凍結
②Day3で15cell G3→Day5 AMで4BA凍結
③Day3で13cell G3→Day6 AMで4BC凍結
主治医は、①②はとても良い胚で、③は発育が遅く、少し良くないとの事でした。移植するなら②が一番おすすめ(赤ちゃん部分より、胎盤になる部分の評価が良いほうが着床には大事なので)との事でした。

Q1)前院ではダブルトリガーで空胞はなかったので(成熟卵2、未熟卵1)、ダブルトリガーを希望したが、オビドレルか点鼻どちらかのみで良いと言われ従いました。そのせいか分かりませんが空胞があったので、次に採卵するならダブルトリガーを強く希望しようと思います。採卵2日前23:30オビドレル→採卵日10:30だったのですが、時間はもう少し延ばしたほうが良いでしょうか。
Q2)松林先生はどの順番で移植がおすすめですか。ちなみに女の子を希望しています。私としては2個移植を検討中です。4ABと4BAの組み合わせが一番良いのでしょうが、それでもしダメだったら残りは可能性が下がる子のみになってしまう事や、1回目の移植で出産まで行けた場合、第二子も考えて可能性の高い子が残っていたほうが気持ち的に良いかと思い、2個移植なら4BAと4BCの組み合わせで考えているのですが、先生的にはどう思われますか。
Q3)移植は自然周期を考えています。普段Day3のE2は10〜20未満ばかりです。自力排卵はしていて高温期は10、11日程度(プロゲステロン10-12程度)です。自分の卵に自信がないので、自然周期でもレトロゾールや、移植時(排卵時?)のHCG注射、移植後の黄体ホルモン補充を希望しているのですが、松林先生はこれらについてどう思われますか。月経時~低温期や、高温期にエストラーナテープも使ったほうが良いでしょうか。
Q4)通院先は、まずはできるだけ手を加えず自然に移植する方針で、レトロゾールもあまり効果が分からない、SEET法も結果が良くなる人と悪くなる人いて一概に言えないのでまずはSEET法もなしで良いと言われています。手を加えない自力の体質に自信がないので、可能性が高まるなら色々追加してほしいと思っています。できるだけ自然で行きたい通院先の方針に疑問を感じています。他にはアシステッドハッチング、エンブリオグルーを追加したいです。特に問題はありませんか。

 

A 

A1)成熟率の良かったダブルトリガーをお勧めします。時間は前院と同じ間隔になるようにしてください。
A2)女児希望の場合には、発育の遅い胚になりますので、基本的によくない胚の順番になります(③4BC→①4AB→②4BA)。2個移植なら③4BC+①4ABになります。
A3)日本人の自然排卵周期移植ではレトロゾールを服用した方法が成功率が高いことが報告されています(2017.6.23「凍結胚移植におけるフェマーラの有用性」でご紹介)。HCG注射はLHサージがない場合に行い、黄体ホルモン補充は使っておいた方が良いです。E2値が低い場合には、エストラーナテープなどのE2製剤を使います。つまり、ケースバイケースの対応になります。
A4)できるだけ自然で行きたい通院先の方針に疑問を感じておられるのであれば、転院を考慮します。凍結胚では透明帯(受精卵を取り囲む殻)が固くなってしまうため、アシステッドハッチングが必須と考えられています。SEET法やエンブリオグルーはヒトによって合う合わないがあります。過去に上手くいった方法があれば採用し、そうでなければ採用しないのが良いです。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。