☆精製HMG製剤とrFSH製剤のP4値への影響 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、精製HMG製剤とrFSH製剤の卵巣刺激によるP4値への影響を検討したものです。

 

Hum Reprod 2024; 39: 393(スペイン、イタリア)doi: 10.1093/humrep/dead251

要約:2016〜2018年卵子提供のために卵巣刺激を受けている18~35歳の女性112名(月経周期25~35日、AMH1.4~4.2)を対象に、アンタゴニスト法でrFSH製剤あるいは精製HMG製剤を用いたランダム化試験を実施しました。両グループとも、年齢、BMI、AMH、採卵数は同等でした。トリガー当日のP4値は、精製HMG製剤の0.46よりrFSH製剤の0.68で有意に高くなっていました(P=0.010)。プレグネノロン/P4比は、精製HMG製剤よりrFSH製剤で有意に高くなっていました(P=0.019)。アンドロステノジオン濃度は、精製HMG製剤(3.0 ±1.4)よりrFSH製剤(2.4±1.1)で有意に低くなっていました(P=0.015)。プレグネノロン/アンドロステノジオン比は、rFSH製剤より精製HMG製剤で有意に高くなっていました(P=0.012)。卵胞液のE2、FSH、LH、デヒドロエピオアンドロステノジオン、アンドロステノジオン、テストステロン濃度は、rFSH製剤より精製HMG製剤で有意に高くなっていました。

 

解説:採卵周期のトリガー時のP4増加は新鮮胚移植の妊娠率低下につながりますが、P4増加を引き起こすメカニズムは十分には解明されていません。一方、P4値は精製HMG製剤よりrFSH製剤で有意に高くなることが示されており、経験的に採卵数が多くなることが知られています。これはステロイド生成経路の特性により説明できます。精製HMG製剤はプレグネノロンからアンドロステノジオンへの D5経路を強化しP4値の低下をもたらしますが、rFSH製剤はプレグネノロンからプロゲステロンへの D4経路を強化しP4値の増加をもたらすためです。したがって、rFSH製剤と精製HMG製剤のステロイド生成経路の違いを理解した上で、採卵数を増やしたい場合にはP4増加を狙うrFSH製剤を使用し、新鮮胚移植の場合にはearly Pを抑制する精製HMG製剤を使用するのが望ましいと考えます。