森中定治ブログ「次世代に贈る社会」

人間のこと,社会のこと,未来のこと,いろいろと考えたことを書きます

ロシアウクライナ戦争と東アジアの危機をどう回避するのか?

2022-05-24 11:48:13 | 国際政治・外交

前回のブログが2022年3月27日ですから、今日でほぼ1ヶ月半ぶりになります。

ロシアとウクライナの戦争が長引いています。この戦争に対する与野党、学識者などから聞こえてくる主張は、先に手を出したロシアが一方的に悪く、国際法違反!ロシアは即時軍を退け!という内容です。米国を筆頭にして、プーチン大統領は戦争犯罪者呼ばわり、強力な兵器をはじめとして世界の西側国からさまざまな援助がウクライナになされています。

一昨日5月22日、知人の主催する憲法カフェ『ウクライナ戦争と憲法9条』に参加しました。お話は、池袋の法律事務所にいらっしゃる大山勇一弁護士の要約に基づいて進められました。要約の後半部分の「3 日本のめざすべき方向は?」という部分は事実の列記ではなく大山先生の考え方が記述されていますが、私は共感するところがたくさんありました。

こういった世界情勢に関する主張というものは、まず事実に基づいてなされなければなりませんが、その事実が分からないことが多いのです。特に一番大事なポイントは本当はどうなのか、分からない場合がたくさんあります。何十年も経ってから公文書館で見つかったとか、あるいは最後まで真相はわからないことも多いと思います。
なので、大山先生の要約のように、ある程度は既知の事実に基づきながらも、自分自身の考えを構築することが大事だと思います。

昨日の憲法カフェでの討議、及び私自身が過去に得た知識から私は以下の通り考えます。

ロシア・ウクライナ戦争は、一般的にはいきなりロシアがウクライナに攻め込んだとされ、これは国際法違反でありロシア軍は問答無用で即時撤退せよというという声が、右派も左派も一緒に日本中を席巻していると感じられます。
ある左派の政党は、戦争を憎み平和を希求するその姿勢に対して日頃私は感動し共鳴していますが、この戦争に対する主張は上から目線のジャッジによる一方的な主張であり思考が不十分だと思います。それでは人類にとっていい結果を産みださないと私は思います。
正しいジャッジだからよいというのではなく、戦争を止めるにはどうするべきかと、そこを考える必要があります。
プーチン・ロシアが100%間違っているから世界が団結してプーチン政権を追い詰めろという主張です。ここに相手を理解しようとする意志や和解を望む気持ちは少しも感じ取れません。力で押し潰せばよいという冷たさしかありません。即時撤退せよという上から目線の命令のような主張では、相手を余計怒らせ、結果として戦争を煽るばかりだと思います。
プーチン・ロシアは核を持っています。このような一方的な追い詰め方は、私は大変危険だと思います。追い詰めた結果核兵器が使われた。それからでは遅いのです。核兵器を持つ国を力で押し潰そうとすることはやるべきではないと、私は思います。

バイデン大統領はロシアの侵攻の数日前にはロシアの侵攻を予言したようです。予言ができるはずはないので、何か事実を掴んでいたからだと思います。ゼレンスキー大統領は現時点ではクリミアについては黙っていますがその時はクリミアを取り戻すと公言し、クリミアを空爆したという話も聞きました。何が本当か私にはわかりません。

腕力が強いAと、弱いBがいるとします。AがBを殴ればBはどうするでしょうか。Aが殴ったと大声で騒ぎ立て、周囲を味方につけます。逆にBがAを殴ればAはどうするでしょうか。Bの場合と同じことをするでしょうか。そんなことはしないでしょう。そんなことをすれば、メンツは潰れ、腕力が強いという看板を下さねばならなくなるでしょう。ではどうするか。それを騒ぎ立てるのではなく黙っているでしょう。その代わり5倍にしてやり返すでしょう。

このAがロシアじゃないのかと、私はそんな気がします。両陣営はそれぞれ都合のいいプロパガンダをやるし、都合の悪いことは隠します。その上真相を知る人はごく僅かで、また喋らないでしょう。有り得る可能性を自分なりに推察するしかありません。
とても巧妙な心理戦略だと思います。

重要なことは、上から目線でジャッジし、問答無用の一方的な主張ではなく、両者の主張を取り上げなければ和解はできないということです。
大山先生の要約には、ロシアの主張が分かりやすくはっきりと取り上げられています。ここが上から目線の問答無用の人たちとは異なるところです。まさに両者を和解させたいという気持ちが溢れています。その中に、「(ウクライナは)ロシアに対して領土請求をおこなっている」という言葉が明記されています。ロシアは、上記の弱いBのように騒ぎ立てはしませんが、とても控えめではあるけれどこの部分に、侵攻の引き金を引いた直接の原因を述べているように私は感じとりました。

どのようにして戦争が起こるのか。どのようにして世界的な極悪人が作られるのか。再考してみると、身体に戦慄が走るくらい巧妙に仕掛けられているように思います。

このロシア・ウクライナ戦争から我々は何を学ぶのでしょうか?

もし日本と中国が戦端を開くとなれば、その発端はロシア・ウクライナ戦争よりももっと巧妙に仕掛けられるということです。日本の政治家は知らなかったという立ち位置で、例えばもし仮に自衛隊の一部と米軍が一体となり極秘に戦略を進めれば、真相が表に出ることは絶対にないでしょう。本当のことは極く少数の当事者を除いて誰も知らないのです。これは日本人の不幸であり、アジアの不幸であり、また人類の不幸でもあると私は思います。この不幸を防ぐには、ジャッジをするとしてもまず誰にも見える表面に出た現象だけでジャッジをしてはいけないということです。プーチン大統領の場合と同じように〇〇は悪だ!〇〇を許さない!と右派も左派も皆一緒のジャッジ・・・そこに戦争が生まれます。

でも、このロシア・ウクライナ戦争から学ぶ明るいこともあります。

プーチン大統領が、北欧2カ国のNATO加盟に柔軟な発言をし「何の問題もない」と述べたことです。5月17日配信のロイターの動画でのプーチン大統領の主張を聞いて、自分が何をしたいのかよくわかっている冷静な人だと思いました。「狂人」とか「悪魔」というプーチン像は、意図的に作られた虚像だと感じます。

https://sn-jp.com/archives/81414?fbclid=IwAR3lTzh8s5l18eTPdvX3xwEp4jRvmiO1ZCsu7CFIC_vXyD0RrWDgH6t66HE
(動画2分8秒)

スウェーデンやフィンランドは民主主義が徹底した国です。スウェーデンは多い場合は個人所得の何と60%が税金として徴収されます。なぜ国民はそれを黙っているのか。なぜそんな政府が支持されるのか。それはそのお金が真に人間のために使われていると考えるからです。徴収側の主張だけではなく徴収される側もそう考えています。人間社会として現代人類の行い得る最高レベルに進歩した社会だと思います。もともとスウェーデンは極寒の、じゃがいもしかできない極貧の国でした。スウェーデン社会民主労働者党のエルランデルやパルメが理想とも言える素晴らしい社会を作りました。

私は今はもうやめましたが、若い頃、スウェーデン社会を学びたいと思ってスウェーデン社会研究所の会員になり、スウェーデン大使館で何度も講演を聴きました。スウェーデンやフィンランドはNATOに入るけれども、西側に言われてロシアを脅かすような軍拡行為をしないと言明しています。その言葉がプーチン大統領には信じられるのです。プーチン大統領もこの動画の中で、「だがこの領土への軍事インフラの拡大は確実に我々の対抗措置を誘発するだろう」と述べています。スウェーデンやフィンランドはプーチン・ロシアが何を嫌がるのか、何をすれば戦争が起こるのか、それを明確に理解しています。それさえしなければ戦争なんか起こらないのです。敵対する陣営にある国同士でも、あえて表現すれば「仲良く」できるのです。

「プーチンさん。私たちはあなたの今回の行為を見て、あなたを心からは信頼できないの。私たちにも安心が欲しいの。だからNATOに入ります。でもあなたを脅かすようなこと、あなたを苦しめるようなことはしないわ」

スウェーデンとフィンランドはプーチン・ロシアに対してこう言っているのです。
その言葉を「わかっている」とプーチン・ロシアは受け入れたのです。

同じ言葉、同じ行為でもそれを誰がするのかで戦争になったり、「仲良く」行われたり・・。他国の信用を得るということはこれくらいの差を生み出すのだと、このニュースで感じました。

ここから中国に対してどのような態度を取ったら戦争にならないか学べます。
仮に、敵対する陣営同士であっても、北欧2カ国とロシアのように「仲良く」なること、つまり戦争をしない関係を作ることができるのです。

大山先生の要約には、中国に対しては、日本が「レッドラインを踏み越えない」という確固たる意思表明と行動実践、具体的には台湾に対する「中国の立場を理解・尊重する」という1972年日中共同声明の立場を再確認し、実践することとあります。
私も、この点はとても重要だと思います。
相手を脅かすこと、相手を嫌がらせること・・。相手に戦争を起こさせるほど酷いことをしない。これが戦争を起こさないための方法です。
北欧2カ国とロシアのように、あなたを脅かすこと、あなたを苦しめることをしない、つまりお互いが敵陣営にあっても「仲良く」ということが、北欧2カ国にできて日本にできないことはないでしょう。

人類には戦争を止める時が来ています。
日本が東アジアでまずそのモデルを世界に示すことができれば、どんなに素晴らしいかと私は思います。

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と、ここまで書いて一応終わりにしましたが、数日が過ぎてさらに追加したいと思いました。
今日は5月28日(土)です。以下に追加をします。

選挙に向けたキャンペーンとしてお願いされ、日頃の休日版に加えこの5月から取り出した日刊紙、それを見ると「戦争をさせない」という言葉が目につきます。
戦争をさせないって、本当にそんなことができるのでしょうか。

私はベトナム戦争が始まったいわゆる「トンキン湾事件」を思い出しました。
米国の一番の目標は中国でしょう。習近平が率いる現在の中国の体制でしょう。米国の目標は現在の中国を崩壊させ、親米中国に作り替えたいのだと思います。

ロシア・ウクライナ戦争が長引けば米国も2面同時は困難、多分中国に対する行動はずっと遅れていくでしょう。もしロシアがこの戦争で負け、プーチン・ロシアが滅んで親米国家に変わったとします。
そうすれば米国の行動は急変し、対中国まっしぐらになるでしょう。その時は日本が矢面になるでしょう。
もしプーチン大統領も健在、プーチン・ロシアも永らえられれば、米国はロシアとウクライナの和解を試みるでしょう。先般5月14日、米国国防長官がロシア国防相と電話会談をしたとのニュースがありました。

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米国防長官、ロシア国防相に即時停戦を要請 ウクライナ侵攻後、初の電話会談
https://times.abema.tv/articles/-/10023571
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あれほどプーチンを戦争犯罪者と呼び、強力な武器を渡して一方的にウクライナを援助していた米国がロシアに停戦を申し出るというのです。ロシアの侵攻を弾劾し、プーチン・ロシアを滅ぼし親米ロシアに変えるつもりではなかったのでしょうか?

私は、ロシア・ウクライナ戦争がさらに長引くと判断されれば、米国はプーチン大統領と和解し、戦争終結を図ると思います。中国に対する行動を起こしたいからです。
その時はプーチン・ロシアは中国につかないという約束が、絶対条件でしょう。プーチン大統領がそれを飲むなら、戦争犯罪人は無罪放免となるでしょう。それどころかウクライナなどロシアにくれてやる!などともなりかねないでしょう。正義はどちらにも同じではなく、現実には重みづけがあります。

以下は、私の一つの仮の想定です。
地続きのロシア・ウクライナと違い、海を挟んだ日本と中国はミサイル合戦になるでしょう。
台湾海峡かその周辺で航行中の日本の漁船のような民間船、あるいは海上保安庁や自衛隊の船が攻撃を受けて沈没します。乗組員は全員死亡。その後に、近くに中国軍の船がいたという報道がなされます。日本では中国軍、日本船を攻撃!日本船は沈没、乗員は全員死亡!と大きな記事が出て、連日メディアが煽ります。
無論、中国は全く関与していないという声明を出しますが、その時点で日本人はもうすでに中国に対する憎悪が上り詰めています。
その時、沖縄の自衛隊の基地から中国に向けたミサイルが北京近郊に発射され、その報復として今度は中国から日本本土にミサイルが発射される・・。
こんなシミュレーションが、私の脳裏に浮かびました。

「戦争をさせない」なんて、こんなあっという間の変化の中で本当にそれができるのでしょうか。
どのようなシミュレーションを考えているのでしょうか。

日本が、米国の尖兵として対中国戦争に追い込まれない方法は、中国、ロシア、インドが一つのチームとしてがっちり手を組むことが大きな要因になると思います。世界は2ブロックの対立になりますが、米国を中心とした西側ブロックも簡単には手を出すことができなくなり、米国の尖兵たる日本からも死神が去っていくと思います。
先に書いたように、所属するブロックが異なっていても賢くあれば「仲良く」できます。

それと日頃から中国を敵対視しないことです。
敵対視と言うことは、よいことはなるべく伏せ、否定的な内容、嫌なことを中心に表面に出すことです。これで日本国民の意識に相手に対する不快感が育ち、それが中国に対する憎悪に変わっていきます。我々はおかしいと思うことははっきりと言うと言って否定的なことを強く主張し、そのために中国に対する敵対意識、否定的な意識がその野党を信頼する人々の中に大きく育ちます。実際はそうではなくとも、まるで与野党の主張が一致したかのように国民には見えます。そしてその一致したかに見える方向に右派も左派も一致していきます。こうして実質的に中国に対する嫌悪感を煽っておいて、いよいよその意識が全国民に育ってきた時、我々は戦争を否定すると言ったってどうにもなりません。科学的にはあれはあれ、これはこれ、でよいのかも知れませんが社会事象は繋がっています。口先ではなく、本当に戦争を避けたいと思うなら、この辺は本当によく考えてもらいたいものです。そうすれば何を一番望んでいるのか、その真意がもっと正しく伝わりさらに支持が増えると私は思います。

先の大戦の終結後、中国から逃げ遅れた日本の敗残兵に中国は何と言ったか?「恨みに報いるに徳を以てす」と言ったのです。この言葉を思い出すことは、日本と中国の戦争を避けるための大きな力になると、私は思います。日本の敗残兵と中国政府の関係を描いた『再生の大地』と言う合唱劇がもっともっと広まればよいと思います。

「戦争をさせない」とは、敵が攻めてきた時に白旗をあげることではなくて、まず敵が攻めてくるようなタネを蒔かないこと、不幸にして既にタネが蒔かれてしまっていても、それが芽を出さないようにすることです。タネが蒔かれ、それが芽を出し成長して花が咲く。戦争という花だけを見て初めて戦争だけは絶対に嫌だとか、戦争を始めた国だけが悪いとか、そこに至る過程は何も考えず、結果だけをどうこう言っても戦争を無くすことはできないと思います。「戦争をさせない」とは、攻めてきたらどうする?ではなく、攻めてくるようなタネを蒔かないこと、芽を出させないこと、そのために人間だけに授かったこの大きな頭脳を使うということではないでしょうか。

 

 

 

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