森中定治ブログ「次世代に贈る社会」

人間のこと,社会のこと,未来のこと,いろいろと考えたことを書きます

沖縄の未来・人類の未来

2021-12-14 09:08:12 | 人類の未来

 りゅうちぇるの『こんな世の中で生きていくしかないなら』を読んだ。りゅうちぇるは1995年生まれの26歳、TVタレントでおバカキャラらしいが私はTVを見ないのでわからない。表紙と巻頭に何枚もの本人の顔と容姿の写真がついているが、私の第一印象はジェンダーレス。本人は、そう呼ばれることを好まない。ジェンダーレスを気取っているのではない。何か別の目的のためにそうしているわけでもない。ただ自分が思うように生きているだけ。生まれたばかりの子どもがいるが、男は青、女はピンクという色分けをしないで育てる。男がピンクの服を着たっていいし、女が男を守ってもいい。
 高校生の時のツイッターでフォロワーは2万人を超えた。沖縄出身だが戦争を知らない世代。飛行機が爆音を響かせて飛ぶのが当たり前の中で生まれ、育った。
 そんな若者が「危険と隣り合わせだ」と実感したのは、2004年ヘリが沖縄国際大学に落ちた時。小学校3年だった。ヘリが上空で旋回するのを見ていたら、急に止まって垂直に落ちた・・・。
 沖縄では、戦争や基地について何も思わないほうが不思議。罪のない人同士が殺し、殺されるのは残酷だ・・・

 米国議会の諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会」の11月17日の報告書は、台湾有事において米国が軍事介入の動きを見せた場合、グアムと沖縄の米軍基地が核兵器の先制攻撃の標的になる可能性があると指摘した。

 米国が日本の領土である沖縄まできて、中国に武力攻撃をかけようとする。中国政府が自国民を殺すための攻撃施設を無効にしようとするだろうことは、米国の報告書を待たなくても容易に想像できる。結局一番酷い目に合うのは沖縄だ。アベ元首相が右翼の集会で台湾有事の時は米国と一緒に台湾を助ける旨の発言をし、さらに尖閣は日本のものだと再三再四言ったらしい。これを聞いた台湾野党の国民党は怒り政局になりかねないという。
 尖閣は那覇から410km、東京からは1950km、一方台北からは280km、台湾も自国に所属する諸島だと主張している。

 先の大戦の後、カイロ合意に至る過程でルーズベルトは蒋介石に「アメリカと共に日本を爆撃することに協力すれば、日本の敗戦の後に琉球群島を与える」と誘い込んだが蒋介石はその申し出を断った。この事実は秘密にされていたが当時の部下の外交部長によって皆の知るところとなった。こういう経緯があって、台湾は「釣魚台(尖閣諸島)は台湾のものだ」と主張するようになり、米国は、沖縄の日本への返還にあたり、「(尖閣の)領有権に関しては米国は関わらない」と言い続けるようになったのだ。
 筑波大学名誉教授の遠藤誉という中国専門家が、このように解説しているようだ。
 さらにこうも書いていると言う。
 たいへん残念なことに、日本のマスコミや中国研究者、あるいは国際政治学者、さらには元外交官までが、元首相の発言が、「台湾の領土主権を侵犯する言葉を発したに等しく」、「台湾を侮辱したに等しい」という認識を持つ事ができないままだと。

 蒋介石が、沖縄をくれるという米国の言葉を遮って台湾からの日本の本土爆撃を断ったことで、日本は大きな恩を受けたような気がする。日本軍の台湾統治が礼節を保って好印象だったからかもしれないし、蒋介石が他国の人々を大量死させる爆撃を自国からはさせないという尊敬に値する信念を持っていたのかもしれない。いずれにせよ、台湾は日本本土爆撃の米軍基地にはならなかった。一方ベトナム戦争では、沖縄はベトナム爆撃の基地になった。ベトナムでは北の方に悪魔の島があり、そこから爆弾の雨を降らせる飛行機が飛んでくるというベトナム人の話を私も過去に聞いている。
 今度は沖縄が、中国に爆弾の雨を降らせる基地になるのだろうか。
 沖縄の人はそれを望むのだろうか・・。

 私は、さらにすごい話を聞いたことがある。先の大戦で沖縄は酷い目にあった。日本は戦争に負け、2度と武力で事を解決しないと誓い、平和憲法を建てて軍備を捨てた。これを喜んだのは日本本土の人ばかりではない。沖縄の人こそが心から喜び歓迎したのだ。佐藤栄作元総理が沖縄の本土並み復帰を成し遂げ、ノーベル平和賞に輝いた。私は沖縄の著名な新聞社の相応の地位ある方から聞いた。沖縄が日本への復帰を望んだのは、無論様々の理由がありそのうちの一つではあるが、日本の平和憲法、2度と戦争をしない、他国を攻撃する武力を持たないという日本独自の憲法があるからこそ、日本への復帰を望んだのだ。
 先の戦争で一番過酷な運命に弄ばれた沖縄だからこそ・・・この気持ちは人間として私にはとてもよくわかる。

 こういった沖縄の血塗られた歴史を考えてみると、私は沖縄は独立してもいいんじゃないかという気がした。無論それは沖縄の人々が考え決断することであるが、私個人として戦争時からの経緯を頭に浮かべると、ふっとそんな選択肢の一つが心を掠めた。独立国家となって日本や米国の武力基地を置かない。無論中国の基地も置かない。沖縄は中国も台湾も米国も日本も、どの国にもどの地域にも爆弾の雨を降らせはしない。人間の大量殺戮には加担しない永世中立の国家となる・・。
 私には、琉球群島をやると言われても「我々は他国の爆撃基地にはならない」とその誘いを断った蒋介石が重なる。

 来年参院選を経て与党が多数となり、憲法が改正される可能性がある。再軍備が公式に可能となる・・。
 2度と戦争のために武器を持たないという日本の志が消える。この時、沖縄は日本との訣別を可能とする最大の大義が生まれる。
 右翼にとっては長い間耐え忍んだ念願、他国を武力攻撃する権利を手に入れたという思いで心が満ちただろう。沖縄に対して財力で締め付けるような意地悪や、顔を隠して後ろから殴るような卑劣な暴力、コソコソした嫌がらせ、そういうことは一切やめ「ここで道は別れるが平和を願う心はどちらも同じだ。沖縄よ、達者でな」と堂々と祝福したらどうか。右翼も念願達成だ。沖縄が今まで沖縄人のためではなく日本人のために味わった苦しみを理解してやれ。

 欧州ではスイス・・永世中立国。米大陸ではコスタリカ・・軍隊を捨てた国・・。そしてアジアでは沖縄。いずれも小国で歩んできた歴史も違い、そこに住む人も違う。でも欧州に一つ、米大陸に一つ、アジアに一つ。人類の未来に続く道を指し示す同じ標識に燈が灯った。日本は普通の国になったが、その時同時に沖縄は、世界を照らす標識灯となった。

 りゅうちぇるのような若者。性に関わる表面的な縛りにとらわれない若者。
 男の子にピンクの服を与え、女の子が男の子を守ってもいい現代。
 こういう時代にこそ人類の選択肢が現れるのではないだろうか。

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