その3 すくすくげんきいっぱいのきんたろう
おかあさんのおっぱいをいっぱいのんで、すくすくとそだったきんたろう。
きんたろうが3さいになるころには、きんたろうにいろんなことをおしえてくれたサルたちはもちろん、ウサギ、リス、タヌキ、キツネといったどうぶつたちとおともだちになって、いっしょにあそぶようになりました。
きんたろうたちは、あしがら山のもりの中でおすもうやかけっこなどしてあそんでいます。なつにはちかくの川やいけなどにいって水あそびやすいえいをしたりしてみんなであそびます。
「はっけよい、のこったのこった」
きんたろうはどうぶつたちとおすもうをするのが大すきです。きょうもみんなでおすもうのけいこをしています。
まずは、サルがきんたろうにむかっていきましたが、きんたろうはらくらくとサルをどひょうのそとになげとばしました。つづいて、タヌキやキツネやウサギもきんたろうとおすもうをとりましたが、力もちのきんたろうにはまったくかないません。
それならば、どうぶつたちが力をあわせてきんたろうとおすもうをしましたが、きんたろうはどうぶつたちがたばになってむかってきても、つぎつぎとどうぶつたちをどひょうのそとへなげとばしました。
「さあ、つぎはみんなでかけっこをするよ」
おすもうのけいこがおわると、つぎはみんなで山の上までかけっこをします。
きんたろうは、かけっこをするためにほかのどうぶつたちをよびましたが、どうぶつたちはきんたろうよりもさきに山の上にいちばんのりするために、すでにかけっこをはじめています。
「よ~し、ぼくも山の上までかけっこをするぞ」
きんたろうも山の上にむかってかけっこをはじめました。
すると、きんたろうはあしもはやいので、さきにかけっこをはじめたどうぶつたちをあっというまにおいぬくと、そのまま山の上へいちばんのりしました。
あとから山の上にやってきたどうぶつたちは、山の上につくとすぐにぐったりしてしまいました。しかし、きんたろうはあれだけかけっこをしてもまだまだげんきいっぱいです。
「やっぱり、おすもうもかけっこもきんたろうくんにはかなわないよ」
どうぶつたちも、あれだけおすもうやかけっこをしても力もちでげんきいっぱいのきんたろうにはかないません。
やがて、あしがら山にもあついなつがやってきました。
なつといえば、川やいけやたきでの水あそびです。きんたろうもどうぶつたちも水あそびが大すきです。
きんたろうやどうぶつたちは、川の中に入ってさっそく水のかけあいっこをはじめました。どんなにあついなつでも、みんなで水あそびをすればきもちがいいものです。
「これから、ぼくは川のふかいところへもぐってみんなのためにおさかなをとってくるから、ちょっとまってね」
きんたろうが川のふかいところへもぐると、そこにはおろんなおさかながおよいでいました。きんたろうは、どうぶつたちのためにおさかなをとっているところです。
きんたろうは、力もちでげんきいっぱいなのはもちろんですが、どうぶつたちへのやさしいこころをもった男の子でもあります。また、おさかなをとるときでも、うまれたばかりの小さなおさかなをとることはありません。きんたろうが川の中でおさかなをとるときは、できるだけ大きなおさかなをとるようにしているのです。
フナやアユといったおさかなをいっぱいとれたので、きんたろうは川から上がるとどうぶつたちにおさかなをあげました。どうぶつたちは、きんたろうがおさかなをもってきてくれたのでみんな大よろこびです。
「きんたろうさん、どうもありがとう。またあしたもいっしょにあそぼうね」
「あしたもどうぶつたちのみんなといっしょに水あそびをしようね」
どうぶつたちは、きんたろうにおさかなをもってきてくれたことにかんしゃしました。そして、おたがいにあしたもいっしょにあそぶやくそくをしておうちへかえることにしました。
きんたろうは、かわでとれたおさかなをもっておうちへかえりました。
「おっかあ、きょうもかわでおさかながとれたよ」
「きんたろう、いつもおさかなをとってきてくれてありがとう」
おかあさんは、いつもげんきいっぱいのきんたろうを見てにっこりとほほえみながらいいました。
「そうそう、きんたろうにわたしたいものがあるから、ちょっとまってね」
おかあさんは、おうちの中から木のはこをもって出てきました。その木のはこはおかあさんにとってはかなりおもいものですが、じめんにおとさないようにゆっくりとあるきながらきんたろうのところまでもってきました。
「きんたろう、この木のはこをあけてごらん」
きんたろうは、おかあさんがもってきた木のはこをあけました。そのはこの中からは大きなまさかりが出てきました。
「このまさかりは、きんたろうのためにおっとうがのこしてくれたものだよ。さあ、まさかりをもってごらん」
おかあさんがきんたろうにおとうさんのかたみである大きなまさかりを見せると、きんたろうはそのまさかりをもちました。すると、きんたろうは大きなまさかりをらくらくともち上げることができました。
おかあさんは、らくらくとまさかりをもち上げたきんたろうを見て、力もちでやさしい男の子にすくすくとそだっていることに大よろこびしています。
あしがら山もすっかりとあかねいろのゆうやけぞらがひろがってきました。
きんたろうとおかあさんは、いっしょにばんごはんをたべはじめました。きょうのばんごはんは、きんたろうがやいてくれたおさかなとおかあさんがつくってくれたごはんとみそしるです。
きんたろうがじぶんでとってきたおさかなは、おかあさんもとてもおいしそうにたべています。きんたろうも、おさかなはもちろん、おかあさんがつくってくれたごはんもみそしるもおいしそうにたべています。きんたろうは、いつもおかあさんがつくってくれたごはんをのこすようなことはしません。
「おっかあ、おかわり」
「きんたろう、ごはんをいっぱいたべて大きくなってね」
きんたろうは、ごはんをたべるのがだいすきなのでいつもおかわりをします。おかあさんも、きんたろうがげんきな子どもにそだってほしいので、きんたろうがごはんをおかわりするのを見てにこにことほほえんでいます。
ふたりがばんごはんをたべおえてしばらくすると、きんたろうはおかあさんのそばにやってきました。
「おっかあ、おっぱい」
「ふふふ、きんたろうはおっぱいのおちちも大すきなんだね」
きんたろうはごはんもよくたべますが、おかあさんのおっぱいをのむのも大すきです。おかあさんもきものからおっぱいを出すと、きんたろうはおっぱいをすいつくようにごくごくとのみはじめました。おっぱいをのんでいるきんたろうのかおを見たおかあさんは、きんたろうがいつもげんきでいることがなによりもうれしいようです。
きんたろうは、いつものようにどうぶつたちといっしょに水あそびをするためにちかくの川へいくところです。そこへやってきたのは、サルとウサギです。
「きんたろうさん、はやく川へきて!」
サルとウサギは、なにやらあわてたようすで、きんたろうにすぐ川にきてほしいといっているようです。
「そんなにあわてて、どうしたの?」
「たいへんなの! キツネさんとタヌキさんが川のふかいところでおぼれているの!」
サルとウサギはせっぱつまったようすできんたろうにいうと、きんたろうはいそいで川のところまではしっていきました。
「きんたろうさん、たすけて~」
「おぼれる、おぼれる!」
きんたろうは、キツネとタヌキが川でおぼれているのを見ると、すぐに川の中にドボーンととびこんでいきました。そして、川のふかいところでおぼれていたキツネとタヌキをたすけました。
「きんたろうさん、ありがとう」
「ぼくたちも川の中に入ってあそびたいとおもって、ついふかいところまで…」
キツネとタヌキは、じぶんたちがおぼれているところをたすけてくれたきんたろうにかんしゃしました。そして、きんたろうみたいにじぶんたちも川のふかいところであそぼうとしておぼれてしまったことをいいました。
「キツネさんもタヌキさんもぶじでよかったね。これからは、水あそびするときはあぶないところへいかないようにしようね」
「きんたろうさん、これからはあぶないところであそばないようにするよ」
「あれ、いままで見たのはゆめだったの?」
きんたろうがおぼれていたキツネとタヌキをたすけたのは、どうやらゆめの中のできごとだったようです。すると、きんたろうのおしりがひんやりとしているので、すぐにかけぶとんをめくりました。
「えへへ、きょうもげんきなおねしょがいっぱい出ちゃった」
きんたろうのおふとんには、きょうもでっかくてげんきいっぱいのおねしょがえがかれています。きんたろうは、おねしょしたおふとんを見ながら、すこしてれながらもげんきなえがおを見せています。
「ふふふ、きょうもきんたろうのおふとんはげんきいっぱいのおねしょでえがいちゃったね。どんなゆめを見たのかな?」
「おっかあ、きょうのゆめは川でおぼれたキツネやタヌキをたすけるために川の中にドボーンととびこむゆめを見たんだ。すごいでしょ!」
「きんたろうはいつもげんきなゆめを見るんだね。でっかいおねしょをしたおふとんとはらがけは、きんたろうがいつもげんきな子どもであるしょうこだよ」
きんたろうがおねしょをしたゆめの中のできごとをじまんすると、おかあさんもきんたろうのでっかいおねしょをほめています。
ものほしにほされたきんたろうのおねしょは、まさに川の中にとびこんだときのようなげんきいっぱいのおねしょ。きんたろうにとっても、おねしょしたおふとんとはらがけはげんきな子どものシンボルです。
おねしょぶとんがほされているものほしのそばで、きんたろうがげんきいっぱいのえがおを見せているのを見て、おかあさんもきんたろうのげんきなすがたを見ながらほほえんでいます。