チェンソーマン~愛と夢の物語~ 11巻ねたばれ感想
チェンソーマン11巻読みました。
ねたばれありありですので読んでない人は注意!
最高でしたね何もかも。
まずすごかったのは、少年漫画で「力」を否定したことです。
悪魔は恐怖されればされるほど強くなるという設定から、チェンソーマンがヒーローとして人気者になりもてはやされることによって弱くなるという構図。
これは一見ピンチのように思えますが、ラスボスであるマキマさんは攻撃では倒せないので無敵です。いくら強くなっても無駄なわけですね。
それで、「愛」をもってマキマさんを食べることにより殺すという。
力ではなく愛で殺したわけです。
「力」という意味の名前を持つパワーが弱いというのもその象徴だったわけですね。すごい!
強くなりすぎて抱きしめてもらえなかったポチタ、強すぎて他者を支配することしかできず孤独だったマキマさん。
悪魔の目的も、強くなることではなく愛されることだった。
悪魔の望むもの、それも愛でした。
ポチタとデンジが交わした契約は、「普通になること」ではなく「夢を見ること」だった。
デンジが借金生活をしていた時、夢に見ていた「普通の生活」は手の届かない理想の生活でした。
それが手に入ってしまったら?
11巻のデンジとコベニちゃんの会話シーン。
現実に追われて夢をみることをしなかったコベニちゃんと、ずっと夢を追いかけているデンジという対称的なキャラクターになっていたんですね。
コベニちゃんに、つらいことがある現実が普通で「ヤなことがない人生なんて…夢の中だけでしょ…」と言われて、デンジが「普通になること」が本当の夢ではなかったことに気がつく。
みんな普通の生活が手に入ったらそれはもはや夢ではなくなり、それ以上の理想を夢に見てしまう。それは悪いことではない。
1巻でデンジが言ってた「ポチタがいりゃあそれでよかったのに もっといい生活を夢に見たんだ そーかみんな夢見ちまうんだなあ じゃあ悪いことじゃねえ」というセリフがそれですね。これが最後に回収されるわけです。
ポチタは「これは契約だ 私の心臓をやるかわりに…デンジの夢を私に見せてくれ」と言っているのです。
「普通の生活を夢見ることが契約」なんて言ってないんですね。「夢を見せて」と言っている。
だからマキマさんの認識していたポチタの契約解除の条件は間違っていたわけです。お見事!
「ジャム塗った食パンなんてもう飽きた!毎朝ステーキ食いたい!10人くらい彼女ほしい!!」と願うデンジの普通以上のさらなる夢を見る気持ちが再びチェンソーマンになる原動力になった、という素晴らしいストーリー。
慎ましやかな普通の生活なんてそれが自分にとっての「普通」になってしまったらその時点で夢ではなくなり、さらに上の理想を夢見てしまう。でもそれでいいじゃん!夢見る気持ち最高!と言っているわけです。
これに気がついたときはチェンソーマン最高!!!超超超大傑作!!!となりましたね。
絶望的なストーリー展開でいて、その根底にあるテーマは「愛と夢」というのがすばらしく最高の物語でした。
ありがとうチェンソーマン。
きっとずっとだいすきな漫画です。
きょうの晩ごはんは生姜焼きでした。