前回からの続きです。


不安に思われる内容かもしれませんが、リスク回避のためのヒントとして前向きにとらえていただければと思います。


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小児がんの晩期合併症

 

 ・成長・発達への影響
  身長の伸び
  骨格・筋・軟部組織
  知能・認知力
  心理的・社会的成熟
  性的成熟

 

 ・生殖機能への影響
  妊娠可能か
  子孫への影響


 ・臓器機能への影響
  心機能
  呼吸器機能
  腎機能
  内分泌機能
  消化管機能
  視力・聴力


 ・二次がん
  良性腫瘍
  悪性腫瘍

 (by Hudson MM)


晩期合併症の増加

 グラフ
  軽度、重度の障害ともに30年のグラフ。年が経つごとに増加。

   ・慢性的な身体問題は、5-7割で見られる(プラトーにならない)
   ・晩期死亡率が高い
   ・二次がん累積発症率は3%、高齢層の癌が若年の時に発症
   ・頭蓋照射歴のある患者に肥満が多い
   ・健康保険への加入が困難、PTSD発症率が高い など

 NEJM 355:1572-1582,2006(北米CCS研究)


晩期合併症-医師記載欄

 グラフ
  男女別のグラフ。晩期合併症に当てはまる障害の数を表したグラフ。

 その他の種類として、
  側湾症、肥満、顔面非対称、視力障害、心理就職、聴力障害、不登校、脂肪肝、

  短腸症候群、高血圧、パニック障害


なぜ長期フォロー・支援が必要なのか?

 ◆小児がんの治癒を目指して、成長・発育盛りの小児期に毒性の可能性のある治療をしたため


 ◆小児期に発病した経験者にとって、人生の大きなイベントである就労・結婚・出産などは未知の体験である。

 

 ◆晩期合併症の早期発見と治療
 ◆教育・就労に関する相談
 ◆妊娠・出産に関する相談
 ◆心理・社会的なサポート
 ◆健康の維持・教育
 ◆包括的なヘルスケア


追跡不能例の調査

九州がんセンター臨床研究部 岡村純先生、診断:1980~2000年

  1. 診断数:1808人(全体を100%とする)
  2. 死亡が確認されている数:711人(39.3%)
  3. 生存数1(直近2年間に外来受診がある数):683人(36.7%)
  4. 生存数2(直近2年間に外来受診はないが何らかの方法で生存が判明している数):138人(7.6%)
  5. 生死が不明な数(直近2年間の消息がなく生死が全く不明):296人(16.4%)

 生存中とされる27%が追跡不能


 追跡が出来なくなった理由

 主治医が推測した理由
  ①転居
  ②就職
  ③主治医の交代
  ④その他(転院)
  ⑤不明


 家族から直接調べる必要あり
 ⇒調べた結果(296名)
  1 44% もう何も問題がなくなり受診の必要がないと思った
  2 24% 医師に受診の必要がないと云われた
  3 18% こどもの主治医が交代(転勤・定年など)したから
  4  9% 受診には費用がかかるから
  5 26% 病院の受診が不便だから
  6 15% こどもが親元を離れたから
  7  9% 転居などの理由から


 長期FUが途絶える理由

 <医療者側の因子>
  ・引き継ぎが不十分
  ・担当医の転勤や定年
  ・認識・知識不足
  ・医師のマンパワー不足
  ・連携の難しさ
  ・コメディカルの不在
  ・協力体制の少なさ
  ・社会心理的なケア困難


 <経験者側の因子>
  ・本人へのtruth-telling(告知)
  ・疾患・治療などの認識
  ・晩期合併症の危険認知
  ・経済的・心理的な理由
  ・転居
  ・現在晩期合併症がない

 

 <社会的・外的な因子>
 ・小慢制度の中断
 ・医療費負担
 ・学校や会社の理解不足
 ・生命保険加入の問題
 ・長期FU施設が未整備

 最適な長期FUが可能
 (リスクに基づくケア)



次回記事へ続く