どうする事も出来ない私 |  歩み

 歩み

日々の、思いを綴る二人の足跡。

徐々に、色々な名義変更の書類を書いてきて

後は、アパートの契約書と火災保険の書類だけ。


私がどうなっても、彼の親族には迷惑をかけないようにしなくては。





2つ並んだベットの右側は、空いたままになってる。


引っ越してきたときにはベットの向きや、どちらで寝るか話し合ってた。


私の足を気遣い、ベットから降りやすいようにもしてくれた。


彼は、どうしてもトイレに近いから夜中に起きてしまうから

トイレに近い方がいいと自分でベットを選んだ。


クローゼットも2つあり、どっちにするか二人で楽しく話し合った。


キッチンの方のテーブルの椅子も2つ。

これもまた、どっちがいいか話し合って決めた。


彼は、「料理は、俺の担当だからキッチンの近くのほうがいい」

そう言って二人の椅子だって決めた。


「二人の愛の巣だ」って言いながら楽しそうに生活用品を買い揃えてた。


どうしても私の身体は、健常者の様にはならないのと、

健常者の4分の1の体力では引越しの忙しさに着いていけず

「部屋で、休んでろよ!」って言って。


前に住んでいたところは、レオパレスだったからたくさんの物を揃えなくちゃいけなかった。

だからこの部屋には、二人のお揃いの物だらけだ。


ニトリには縁の無かった彼だけど、ニトリの常連さんみたいになってた。


小物は100円均一でいいんだからね!って無駄遣いを抑えたくらい。


私が、買い物に行けず部屋で休んでいると

私の喜ぶ顔を見たくて、本当に無邪気な子供のように見せてくる。


私以外の人には見せない顔を、たくさん見せて。


私は彼に、「私にまで格好つけなくていいんだから。その時その場で、ありのままの感情でいいから。ずっと気持ちも走り続けてたら疲れるでしょ?」って。


それでも私の障害を、気遣って言葉にしない事もあった。




少しずつ、とりあえずは絶対やらなくてはいけない事が少なくなってきて昨日の夜はふと、彼を見た。


私はまだ、現実を受け入れていない。

むしろ、受け入れたくも無い。


そう思っていたけど、昨日の夜は何だか現実に直面した。

その瞬間、「無理だ。」と言葉にするくらいの想い。


そう感じてしまった私は、今までにないほどのリスカをした。


もはや既に、100本以上ある腕のリスカの痕。


リスカをしたところで私は落ち着けることも無くて。


止まらない血とぱっくり開いた傷を見ても、もっともっと切り刻んで血を流し続けたかった。


人間の再生能力は凄いんだなって思った。

どれだけ噴出しても、そのうち止まってしまう。


結局、傷口はどうする事もできず救急外来で21ハリ縫った。


その処置中、病院のベットで涙をずっと流れてた。



私は、パニック障害からMRIでは発作が出てしまう。


以前、MRIの検査があったとき彼は中まで入ってきてくれて

ずっと横にいてくれた。

「俺が居るから、怖くないやろ?」って。


大学病院での治療も、横にいて先生の言葉も一緒に聞いてくれて話してくれて。


だけど、21ハリ縫っている間は彼が横に居なくて。


どうして隣にいてくれないの?って

長い処置の間中思ってた。


どれだけ無理な話でも、中に一緒にいつも入って隣に居てくれてたのに。


彼が、隣で一緒に処置室に居ない事が寂しくて仕方が無かった。

涙は、どんどん流れているだけだった。





人は、時間薬だとか受け入れるしかないよ、

など言うけど・・・・・・・。


私は、決して強い人間じゃない。


弱い人間だ。


彼の死を、受け入れる事なんて・・・出来ない。