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インデックス 2 救急一直線 新型コロナウイルス関連ページ紹介 PART 2

2021年01月16日 11時11分11秒 | COVID-19の集中治療

 救急一直線 COVID-19 関連記事の整理 集中治療  

インデックス 2 COVID-19についての記載記事検索

救急科指導医・専門医,集中治療専門医,麻酔科指導医・専門医

松田直之

COVID-19 早期救命に向けた介入について Part. 2

COVID-19の病態生理学的管理評価:ウイルス感染症を主病態とする敗血症に対するアプローチ

With コロナ:内服治療の優先 & ICUに入室させない管理の重要性 & 重症化予測スコアの開発の必要性

※ 留意事項(FDP/D-ダイマー比):COVID-19やウイルス感染症においては,線溶が亢進する時期があリ,初期感染状態ではフィブリンだけではなくフィブリノゲンの分解が進む時期があリます。凝固第Ⅰ因子フィブリノゲン(Fibrinogen)は,肝臓で生成され,血漿中でトロンビン(活性化第Ⅱ因子)によりフィブリン(活性化第Ⅰ因子)に変換されて,二次止血として凝固反応における重要な役割をしています。FDPは,フィブリノゲンとフィブリンなどの分解産物ですので,フィブリノゲンの分解が進んでいる線溶亢進状態か(FDP上昇増加傾向,フィブリノゲン→,FDP/D-Dimmer>5など),線溶が抑制されてきている炎症性線溶抑制状態か(FDP増加の減少傾向,フィブリノゲン↑,FDP/D-Dimmer<5など)をD-ダイマー高値の状態で評価できると良いと考えられます。線溶の主役であるプラスミンや,ウイルス感染症におけるミニプラスミンは,新型コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク切断酵素でもあリ,SARS-CoV-2の増殖に関与しているためにプラスミン制御が重要とする見解もありますが,その一方で,集中治療管理においては線溶が抑制されてFDPが落着してくる時期の炎症性線溶抑制,PAI-1の発現亢進,血栓傾向などに十分な注意が必要と考えています。(コメント補足:松田直之 2021/01/15)

政策・方策(2021/01/15

□ 行政との連携:① 救命救急センター整備,② ICU整備,③ 病院機能評価・災害時連携体制整備の整備(超急性期病院/急性期病院/慢性期期病院/回復期病院),④ 医療物資の需要把握と適正供給の仕組み化,⑤ tele-ICUシステムの充実(集中治療専門医の全国共有)

  ※ 災害時の病院体制の見直し:国公立大学 救命救急センター化連携,ICU指導者教育連携システムの構築,病院指導,等

□ 2次救急COVID-19対応輪番制度の充実と評価システムの構築:① COVID-19診療を行う2次医療機関の市町村レベルでの整備,② 受け入れ病院の依頼および決定システムの構築, ③ COVID-19診療における診療評価システムの構築,④ 市町村COVID-19管理センターの機能強化・充実,⑤ 市町村COVID-19対策議会の機能強化

  ※ 2次救急医療施設の充実 → 3次救急医療との連携および診療相談

□ コロナ病床運用計画の重要性:① 当道府県および市町村等との病院連携と病床確保指導,② 各病院での自発的な病床確保に向けた相互協力連携システムの構築(要指導)

  ※ 大学病院:救急体制としての大学間および救命救急センター連携システム(オンライン)および,病床運用指導体制/指揮命令系統構築が必要(2021年10月への対策

□ 医療従事者教育:① PPEの適正着用および消費量報告,② 感染防御教育(ゾーニング教育),③ 医療廃棄物処理法,等

□ 薬剤治療ベースの構築:COVID-19と診断のついたケース ※ 院内承認や臨床研究に準じた検討課題

(1)院外フォロー:リスクあり(60歳以上,糖尿病,心血管疾患,腎臓病,免疫抑制剤使用中)の処方承認例; ① アビガン内服,② オルベスコ吸入 or デキサメサゾン内服,等

   ※ 目標:重症化の予防・阻止

(2)入院ケース(一般病床): ① アビガン内服,② オルベスコ吸入 or デキサメサゾン内服,③ 抗凝固薬,④ 経口栄養継続,等 ※ 目標:重症化の予防・阻止

(3)集中治療ケース(呼吸・全身管理):① レムデシビル,② デキサメサゾン静注療法 or メチルプレドニゾロン 1mg/kg/日持続投与療法,③ ヘパリン 600 U/時〜:APTT比 1.5目標,④ 経腸栄養,⑤ その他:適応外使用として院内規約に準じて考慮(rTM,抗IL-6受容体抗体,等) ※ 目標:救命・後遺症の軽減

□ 人材活用・人材育成の最大化:救急科専門医・救急科指導医・集中治療専門医,そして看護師さん,臨床工学技士,理学療法士,病院執行部,医療従事者

 データ共有 新型コロナウイルスの各地域の現状 

日本 新型コロナウイルス感染状況 https://covid-2019.live/?fbclid=IwAR0KAlc53ghuIOhZiupf8AbrFhrL6nNTgQPypZBgI2h1rNnPao4yyzxd7xQ

日本 新型コロナウイルス死亡統計 http://www.ipss.go.jp/projects/j/choju/covid19/index.asp

愛知県新型コロナウイルス情報 https://www.pref.aichi.jp/site/covid19-aichi/

東京都新型コロナウイルス情報 https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp

京都府新型コロナウイルス情報 https://www.pref.kyoto.jp/kentai/corona/hassei1-50.html

大阪府新型コロナウイルス情報 http://www.pref.osaka.lg.jp/default.html

奈良県新型コロナウイルス情報 https://stopcovid19.code4nara.org/?fbclid=IwAR2BuH056HCMLHhYCS_KP0Eua7kcJRMdsuBDbXC0HQIqleL5n7vEhR10_ns

 データ共有 薬物診療エビデンス 

日本版敗血症診療ガイドライン2020(J-SSCG2020)特別編
COVID-19薬物療法に関するRapid/Living recommendations(日本集中治療医学会)

 文献紹介・考察 COVID-19 ジャーナルクラブ 

新型コロナウイルスSARS-CoV-2およびCOVID-19の文献紹介

SARS-CoV-2の特徴

感染性について(2021/1/17記載COVID-19の臨床症状の出現する2日前でもSARS-CoV-2ウイルスをヒトからヒトへ伝播する危険性がある:He X, Lau EHY, Wu P, et al. Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19. Nat Med. 2020 May;26(5):672-675. PMID: 32296168.

内容:広州第八人民病院に入院した検査室で確認されたCOVID-19の94人の患者のうち,症状の発症から発症後32日まで,94名の患者さんから合計414本の咽頭スワブの研究データが掲載されています。また,中国本土内外の公的データベースから,発症までの潜伏期間が平均5.8日(4.8– 6.8日),中央値は5.2日と評価されています。このデータでは,SARS-CoV-2罹患は症状発症の2日前から1日後がピークであるとしています。つまり,症状が出る2日前あるいは2日前以上の無症状な状態でも,新型コロナウイルスSARS-CoV-2を伝播する危険性があるということです。これは,受験生が発熱がなく咳もなく,受験会場で試験を受けたり,休憩時間に友人と会話をしている時に友人にSARS-CoV-2を伝播し,自宅に持ち帰る危険性などとして伝えられています。自宅で,高齢者や糖尿病などのリスクを持つ方と同居している場合には,特に注意が必要となります。

感染性について(2021/5/01記載COVID-19の臨床症状の出現する2日前でもSARS-CoV-2ウイルスをヒトからヒトへ伝播する危険性がある:Johansson MA, Quandelacy TM, Kada S, et al. SARS-CoV-2 Transmission From People Without COVID-19 Symptoms. JAMA Netw Open. 2021 Jan 4;4(1):e2035057. PMID:33410879

内容:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は,これまで症状のない状態や発症前2~1日などのヒトから感染する可能性が報告されており,時系列で疫学的検証が必要とされています。本論文は,中国の8件の研究のメタアナリシスのデータを使用して,米国CDCにより解析された内容です。これまでのSARS-CoV-2の多変量解析データより,SARS-CoV-2の潜伏期間を中央値5日に設定して研究されています。主要評価項目は,無症候者と症候者からのSARS-CoV-2の感染伝播の程度の評価としています。結果は,SARS-CoV-2の感染の59%が無症候性感染であり,35%が発症前の個人から,24%が症状を発症しない個人からというものでした。感染性のピークは,症状発現の2日前から2日後の間として解析されています。COVID-19は,無症候性の個人からの感染が全感染の半分以上を占めると推定されています。感染拡大を効果的に管理するためには,症候性COVID-19の特定と隔離に加えて,発熱や咳などの症状のない無症候者からの感染リスクを減らす必要があります。

 

COVID-19回復後の後遺症について:肺線維症

新型コロナウイルス感染症において,肺線維症を後遺症として残す可能性については,パンデミック前より懸念事項として挙げられていました。退院後3ヶ月~6ヶ月が経過した時点において,20%には肺線維症などの肺拡散障害が残存することなどが報告されてきています。以下の2つの論文は,一度目を通しておかれると良いでしょう。

後遺症 文献1. Huang C, Huang L, Wang Y, et al. 6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohort study. Lancet. 2021 Jan 16;397(10270):220-232. PMID: 33428867 (2021/3/26追記)

内容:2020年1月7日から2020年5月29日までの間で中国武漢の金銀丹病院で治療され,退院したCOVID-19患者さんのコホート研究の結果です。COVID-19で退院した2,469名の患者さんのうち1733名が登録され,年齢の中央値は57.0(四分位範囲:interquartile range 47.0-65.0)歳,約52%が男性である解析です。後遺症の追跡調査は2020年6月16日から9月3日までであり,追跡期間の中央値は186(175-199)と約6ヶ月です。結果は,倦怠感または筋力低下(63%),睡眠障害(26%),不安またはうつ病(23%)と報告されています。この原因として,肺線維症とまでは言えないものの類似する胸部X線像異常と肺拡散障害が器質化として残存することが問題とされます。

後遺症 文献2. González J, Benítez ID, Carmona P, et al. CIBERESUCICOVID Project. PULMONARY FUNCTION AND RADIOLOGICAL FEATURES IN SURVIVORS OF CRITICAL COVID-19: A 3-MONTH PROSPECTIVE COHORT. Chest. 2021 Mar 4:S0012-3692(21)00464-5. PMID: 33676998 (2021/3/26追記)

内容:スペインのリェイダのアルナウデビラノワ大学病院とサンタマリア大学病院のICUに入室したCOVID-19患者さんの退院の3か月後のフォローとして,症状,生活の質,不安感やうつ症状,呼吸機能,運動機能(6分間歩行検査),胸部CT像が評価されています。結果として,2020年3月から6月の間​​にCOVID-19にARDS(急性呼吸不全)を合併してICU管理となった患者さん125名が登録され,3か月のフォローとして62名(年齢中央値60歳,男性約74%)を評価できたとのことです。スペインという特徴なのか,喫煙歴者が約57%含まれています。この62名のうち,退院後3ヶ月においても,呼吸困難感(46.7%)と咳(34.4%)が残存しており,この82%が肺拡散能がを示していたという結果です。 6分間歩行距離の中央値は400(362-440)mでした。 胸部CT像では70.2%が異常であり,59.6%にすりガラス陰影,49.1%に網状病変,21.1%に線維化パターンが観察されたというものです。胸部CT像の重度度は,肺機能低下と6分間歩行距離低下と関連するという内容です。COVID-19のICU管理では,肺線維化対策についても十分に留意して,事前的対策を考えていくことが必要です。退院後3か月~6ヶ月において,COVID-19生存者の肺機能をフォローする必要があります。

SARS-CoV-2の予防:重要 マスク着用の意義のエビデンス

マスク着用を継続しましょう(2021/3/12記載)Brooks JT, Butler JC. Effectiveness of Mask Wearing to Control Community Spread of SARS-CoV-2. JAMA. 2021 Mar 9;325(10):998-999. PMID: 33566056

内容:マスク着用の利点については,「有効」・「重要」というエビデンスがまとめられてきています。コミュニティマスクの着用について,1)ソース(感染巣)管理としてウイルスを含むエアロゾルを空気中へ散布することを防ぐこと,2)非感染者のCOVID-19発症を減少することの2つの側面から,マスク着用の有効性がまとめています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の少なくとも50%以上が症状を発症したことがない方やCOVID-19発症前の方から感染であることから,ソースコントロールとして皆さんにマスクを付けていただくことが重要とし,この2020年2月より1年以上が経過しました。本疫学調査は,当時,エビデンスがない中で飛行機内などの公共の場でマスク着用を否定するケースがありましたが,SARS-CoV-2の蔓延を防ぐためにマスクを着用することが有益であることが以下の表などの解析としてまとめられてきています。例えば,米国海軍の航空母艦セオドア・ルーズベルトでのCOVID-19クラスターの発生時に,マスク着用で感染陽性リスクが70%低くなったと報告されていました。この論文も表の2番目に引用されています。

SARS-CoV-2の薬物療法についての文献紹介

ステロイド関連 1(2021/1/16記載)COVID-19におけるステロイド併用に随伴する2次感染症の増加:Obata R, Maeda T, DO DR, Kuno T. Increased secondary infection in COVID-19 patients treated with steroids in New York City. Jpn J Infect Dis. 2020 Dec 25.  PMID: 33390434.

内容:マンハッタンのマウントシナイベスイスラエル病院での小幡先生たちのCOVID-19入院患者の解析報告です。COVID-19において,ステロイドの併用により,肺炎発生率が有意に高かくなったと報告としています(75.4% vs 50.3%,P = 0.001)。デキサメサゾンなどのステロイド薬の併用により,入院中の細菌感染(25% vs 13.1%,P = 0.041),真菌感染(12.7% vs 0.7%,P <0.001)が増加することを報告しています。しかし,結果としてステロイド薬は,ICUに入院した重症例で有意に多く使用されているにも関わらず(ステロイド使用 vs 非ステロイド使用:ICU入室 62.3% vs 11.8%, P<0.001),ICUに入室していない群と同等の院内死亡率でした(OR [95%CI]:1.02 [0.60-1.73, P = 0.94])。ステロイド投与により併発する肺炎像の増悪にもかかわらず,生存させるメリットがステロイドにはあるのかもしれません。現在,ステロイドでは臨床研究結果(CoDEX試験;PMID: 32876695など)としてデキサメサゾンが国内外でCOVID-19の重症例によく使用されています。この観察研究においても,ステロイド薬としてデキサメサゾンが84.2%で選択されています。

ステロイド関連 2(2021/1/16記載)RACCO study;COVID-19におけるオルベスコ®(シクレソニド)による胸部浸潤影の増大傾向について(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター:NCGM)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状または軽症患者に対するシクレソニド吸入剤の有効性及び安全性を検討する多施設共同非盲検ランダム化第Ⅱ相試験A multicenter, open-label, randomized phase II study to evaluate the efficacy and safety of inhaled ciclesonide for asymptomatic and mild patients with COVID-19(RACCO study)

内容:COVID-19患者においてシクレソニド吸入剤投与群と対症療法群との肺炎増悪割合を群間で比較したNCGMのRACCO studyでは,主要評価項目として胸部CT画像による入院8日目以内の肺炎増悪割合,副次評価項目として鼻咽頭ぬぐい液のウイルス量の変化量などが評価され,90例の登録が解析されました。結果として,肺炎増悪率はシクレソニド吸入剤投与群41例中16例(39%),対症療法群48例中9例(19%)(リスク差 0.20(90%信頼区間 0.05-0.36),リスク比 2.08(90%信頼区間 1.15-3.75), p=0.057]と評価されています。対症療法群と比べてシクレソニド吸入剤投与群の方が有意に肺炎増悪が多いと結論されています。

ウイルス治療薬関連:エボラウイルス治療薬レムデシビルなど(2021/2/13記載

Repurposed Antiviral Drugs for Covid-19 - Interim WHO Solidarity Trial Results. N Engl J Med. 2021 Feb 11;384(6):497-511.  PMID: 33264556

内容:30か国の405の病院における11,330名の成人の無作為化前向き臨床研究において,エボラウイルス治療薬レムデシビル2,750例,マラリア治療薬ヒドロキシクロロキン954例,はHIV治療薬ロピナビル1,411例(インターフェロンなし),インターフェロン2,063例(内651例はインターフェロンとロピナビルを含む),そして対照群として4,088例が解析されています。合計1,253例の死亡が報告されています(死亡日の中央値8日目)。この研究は,ヒドロキシクロロキン,ロピナビル,およびインターフェロンの研究として,無益としてそれぞれ,2020年6月19日,7月4日,10月16日に中止されました。レムデシビルとロピナビルは,RNAポリメラーゼ阻害薬として新型コロナウイルスの増殖を抑制する可能性があるとされていましたが,肺移行性の低いことが薬物分布の観点からは問題とされていました。

 実データでは,レムデシビルを投与された患者さん2,743例中301例(約10.9%)が死亡,その対照患者さん2,708例​​中303例(約11.1%)が死亡しており,レムデシビルに救命効果がありませんでした。(率比0.95; 95%信頼区間,0.81〜1.11; P = 0.50)。また,HIV治療薬ロピナビルを投与された患者さん1,399例中148例(約10.5%),その対照患者さん1,372例中146例(約10.6%)が死亡しており,ロピナビルにも救命効果を認めませんでした(率比1.00; 95%信頼区間、0.79〜1.25; P = 0.97)。

 結論として,このNEJMのデータは,レムデシビル(図A),ヒドロキシクロロキン(図B),ロピナビル(図C),およびインターフェロン(図D)は,死亡率,人工呼吸回避,入院期間において,改善効果を認めないとしています。このような中で,2020年2月当初より注目している内容は,① 外来レベルでの早期のアビガンⓇ処方(リスク症例,発熱症例等),② 抗凝固療法(外来ではヘパリン皮下注などの検討),③ 吸入ステロイドあるいはデカドロン内服(NF-κB抑制,vWF産生抑制等),④ コルヒチン(抗炎症効果)です。ステロイド吸入については,肺末端にSARS-CoV-2を撹拌させてしまうことには注意し,抗ウイルス策との併用が不可欠かもしれません。集中治療室に入らないように対応できるように,ER等での初期外来診療をより充実させることが必要です。

ウイルス治療薬関連:イベルメクチン(2021/3/5 記載

López-Medina E, López P, Hurtado IC, et al. Effect of Ivermectin on Time to Resolution of Symptoms Among Adults With Mild COVID-19: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2021 Mar 4. PMID: 33662102.

イベルメクチン(ivermectin)は,マクロライド系経口除虫剤であり,救急領域では疥癬,また腸管糞線虫症の治療薬である。本邦の大村 智先生により放線菌が産生する抗生物質を基に創薬されています。このイベルメクチンは,SARS-CoV-2のメインプロテアーゼを抑制する既存の分子解析の中からリストアップされた薬剤の一つです。SARS-CoV-2のプラス鎖RNAゲノムでは,26個のタンパクがコードされています。これらは大きなタンパク(ポリペプチド)としてまず合成されて,次にタンパク分解酵素(プロテアーゼ)により切断されて発現型のタンパクとなります。SARS-CoV-2に発現するタンパクは,メインプロテアーゼ(Mpro/3CLpro; 非構造タンパク質5, nsp5)とパパイン様プロテアーゼ(PLpro,nsp3の一部)の2つが関与することが知られています。イベルメクチンは,SARS-CoV-2のメインプロテアーゼ阻害薬として作用し,SARS-CoV-2の構造構成に影響を与える可能性が期待されました。その一方で,SARS-CoV-2の接着する肺,血管内皮などの細胞内移行性などがどうなのかという見解がありました。この研究は,イベルメクチンが軽症COVID-19において有効な治療となるかどうかを検討した前向き臨床研究です。

 コロンビアのカリで実施された二重盲検ランダム化試験であり,2020年7月15日から11月30日までの間に7日以内(在宅または入院中)の軽度のCOVID-19患者476名が2020年12月21日まで追跡調査されました。イベルメクチン,300 μg/kg/日を5日間(n = 200),またプラセボ(n = 200)としてランダム化されています。主要評価項目は,21日間のフォローアップ期間内での症状解決までの時間でした。有害事象と重篤な有害事象も解析されています。

 結果として,症状消失までの時間の中央値は,イベルメクチン群で10日(IQR:9-13)であり,プラセボ群は12日(IQR:9-13)であり(症状の解消のハザード比、1.07 [95%CI、 0.87~1.32];ログランク検定によるP = .53),臨床症状改善までの日数に統計学的有意差を認めませんでした。 最多の有害事象は頭痛だったようですが,イベルメクチンで104名(52%)とプラセボを投与された111名(56%)とイベルメクチンで増加しているものではありません。

 COVID-19においては,1年以上が経過した現在,医療崩壊を阻止することが重要であり,「COVID-19を重症化させない創薬や治療戦略の構築」が極めて重要です。本臨床研究は,COVID-19の初期診療でのイベルメクチン投与の有効性を統計学的にはサポートできませんでした。これまで,18の臨床研究として2,282例を確認できますが,2重盲検ランダム化は2件にすぎません。これらにおいてRT-PCRの信頼度に加えて,イベルメクチンの投与量,投与期間などに研究間で統一性がありません。このような中で,本邦では240例の解析を目標として前向き2重盲検ランダム化試験としてCORVETTE試験が進行中です。コロナウイルスの変異が進む中で,試験開始時から現在までの,特に変異株に対する治療効果の検討もサブ解析として期待されます。

 

血漿療法 回復期血漿のエビデンス2021/3/27 記載

Janiaud P, Axfors C, Schmitt AM, et al. Association of Convalescent Plasma Treatment With Clinical Outcomes in Patients With COVID-19: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 2021 Mar 23;325:1185-1195. PMID: 33635310

COVID-19罹患患者の回復期血漿を投与する臨床研究のシステマティックレビューが報告されています。【評価項目】評価項目は,死亡率,入院期間,臨床的改善,臨床的悪化,人工呼吸管理,そして重篤な有害事象の発生です。【結果】4つの査読されたランダム化比較試験(RCT)から合計1,060例,6つの公的なRCTから10,722例が解析されています。 4つのRCTにおける回復期血漿の投与では,死亡リスク比は0.93(95%信頼区間:0.63~1.38)であり,絶対リスク差は-1.21%(95%信頼区間:-5.29%~2.88%まで)であり,有意な改善とは評価できない結果となっています。10件のRCTのすべての解析では,死亡リスク比は1.02(95%信頼区間:0.92~1.12)とされています。人工呼吸管理数,臨床的改善,臨床的悪化,また重篤な有害事象において,残念ながら,罹患患者さんの回復期血漿による統計学的に有意な改善は得られていませんでした。【私見】回収された血漿をまとめる段階で,スパイク蛋白などの変異株の増加のために,抗体間の抗原抗体反応や凝集の危険性を考慮しています。抗サイトカイン抗体や凝固系の修正は得られるのかもしれません。

ワクチン情報 ファイザー/BioNTechワクチン後の抗体の母乳移行性の確認

Perl SH, Uzan-Yulzari A, Klainer H, et al. SARS-CoV-2–Specific Antibodies in Breast Milk After COVID-19 Vaccination of Breastfeeding Women. JAMA. Published online April 12, 2021. PMID: 33843975

 イスラエルでは,COVID-19のワクチンプログラムは,2020年12月20日に開始されたそうです。ファイザー製薬さんのワクチンは,私たちの体の中で新型コロナウイルスのスパイク蛋白を作り,その生体内で作られたスパイク蛋白に対して私たちが生体内で抗体を作るというものです。スパイク蛋白は私たちには異物ですので,それがACE-2やKim-1などを介して接着した血管内皮などに炎症が起きないか,血栓傾向が固まらないかなどは,実際にSARS-CoV-2に感染したときと同様に注意しなければならないところです。まず,妊婦さんには注意が必要でしょうし,長期的には冠動脈などの石灰化,免疫膠原病の発症要因などにも注意が必要と思います。その一方で,この研究は母乳育児中のお母さんがワクチン接種後に,母乳中にSARS-CoV-2のスパイク蛋白抗体が出てくることを報告したものです。母乳を介して乳児に新型コロナウイルスに対する抗体を供給することができる可能性を示したものです。

内容:2020年12月23日から2021年1月15日までの間に広告とソーシャルメディアを通じてイスラエル全土から募集された母乳を与えているお母さんを対象としています。試験参加者は3週間の間隔でファイザー-BioNTechのスパイク蛋白mRNAワクチンを2回接種しています。母乳サンプルは,ワクチン投与前に収集され,最初のmRNA投与後2週目から6週間まで週1回の割合で収集されました。結果は,84名の解析として504個の母乳サンプルが評価されています。母乳中の抗SARS-CoV-2特異的IgA抗体の平均レベルは急速に増加し,最初のワクチン接種後2週間で約2.05倍となり,4週目(2回目のワクチン接種の1週間後)では母乳サンプルの86.1%に抗体が現出されています。84名中 47名のお母さん(55.9%)が最初のmRNA筋注後にワクチン関連の有害事象を報告し,2回目のmRNA筋注後は52名(61.9%)が有害事象を報告しています。この有害事象は,注射部の痛みが最も一般的であり初回が47.6%,2回めが40.5%です。 倦怠感は,初回で9.5%,2回目で33.3%です。また,2回目はothers(26.2%)に様々な症状が出現しており,胸の重たさなどには注意が必要です。母乳中の乳児はどうかというと,4名の乳児に発熱があったという報告です。この研究では,mRNA筋注後の6週間,母乳中にSARS-CoV-2特異的IgAおよびIgG抗体が強力に分泌されることが報告されています。 IgA分泌はスパイク蛋白mRNA接種後2週間で確認でき,4週間後(2回目のスパイク蛋白mRNA接種の1週間後)にはIgGが急増しています。妊娠中や出産後の女性に対してのCOVID-19のワクチンプログラムには,これからも経過を追跡し,慎重に対応していくことが必要です。

掲載:2021年1月16日,追記: 本ページは掲載を追記する継続した内容とします。

 

インデックス 2 COVID-19についての記載

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