戦うことの意味

 

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暗い景色に目が慣れ、ティミーやポピーにもこの暗黒世界の景色が遠くまで見通せるようになってきた。とは言え、今は岩山の壁の際をひたすら進むのみで、見える景色にも特別な変化は見られない。急ぎ慌てて砂漠の只中へ飛び出せば、どこから敵の攻撃を受けるか分からない。リュカたちは焦る気持ちを抱きながらも着実に歩を進めるべく、慎重に凸凹とした岩山の際をゆっくりと歩き進んでいた。
頭上から降り注ぐ陽光がなく、砂漠の旅の経験があるリュカやビアンカらにとっては暑さに体力を奪われることのない状況をまだ良いものと思える余裕もあった。しかし彼らは皆生きる者であり、最低限の水と食糧を必要とする。この魔界を目指し、旅を覚悟した時から、相応の水と食糧を用意し、その殆どはゴレムスが大風呂敷に包んで腰の左右にぶら下げている。魔界という場所をまるで分からない状況で用意する水と食糧は出来れば無限であってほしいものだが、旅に持ち歩ける物には量に限りがある。たとえこの世界の強力な魔物に敗れることはなくとも、その前にリュカたちの持つ水と食糧が尽きれば、そこで彼らの命は終わりだ。
母マーサが三十年にも及ぶ時をこの魔界に過ごすという現実に、リュカも家族も仲間たちも皆が、魔界にも人間の食糧となるものがあるのだろうと、どこか楽観する気持ちを持っていた。しかし今のところ、リュカたちの歩く場所に植物の気配は感じられない。たとえ頭を強い陽光が照らさずとも、目の前に広がる暗い砂漠の景色はそれだけで喉の渇きを覚える。
リュカだけではなくビアンカも、ティミーやポピーもまた、長旅の経験がある。旅の最中は緊張の糸が張りつめた精神の作用もあるのだろうか、想定よりも少ない水と食糧で済むことが殆どだ。ただ子供であるティミーとポピーには常にビアンカが声をかけ、二人の子供の調子を気遣っている。その姿を見て、リュカは妻よりも子供たちの体力を知っているのだと実感した。
ビアンカもまた子供の頃に、アルカパの町から山奥の村への旅を両親と歩んだはずだ。当時の彼女自身の旅を思い出せば、恐らくそれほど子供たちを気遣う不安は生まれないかも知れないが、やはり母親という立場なのだろう。彼女自身が子供の頃に耐えた旅を比較対象とはしない、ただ目の前の己の子供たちの姿を見る彼女の姿は愛情と冷静を素直に表面に出した母の姿だとリュカには思えた。
「こう暗くっちゃ時間なんてまるで分からないわね。そろそろ休んだ方がいいんじゃないかしら」
「いや、まだ大丈夫だろう。プックル、どう?」
「がうがう」
プックルの耳は周囲の異音を逃さない。リュカに異常なしと伝える声はごく低く、返事をするその間も集中を切らさずに常に両耳を立てている。足を止めないプックルもまたリュカ同様、まだ先に進めると考えているのは間違いなかった。
「お母さん、まだ大丈夫だよ。歩けるよ」
周囲の静けさに配慮するように、ティミーの声もまた小さく抑えられたものだ。魔界への旅が久々の旅となったが、今のティミーはすっかり旅の最中の調子を取り戻している。向かう先に照らされている光源を頼りに歩き続け、目標がある中、しかもその目標が目に見えている中での旅路は、先の見えない旅をしたことのある二人の子供にとっては大人が慮って想像するよりも楽にも思えるものなのかも知れない。ティミーとポピーがサンチョに連れられ世界を歩いていた時、彼らにはリュカとビアンカを見つけ出すという目標があったとは言え、地上の広い世界の中で小さな二粒を見つけなくてはならないような過酷な旅をした経験があるのだ。サンチョの大らかな性格にも大分助けられたところがあるだろうが、彼ら自身もまたその身に旅の辛さや、一歩先に何が起こるか分からない不安との付き合い方を、子供だからこそ柔軟に身に着けている部分がある。
「あ、でももしかしてお母さんが疲れちゃった? それだったら少し休んだ方が……」
そう言ってビアンカの顔を下から覗き込むのはポピーだ。母の隣を歩いていたポピーが心配そうに覗き込んでくるのを、ビアンカは笑みを作って見返す。
「あら、私は平気よ。これくらいで疲れるようなら、今までの旅だってとっくに音を上げて、途中で諦めてるわ」
決して強がりばかりではないのだろう。その声にはまだ彼女の元気が感じられるようで、リュカは静かに安心して胸を撫で下ろす。しかし彼女の言葉に強がりが全く含まれていないわけではない。
「ゴレムス、三人を手に乗せて運ぶことはできるかな」
プックルの隣を歩きつつ、リュカは皆を隠しながら岩山の一部となって進むゴレムスに声をかける。リュカの言葉を聞いたビアンカがすかさず反論した。
「そんな怠けたことできないわよ。みんな自分の足で歩いてるんだから」
「そうだよ、お父さん。ボクはまだ全然疲れてないよ!」
「しーっ、お兄ちゃん、静かに話さないと」
「ん~、じゃあピエール、ゴレムスの手の上に乗って」
唐突に名指しされたピエールが何事かとリュカを振り向き見る。皆で歩き進む中、ピエールは常に歩くゴレムスの足の間から広がる砂漠の様子を確かめていた。時折、広い砂漠の中をうろつく魔物の姿をその目に見つけたが、ピエールが見つけるよりも早くにプックルが魔物の気配に気づくため、ピエール自身その点においてはさほど役に立てていないと己を理解していた。
「あの、何故私をそのように……」
「いや、だってこういう砂の所って苦手でしょ? ほら、もうこんなに砂がくっついてる」
そう言ってリュカはピエールの緑スライムにひっつく砂を払ってやる。ほとんど水分で成り立っているピエールの身体は、砂地との相性が大層悪い。ピエール自身が身体をぶるぶると震わせればそれなりに砂は落ちるものの、砂の上を進むごとに再び細かな砂がピエールの身体にまとわりついてしまうのだ。
「テルパドールの旅でも一番辛そうだったのはピエールだよね」
「そ、そんなことは……確かに辛かったですが、今は強い日差しがあるわけでもないですし」
「何となくだけどさ、ピエールの身体、小さくなってない? 砂に身体の水が取られちゃってるんじゃないかなって、少し前から思ってたんだよね」
「…………」
「そんなの、大変じゃない。ピエール、お水を少し取ったらいいわ」
そう言って立ち止まるポピーが、ゴレムスが持つ荷物から水の入った皮袋を取り出そうとする。
「いえ、王女。御心配には及びません。それに貴重な水ですから大事に取っておいた方がよろしいかと」
「じゃあみんなの水を大事に取っておくためにも、ゴレムスの手の上に乗ってくれるね、ピエール?」
リュカの誘導の言葉に、ピエールは束の間考え込むように俯いていたが、皆の命を永らえさせるには何よりも水と食糧が必要なのは彼も重々承知している。楽をするという意味合いではなく、皆のためにという堂々とした理由でピエールは、それでも不承不承頷いて見せた。
「いざという時にはすぐに動けるように心得ておきます。決して私は怠けてゴレムスの手に……」
「あははっ、誰もピエールを怠け者だなんて思わないから安心して。僕たちの中に怠けてズルをするような仲間はいないよ。ねぇ、ビアンカ」
「そりゃそうよ。みんながみんなを信じてるから、こうして一緒に歩いて行けるんじゃない……」
「うん。じゃあビアンカたちもゴレムスの手に乗ってくれるかな?」
「……言うと思ったわよ」
いざ敵との戦闘となった時に前線で戦うようなピエールがゴレムスの手の上に乗せられている状態となっては、ビアンカや子供たちが同じように仲間の手の上に乗って進むことを拒む理由は必然と萎んだ。ゴレムスの広い手の上に乗るピエールの横に、ビアンカがポピーを先に乗せ、そしてティミーも同じく乗るように促す。しかしティミーは母の優しさを受け取りながらも、父や仲間たちと共に砂漠の地を歩くことを望み、拒んだ。
「お父さん、ボクはみんなと一緒に歩いて行きたい。いい?」
そう言うティミーの目を、リュカは暗い世界を仄かに照らすほどの明かりの中で見つめた。期待や好奇心に満ちた目をしているわけではない。勇者なのだから己の足で歩かなくてはならないという義務でも焦りでもない。
リュカも幼い頃、やがては父パパスと同じ目線で世界を歩くことを意図せずとも夢見ていた。憧れの父だった。今、もし父が生きていたら、肩を並べてこの暗黒世界を歩くことができただろうかと思うと、目の前にいる息子ティミーの目に浮かぶその純粋な意思を無碍にはできない。当時まだ六歳だったリュカとは異なり、ティミーは既に十歳の年を過ぎた。当時のリュカとは比べるべくもないほどに、ティミーの体つきは大きく逞しい。成長するごとに自信も滲み出てきたティミーの意志は、父リュカと共にこの暗黒世界の地を歩くことに向けられている。そしてリュカは父として、かつて父パパスがしてくれたように、子を守るだけが親の役目ではないのだと、ティミーの力を信じて頼ることをするべきだと息子の前に頷いて見せた。
「分かった。一緒に歩いて行こう」
リュカの返事を聞いて飛び上がって喜ぶティミーではない。それでも嬉しそうに湧き出すような笑顔を見せて、静かに「うん」と返して頷いて見せた。
「お兄ちゃんが歩くなら私も……」
「ポピー、私たちには私たちの役目があるはずよ。それともお母さんと一緒じゃイヤ?」
「そんなことあるわけないじゃない!」
「それにピエールも一緒。大丈夫。みんな一緒なんだから。ね」
「母子の邪魔をするようで申し訳ない限りです」
「何言ってるのよ、ピエール。貴方も家族同然なんだから、そんな言い方されたら悲しいじゃない」
そう言いながらピエールの緑スライムにまだしぶとく付いている砂を手で払うビアンカを見て、リュカはゴレムスの手の上に乗るビアンカのその手の上に、まるでポピーもピエールも乗っているようだと思わず小さく笑ってしまった。
「ビアンカ」
「なあに?」
「ありがとう」
「何よ。私、何もしてないわ」
彼女は本心でそう言っているのだろうと、リュカは妻の普段通りの表情にそう感じる。彼女はただ自分が子供や仲間にしてあげたいと思ったことをしているだけなのだ。こうするべきだとか、こうした方がいいだとか、外側からの思考が先なのではなく、真心から生まれる思いが先に立って外側からの思考が働いている。彼女の思いが中心に柱として在るから、皆は彼女の言葉に従う気になるのだろう。
「じゃあもう少しこのまま進も……」
「おい、リュカ。少し待った方がいいぜ」
リュカの後ろに立つアンクルが、リュカの前で立ち止まるプックルを指差しながら小声で伝える。プックルは警戒を知らせるように、赤い尾を真っすぐに立てていた。近くに魔物の気配を感じているらしい。無駄な戦いを避けながら進むリュカたちは、プックルが警戒を知らせる毎に立ち止まり、近くにいるであろう魔物が遠くへ去るのを待った。ゆっくりと慎重に進み続け、水と食糧が切れてしまうことも恐怖そのものだが、無駄に敵に戦いを挑みその場で尽きてしまうことは更に回避せねばならないことだった。
常に海のように波打つ空は暗く、地上の世界のような一日という健全な時を感じることができない。それ故にリュカたちは地上の時間でどれほどの時が過ぎたのかが分からずにいたが、現実には既に三日目の時を迎えようとしている頃だった。危険な未知の世界に身を置いているために常に気を張っている状態の彼らは、まだ一日と経っていないと感じたり、はたまた既に一週間が過ぎたのではないかと思えたりと、感覚が不安定だ。
プックルの赤いたてがみが逆立っている。耳をすませばゴレムスの巨大な身体の外側に動く気配を感じた。歩く度に砂漠の砂が舞い上がり、砂の粒がリュカたちの入るところにまで届くということは、今までのリュカたちの話し声も聞こえていたかもしれないほど近くに何者かがいるということだ。リュカが武器を構え、同じくティミーも武器を手にする。プックルは今にも飛び出しそうな雰囲気で姿勢を低くし、ピエールもゴレムスの手の上で戦いに備える。
しかしその者の気配は急に動き出したかと思うと、リュカたちの近くを一気に離れて行った。その勢いたるや、まるで敵が何者かから一目散に逃げるような速さで、見えない敵のその行動にリュカたちは一様に戸惑った。しかしそれから間もなく、プックルの耳にいち早く、砂漠に起こる異常の気配が届いた。
ゴレムスが手の平を丸め、風除けを作る。ビアンカ、ポピー、ピエールはその風除けに身を寄せ、砂漠に吹き荒れる砂嵐に耐えた。身を縮こまらせ、なるべく砂が当たる身体の面積を小さくする。凄まじい砂嵐はとても自然に発生したものとは思えなかった。ゴレムスの巨大な手が強風に煽られるほどだ。ビアンカもポピーも己の力だけでは身体を支えることができず、ピエールに手を掴まれどうにかその場に留まり耐えることができた。
リュカたちのいる場所が分かっているかのように、砂漠の砂がゴレムスの背後を嵐と共に叩きつけている。プックルは砂地に寝そべる体勢で砂嵐を凌ごうとしたが、あっという間にその身体は砂に埋まりそうになった。岩山の壁とゴレムスの間を吹き抜ける豪風が一瞬、ティミーの身体を連れ去ろうとした。しかしその手をリュカが掴み、羽を小さくたたんで風の影響を極力逃しているアンクルの身体に沿わせた。アンクルがティミーを抱き込み、リュカをも一緒に抱き込んで守る。ゴレムスの巨大な足がみるみる砂に埋まって行く。同時にアンクルとリュカ、ティミーの身体も砂に埋まりつつある。誰一人目も開けていられない状況に、ただこの激しい砂嵐が止むのを待つばかりだ。
砂嵐が止むころには、ゴレムスの足の膝辺りまで砂が積もっていた。プックルの姿が見えない。ただ赤い尾だけが砂から出ているのを見て、すぐにプックルを助けなくてはならないと思ったリュカだが、足が動かない。自分自身も腰まで砂に埋まり、足を踏み出せない状態だった。
「お、お父さん……」
リュカがそうしていたように、ティミーもまた砂に埋もれないようにと細かに砂から足を抜き出していたのだろう。ただ途中から波のように押し寄せる砂の勢いに抗えず、ティミーは辛うじて顔を上に向けて呼吸ができるだけの状態となっていた。リュカが急いで砂を掻いてやると、状況に気付いたアンクルもまたティミーの周りの砂を掻き出して行った。
「プックル!」
完全にその身を砂に埋もれさせてしまっているプックルの赤い尾は、リュカの声に返事をするように小さく動いた。今は砂の中で耐えている状態だが、すぐに助け出さなくてはならないのは明白だ。
ゴレムスの手の平から飛び降りて来たピエール、ビアンカが一緒になって砂を掘り返していく。しかし彼らの手では間に合わないと言うように、ゴレムス自らがその大きな手で砂地を探る。急ぎつつも慎重に探る砂の中の手に、プックルの胴体が当たると、ゴレムスはその手でプックルの胴体を掴み、ただ上から吹きつけ降り積もっただけの砂を強引にかき分けてプックルの身体を引き上げた。体毛のあらゆる場所に入り込んだ砂を振り払う余裕もないようで、ただぐったりした様子のプックルの姿だが、意識のあるプックルの青い瞳を見てリュカは一先ず胸を撫で下ろした。
「敵も逃げるような砂嵐……だったんだな」
アンクルの言う通り、今リュカたちの近くに魔物の気配はない。砂嵐が起こる直前まですぐ近くをうろついていたはずだが、砂嵐の気配を感じてどこか遠くへ逃げ去ってしまったようだ。
近くに魔物の気配がないのを良いことに、周囲には構わずにリュカもティミーもアンクルも各々ゴレムスの手によって砂から助け出された。しかしゴレムスの足元も砂に埋もれており、実はゴレムス自身もまた身動きが取れない状況だったと知り、リュカたちは総出でゴレムスの足元に積まれた砂を掘り出して行った。
そしてゴレムスの足元から半身を覗かせて見る砂漠の景色は、一変していた。周りは全て岩山に囲まれているものだと思っていた景色の一点に、岩山を割り開いたような道が姿を現していた。砂嵐が作った地形は、リュカたちのいる岩壁近くに盛土のように積み上げられた砂がある一方で、その反対側にあったはずの砂がごっそりとなくなっていたのだ。ちょうど開かれた道のその先に、リュカたちが目指すこの暗黒世界の光源が見えている。
「がうっがうっ!」
「今なら一気に行けるぜ」
プックルもアンクルも、魔物特有のその鋭い感覚に、近くに魔物の気配を感じていないのは明らかだった。リュカの目にも、見渡す限りの砂漠が広がり、そこに魔物の姿は見当たらない。恐らくこの砂漠には定期的に嵐が起こり、この世界に住む魔物でさえもあれほどの砂嵐はたまったものではないと、この砂漠から逃げ出してしまうのだろう。
「ゴレムス、行けるかい?」
リュカの言葉に、問題ないとばかりにその巨大な手を砂地に下ろすと、そうと分かったビアンカたちがゴレムスの手の上に乗り込んだ。
「ティミー」
「ううん、ボクはお父さんと一緒に……」
「違うよ。僕と一緒にゴレムスの手に乗って。今は一気に急ぐ時だ」
「でも突然敵が現れたらどうするの?」
「そしたら僕が、脅かしてやる」
そう言ってリュカは指先に小さな風を起こした。父の黒い前髪が風に揺れるのを見たティミーは、はっとした顔つきを見せた後、にかっと笑った。
リュカとティミーもまたゴレムスの手の上に乗ると、先を行くプックルが先ずは駆け出した。砂の海の上を跳ねるように駆けて行くプックルの後を、ゴレムスが今までに見せたこともないほどの勢いで進みだした。砂漠に敵の魔物がいればすぐにでも気づかれるような動きだが、幸いなことに砂嵐から逃げ出した魔物らはまだこの場所へ戻って来てはいない。念のためにと、アンクルが後方から警戒を怠らないように静かに、しかし味方の勢いに離されることなく飛んでついて行く。
この砂漠の地に定期的に現れる砂嵐だったのかなど、リュカたちには分からない。地上の世界とはまるで異なる環境で、空から照り付ける日差しもなければ、空に浮かぶ白い雲も見当たらず、雨や雪が降るのかどうかも分からない。ただ言えることは、運が良かったということだ。その運はもしかしたらと、リュカの脳裏にちらりと浮かぶ可能性があったが、考えても今は確かめようもないものだと、リュカはただ隣に立つティミーの肩に手を置いたままゴレムスの手の上で開かれた道の先をじっと見つめていた。



まだ砂漠が終わらない景色の中だったが、前方に見えてきた新たな光景に先頭を行くプックルが走る足を緩めて行く。目指す光源が近くなったようには感じられない。しかし砂漠を広く囲む砂漠の終わりが見えたのだと、プックルは確信して今度は途端に歩みを慎重に進め始めた。
リュカにもその変化が、先ずは鼻に感じられた。それまではどこまでも乾いた砂と空気とが全身に感じられ、それだけで無性に喉の渇きを感じていた。しかし限りある水を無駄にすることはできないと極力水を取ることは避けているために、今では呼吸をするのも苦しく感じるほどになっていた。喉がひりつき、唾を飲み込むこともためらわれるほどだ。
プックルに合わせて歩みの速度を緩めたゴレムスの手の上から、リュカは無言のまま飛び降りた。そして前を行くプックルの様子を見るために、戦友の後姿を追いかける。
プックルが後ろを振り向くと、その顔はリュカの予想通り、明らかに疲労を表していた。水が足りていないのは分かり切っている。しかしリュカがプックルに水を勧めたところで、彼はその厚意を受け取らないだろう。それが分かっているから、リュカはただプックルの隣で、まだ続く乾いた砂地の上を共に労わるように寄り添い歩いて行く。
その時、後ろからリュカの肩を叩く手があった。振り向くと、ビアンカがリュカやプックルと同じように砂の上を歩き始めていた。無駄に体力を消耗して欲しくないのだとリュカが彼女に戻るようにとゴレムスの手の上を指差すが、ビアンカは明確な意思を持って首を横に振る。彼女も言葉を口にするのが辛いのだろう。只の一言も話さないまま、リュカの隣に並んで歩き始める。
ビアンカが身に纏うのは、常に清かで潤いに満ちている水の羽衣だ。ビアンカは羽衣の裾を手に持ち、これを皆が飲めるような水に変えることはできるだろうかとリュカに目で相談するが、リュカは首を横に振って彼女の相談を断る。それはあくまでもビアンカの装備品であり、これからどれほどの強敵が現れるか分からない状況で妻の装備品を傷つけることはできないのだと視線だけで伝える。
すると彼女は唐突に、名案を思い付いたようにぱっと顔を輝かせた。声こそ出しはしないものの、まるで今ここに花が咲いたような笑顔を見せる妻を見ると、それだけでリュカの心は少なからず癒される。喉のひりつきも忘れて思わず声を出しそうになって、勢い出たのは咳だけだった。
ビアンカはリュカの背中を擦った後、自身の道具袋の口を開いて一つの道具を取り出した。彼女が手にしているのは、リュカが彼女に渡していた賢者の石だった。この暗い魔界にあっても、それ自体が仄かに聖なる光を纏う青の石は、その光を見ているだけで見る者に希望を与えてくれる。
ビアンカにはリュカのような、回復呪文の才はない。呪文の才能自体は間違いなくビアンカの方が上だろうが、使える呪文の種類にはその者自身の性質が直接関係しているようで、己に回復呪文の才の無いことをビアンカは時折悔しそうにリュカに言う。
賢者の石を両手に持ち、水の羽衣を纏うビアンカが目を閉じて、瞑想するかのごとく集中して見せた。彼女が持つ賢者の石は、砂漠の只中にあった聖堂でリュカの母マーサの言葉と共に譲り受けたものだ。聖堂内に灯る明かりの中でこの賢者の石はまるで命の源である水の色を濃く受けたような青色をしていた。今は聖堂の明かりはなくとも、賢者の石自体が青く淡く輝き、リュカにビアンカ、プックルにアンクル、ゴレムスやその手の上に乗る子供たちやピエールにも癒しの光よ届けと言うように光が滲み広がって行く。
「……がう?」
プックルが己の身体に異変を感じたように、小さく声を出した。嗄れているわけでもなく、咳き込むでもなく、いわゆる通常通りの声だった。それまで苦しいほどに感じていた喉の渇きが嘘のように消えていた。
「きっとこれも、お母様のお力なのよ」
そう言うビアンカを見て、決して母マーサだけの力ではないのだと、リュカは感じていた。マーサの力を信じるビアンカ自身の力もまた、家族や仲間たちの力となるに違いない。恐らく今のビアンカはティミーとポピーの母親に留まらず、魔物の仲間たちの母でもあろうとし、その上夫であるリュカの母にもなろうとしているのかも知れない。母マーサの計り知れない力が今、母ビアンカを通してその力を発揮しているのだと、リュカには自ずとそう感じられた。
「ありがとう、ビアンカ」
「何言ってるの。私は何もしてないわ。これはお母様のお力よ」
「君だって、母親だよ」
楽に言葉を交わせるようになった状況に、自然と足取りも軽くなる。リュカの横を俯きがちに歩いていたプックルも、自身でも気づかぬうちに顔を上げ、気力の戻った顔つきでリュカとビアンカを見つめている。そうかと思えば歩く位置を変えるべく移動をして、ちゃっかりとビアンカの横に並び、甘えるように彼女の足元にすり寄った。
「ふふっ、プックルも少し楽になったかしらね。元気そう」
「プックル、あともう少しだ。あの辺りで砂漠の景色が途切れてる」
「がうがう」
「え? どこどこ?」
リュカやプックルには見えている景色が、ビアンカにはまだその目に映らないらしく、彼女は目を細めてどうにか同じ景色を見ようとしている。リュカは己の方が彼女よりも暗い場所での目が利くのだろうと、砂漠の途切れる景色の彼方を指差して示す。
「どうやらこの世界にも植物の育つ環境はあるみたいなんだ。多分、あの先に草原らしい場所が広がってる」
リュカが鼻に感じていた気配は、水の気配でもあり、植物の放つ仄かな青臭さだった。魔物たちが棲むこの暗黒の世界でも決して砂漠や岩山が広がるばかりではなく、植物の育つ土地があるのだと、リュカは鼻に感じ、今はその目にも小さく映している。
「お父さん」
小さな声で呼びかけるのは、ゴレムスの手の上に乗っているポピーだ。周囲に魔物が潜んでいないだろうと気配で感じつつも、隙を見せてはならないとリュカに辛うじて聞こえるほどの声で後ろから呼びかける。
「どうした、ポピー?」
「あの、ピエールに少しお水を飲んでもらっても構わない?」
ポピーの声もいつも通りで、喉に詰まるような苦しさもないようだ。ポピーの言葉を聞いたピエールが慌ててその言葉を打ち消すようにリュカに話しかける。
「いえ、リュカ殿、私は全く問題ありませんので」
「問題あるじゃない。絶対に小さくなってるもの」
そう言ってポピーがピエールの緑スライムを手で押すと、ピエールの身体は明らかにいつもより弱い弾力を見せていた。砂地の上を歩かずとも、この乾いた砂漠の空気に身体の水分を吸収されてしまうのか、いつの間にかピエールの身体が通常よりも一回り小さくなっているのはリュカにも分かった。
「ピエール、いざという時に動けなかったらそっちの方が困るよ。遠慮なく水を取って」
「しかし今、ビアンカ嬢のおかげで渇きは無くなりましたから」
「体質なんだろうね。ピエールが僕たちの中で一番水が必要なんだよ。大丈夫。この先にはきっと水があるよ。そんな匂いがするから」
「はっ、本当ですか?」
人間であるリュカにも気づいている景色や環境の変化に、人間よりも鋭い感覚を持っているはずのピエールが気づいていなかった。それだけで彼がいかに水分不足に陥っているかが知れる。
「ポピーも、ティミーも一緒に少しお水を飲んだらいいわ」
「お母さん、水と……少しだけ何か食べてもいい?」
ティミーはこれまで彼なりに我慢をしていたのだろう。誰もが水も食糧も取らないまま進み続ける状況で、言い出し辛かったに違いない。リュカもビアンカも顔を見合わせて、互いに反省するかのように頷き合い、すぐに子供たちに少し食べなさいと伝えた。今まさに成長期の真っ只中である二人の子に水も食糧も我慢をさせていた事実に居た堪れなさを感じずにはいられないと、リュカもビアンカも各々反省するように無口になってしまった。その後ろで彼らのやり取りを見ていたアンクルが「それならオレも」といち早くゴレムスの腰に下がる道具袋に手を伸ばして、中から木の実をひとつかみ手にして口に放り込み、ズルはダメだと言うようにゴレムスの拳骨を食らって頭を押さえていた。



暗い砂漠を抜けたところに広がっていたのは、リュカたちの予想していたような草や木々が育つような、地上と似たような景色だった。しかし当然、地上と同じというわけではない。日の光を浴びない草や木々が生命に漲る力を見せるはずもない。寧ろこの暗黒の世界にあってどのようにこの土地に命を根差しているのか、不思議でならないというのがリュカたちの感覚だ。
足元に踏む草の感じ方は地上のものと変わらない。しかし地に生える草には日を浴びたような健全な強さがなく、全てのものを拒むような刺々した形状で、既にこの地に棲む魔物らの足で踏み潰された箇所も近くにいくつか見られた。大きな足跡を見れば、それが遭遇したことのある巨大黄金竜のものであることは凡そ分かった。魔界に棲む魔物にとっても、これまでリュカたちが進んできた乾いた砂漠よりも、草木の生えるこの地の方が生きるに楽なのは疑うべくもない。
岩山と砂漠の景色を抜けたところで、岩山に寄り添うように左手に広がるのはまるで暗闇にも見える森林地帯だった。岩山があり、森林が広がるのであれば、近くに小川が流れる場所もあるだろうかとプックルは耳を澄ませ、鼻を利かせるが、彼が感じ取れるような近くにはないようだった。しかしこの地にもこうして植物が育つということは、この地の深くに水が流れる場所があるということだろうかと、リュカは足元の地面を掘り出そうかと本気で考えた。
「リュカ、少し森の中で休まねぇか? そんでちょっとこれからの進み方を考えた方がいいと思うぜ」
「うん、そうだね。……ただ、ここもそんなにのんびりできないかも」
身を隠すのには好都合な森だが、明らかにこの森の奥には魔物の気配がしている。ゆったりのんびりできるような場所ではないことは明らかだ。しかしそもそもこの魔界という地に置いてのんびりできるような場所もないのかも知れない。
「お父さん……私、あんまりそっちへは行きたくないの」
そう言ってリュカにぴたりと引っ付くポピーは、怯えるような目を森の中から外へと向けている。彼女が視線を向ける先、リュカたちが一休みする森の向こう側には、一層暗い空が広がっており、時折彼方の黒い空には悪しき稲光がちらついている。じっと目を凝らしてよくよく見てみれば、彼方の黒い空の下には、リュカたちが今寄っている岩山とは比べ物にならないほどの険しい山の形を目にすることができる。
山の形は空よりも黒く、黒い輪郭に浮かぶ山の形を見ていると、その黒に己の身体が吸い込まれそうな錯覚を感じる。強大な魔力に包まれるその山は疑いようもなく、敵の根城なのだろうと、リュカのみならず誰もが必然とそう感じ、いずれはあの地を目指すことになるのだろうと言葉にはせずともそう思いつつ各々無言で黒の山を遠くに見遣る。
「大丈夫。これ以上森の奥へは入らないよ。だって僕たちが目指すのはあっちだからね」
砂漠の地を歩いている時にも常にリュカたちの目に映っていたのは、この暗黒世界を仄かに広く照らしている光源だ。黒い空に山にと見える地を遥か左手に見遣り、正面に、その光源の景色は今も見えている。ただ目指す光に向かっていくには、広々とした草原地帯を歩き、敵の魔物との遭遇を恐れずに進まなければならない。
「お父さん、どうやってあっちまで行くの?」
ティミーも見つめる景色はただ草原地帯が地平に広がるだけで、その先に何があるのかはまだ視覚に分からない。進む方角は決まっているため、後は草原地帯を進む時機を見逃さずに捉えられるかどうかだけだった。
「行けそうな時になったら声をかけるよ。それまで少し眠っておいた方がいい。休むことも大事だ」
恐らく日の照る下でティミーの顔を見れば、今のティミーの目は明らかに充血して、寝不足を顕わにしているに違いないとリュカはティミーの両目に手を当てて休ませた。魔界とは言え植物の生きる気配を身近に感じることで、リュカだけではなく誰もが胸の内に生命の潤いをその身に取り戻したのは確かだった。その環境で少しでも身体を休めれば、恐らく彼らの疲れも思いの外回復するだろうと、リュカはポピーにも少し眠るようにと声をかけた。二人とも無駄に抵抗することもなく素直にリュカの言うことを聞き入れ、マントを身体の下に敷いてごろりと横になるなり、間もなく寝息を立て始めた。
「我が子ながら、逞しいわよね……」
「よっぽど疲れてたんじゃないかな。かなり気を張ってただろうからね」
「リュカ殿、交代で休みましょう。我々が見張っていますので、先に少しお休みください」
「ううん、僕は平気。ビアンカ、少し休んでおいて」
「本当に平気なの?」
「うん。なんでだろうね、それほど疲れてないんだ」
「後でちゃんと休むのよ。……じゃあ、遠慮なく少し休ませてもらうわね」
ビアンカはそう言うと、既に寝入ってしまった双子に寄り添うようにして、自身もマントを広げて敷布にし、その上に身体を横たえた。しばらくリュカの様子を気にしていたようだったが、彼女も慣れないこの暗黒世界に疲労していたのだろう。子供たちに続いて静かな寝息を立て始めた。
「がう?」
「お前も疲れただろ。ずっと気配を探ってくれてたからね。いいよ、休んでて」
「がうがう」
「僕は後で休むから。ほら、ゴレムスだってもう休んでる。また忙しくなるかもしれないから、順番に体力を養っておかないとね」
「ゴレムスは瞑想しているようですね。まるで石のように静かです……」
「リュカとピエールが見てりゃあ、大方異変に気付くだろ。……ということで、俺も少し休むぜ」
そう言うと、アンクルは誰に遠慮することもなく森の木の幹に寄りかかるようにして座り、すぐに目を閉じた。魔物は人間よりも頑丈にできている。それ故に眠って体力を回復する術にも長けている。眠る時間も人間に比べれば遥かに短いのだ。このような人間と魔物との違いを見る度に、リュカは自分も魔物であれば良いのにと素直に思ってしまう時がある。自身は恐らく人間の中では体力も優れており、そもそも物心ついた時から世界を旅する人生は始まっていた。途中、旅よりも過酷な人生の時間もあったが、それだからこそ尚彼の体力は尋常の人間ではなくなり、長い旅路にも芯から音を上げることがない。しかしそこまで行く彼でも、魔物の仲間たちの持つ頑強さには勝てない。
「ピエールは森の中を、注意して見てくれるかな」
「言われずとも。リュカ殿は草原の方をお願いいたします」
「もしうっかり寝ちゃったら起こしてね」
「それならそれで構いませんよ」
そう言葉を交わすなり、リュカとピエールは互いに背を向けるようにして、見張りを始めた。森の中に時折、魔物の鳴き声が低く響く。リュカは近くの木の枝についている葉の形を眺め、嫌に大振りで、やはり刺々した形状をしているのを見て、魔界という世界を占めている暗く鬱々とした空気を変えることが出来たら、魔界の様子もがらりと変わるのではないだろうかとぼんやりとそんなことを考える。
魔物という生き物をまだまだ自分は分かっていないのだと、リュカは魔物の仲間たちや、敵となる魔物たちを見る度にそう思う。魔物とは一体何なのか。人間と敵対するものと決めつけ、端から考えること自体を放棄すれば、それで互いの関係性は留まり、発展しない。しかし実際にリュカは、そして母マーサもまた、魔物である彼らと理解し合い、仲間や友人として話をしたり協力したりすることができる。
ただの夢や理想と言われるだろうが、この世に生きる人間も魔物も皆が分かり合い、互いに力を合わせて世界に生きて行くことが出来たら、それが最も良い世界となることなど分かり切ったことだと、リュカは魔界と言う世界に足を踏み入れた今、改めてそう強く思うようになっていた。
どこまでも暗い平原がリュカの目の前に広がっている。こんな暗い世界で暮していたら、たとえ人間でも心が滅入って、善良な人だったとしてもその心はいつの間にか黒く塗りつぶされてしまうだろうと、リュカはこの世界に抗うようにあくまでも草原の彼方に見える光の源に目を向ける。あの青白い光を見ているだけで、何故だか精神は保たれる。暗黒世界と言う夜しかないようなこの世界で、地平の彼方に見えるあの光は、リュカたちの抱く希望を見失わせない力を持っている。
「リュカ殿」
緊張したピエールの声がリュカの耳に届く。その直後、森の奥から漂う悪しき魔物の気配に嫌でも気づいた。まだそれほど近くではないが、明らかにリュカたちの方へと近づいてくる動きを、森の木々の間に微かに聞こえる音に感じることができた。
「がう」
眠っていてもこうして危険を察知する能力に長けているのが、魔物の性質だ。つい先ほどまですうすうと寝息を立てていたプックルは既に目を覚まし、ピエールと共に森の奥へと目を向けている。森の木々に囲まれながら胡坐をかいていたゴレムスも静かにその場に立ち上がり、敵の襲撃に備える。アンクルは木の枝が伸びる鬱蒼とした無数の葉の中に身を潜ませ、彼独自の視点で敵の様子を窺う。
敵の聴力がどれほどのものか分からないために、リュカは言葉を発さずに家族の身体を揺すって眠りから目覚めさせた。彼らもやはり、眠りながらも緊張から完全に解けてはいなかったのだろう。すぐに目を覚ますなり、声を上げることもなく、ただ窺うようにリュカの顔を見る。リュカが森の奥へ目を向けると、妻も子供たちも揃って同じように森の奥へと顔を向けた。
近づいてくる気配は、森の地面を歩くような音ではない。森の木々の枝の間を飛ぶように縫うように移動してくる、邪悪な気配さえしなければ、リスや猿の類を想像させるような魔物がリュカたちのところへと向かってくる。
「敵が……多過ぎます。囲まれれば、対応できません」
「森を出よう。草原で待つ」
ピエールの言葉にそれだけを言うと、リュカはすぐに森から出るべく、見えている光源に向かって走った。ビアンカもティミーもポピーも、すぐさまその後に続く。
「お父さん、今度はボクも……」
「頼む。お前の力も必要だ」
交わす言葉の間にも、敵の群れはあっと言う間に距離を詰めて来た。森の木々の間を飛んで縫って猛進してきた敵の姿が草原に現れ、その者の正体が明らかになる。
一見すると、猿の一種だった。しかし赤く染まる耳は尖り、背中には同じく毒々しい赤に染まる悪魔を象徴する翼がついている。空を飛ぶことも可能で、現に今、森の中から姿を現した敵の三分の一ほどが、同じように宙に留まるアンクルと対峙するように宙に浮いている。
「こ、こんなにいたの……?」
驚きに目を見張るビアンカは、そう言った直後に息を呑んでいた。彼女の目に初め見えていたのは草原に姿を現した十体ほどだった。しかしその実、森の中にまだ身を潜ませている敵の数を合わせれば、恐らく三十体ほどの敵、バズズという古代から生きる伝説の魔物が森の木々の間に不気味な目を光らせている。その事に気付き、ビアンカは思わず息を呑んだのだ。
その中で一匹、草原の地の上を前に進み出て来る者がいた。その行動を見るに、その者が恐らく敵の群れの指揮者となる者だろう。リュカは瞬時、その者との対話を試みようかと考えた。もし言葉が通じれば、互いの争いを避け、互いに犠牲を出さなくて済む可能性もある。
しかしリュカが一歩前に進み出ようとしたところで、敵の指揮者となる者が声を上げた。恐らく彼らの中の言葉だったのだろう。だがリュカたちには敵の発する言葉がまるで分からなかった。聞いたこともない言語だ。そしてその声は、リュカたちと対話を試みようとするものでもなかった。ただの戦いの合図に過ぎなかった。
リュカたちの正面から迫るのは、敵の二匹が放ったマヒャドの激しい吹雪だ。熱にも冷にも強いゴレムスが皆を守るべく、一面の壁となる。しかしゴレムスの巨体をもってしても、敵の放つマヒャドの威力を防ぎきれるものではない。ゴレムスの頭上に飛び上がるアンクルが応戦するように、両手からベギラゴンの呪文を放ち、凄まじい吹雪の威力を半減していく。
その間に十匹ほどのバズズが草原を駆け、リュカたちを四方から取り囲もうと動いた。敵の作る形を乱すため、プックルが一匹に狙いを定め駆け出した。プックルの攻撃を支えるべく、ピエールが呪文を放つ。イオラの呪文が炸裂し、彼らを取り囲もうとする十匹ほどの敵の動きが一様に止まった。その隙にプックルが先ずは一体をと、その首に食らいついて刺々した草原の地に倒した。
残りのバズズの群れが一斉に、その手から凍える嵐を噴き出す。ヒャダルコやマヒャドと言った、氷系の呪文が束となり、リュカたちに襲い掛かる。まともに食らえばそれだけで身体の芯まで凍り付き、死を免れない。
ティミーがアンクルの真似をするように、ベギラマの呪文を放つ。しかし敵の放つ氷の呪文に対してあまりにも威力が弱い。とにかく敵の呪文の力を削がなくてはならないと、ビアンカもまた息子と同様の呪文で応戦する。ティミーの後ろから、彼の力添えとなるように、ベギラマの呪文を唱える。母と息子の火炎呪文が一体となり、敵の群れが放つ氷系の呪文の威力を極力抑えて行く。
「お父さんっ!」
ポピーの声に振り向きざま、リュカは既に条件反射のように手にしていた剣を振るった。禍々しい猿がぎゃっと悲鳴を上げて逃げて行く。森の中からは次の群れが姿を現し、呪文の応戦が為される隙を縫うように距離を詰め、あっという間にリュカたちの立つ場所にまで迫っていた。
「ポピー! 力を!」
リュカの声に、ポピーはすぐさま呪文を唱えた。父の意に沿うようにと、バイキルトの呪文をリュカに纏わせる。その間にもポピーに敵の攻撃の手が迫る。ピエールが間に入り、敵の身体を打ち払い、退かせる。
「ピエール! 頼んだぞ!」
「はい!」
仲間の力強い返事を聞き、リュカは近くにいる悪しき猿の魔物を一斉に打ち払うように、バギクロスの呪文を唱えた。敵も手強い。リュカ一人の放つ最大真空呪文ごときで倒されるような魔物ではない。ただ歯向かう敵が煩わしいとでも言うように、容易くマヒャドの呪文を唱えて来る。それが五体同時にだ。たまったものではない。気を抜けば一瞬にして身体が凍りつくと、息を詰め、一気に敵の群れの中に飛び込もうとする。
リュカの意志を汲み取るように、プックルが駆けてきた。リュカがその背に飛び乗る。敵の放つ凄まじい吹雪の中を、正面からではなく、横腹に受けるようにして迂回しつつ近づく。
リュカとプックルが近づく敵の群れの中に、激しい爆発が起こった。ポピーの援護だと、リュカはすぐに気づいた。ピエールはポピーを守りながら、目の前の敵と戦っている。その中でも娘は己に出来ることをと、冷静に見極めイオラの呪文を放つ。
アンクルだけで多くの敵が放つ氷系の呪文に対抗するには限界があった。そして敵の群れの中にもどうやら、指揮者となる者がいる。その一匹が腕を振り上げた瞬間に、アンクルに襲い掛かる吹雪の力が猛烈なものとなった。宙に留まって耐えていたアンクルが敵の放つ呪文の威力の圧され、宙を吹き飛ぶ。それに併せ、敵の群れが統制の取れた軍の如く一斉に、宙から落ちようとするアンクルに襲い掛かった。
ゴレムスの巨大な腕が唸りを上げて、向かってくる敵バズズに向かった。正面からゴレムスの拳に激突した敵は、そのまま地に落ちた。しかしそれで倒れたのは一匹だけだ。アンクルに向かう敵の群れはゴレムスの巨大な身体の脇をすり抜けるようにして、滑空していく。
「ティミー! みんなを守るのよ!」
「でも! ボクがベギラマを止めたら、お母さんが……」
「いいから、早く!」
しぶとく氷系の呪文を一斉に放ち続けているバズズの群れに、ティミーは母ビアンカと力を合わせて対抗していた。ここを突破されてしまえば、三十はあろうかと言う敵の群れに一斉に攻め込まれることとなる。しかし倒れようとしている仲間を見過ごすこともできない。
「お母さんを信じて!」
ビアンカの身に着ける水の羽衣が、彼女自身が放つ火炎の眩しいほどの明かりに照らされ、もはや白く輝いている。ティミーは隣に立つ母の身から、凄まじい魔力が溢れ出すのを感じた。誰もが全力を出さねばここで尽きてしまうのだと、ビアンカは今までに行使したことのない魔力の解放を、彼女の両手から噴き出させた。
ティミーのベギラマの呪文を包み、その威力を爆発させたビアンカの放つベギラゴンの火炎が瞬時、敵の群れが放つ猛吹雪を打ち破る。敵の魔力が束の間たじろぐように弱まった。その隙を突くのは、暴風を巻き起こして突き進む、プックルの背に乗るリュカだ。妻の起こす火炎の中を暴風のトンネルを生じさせ、唐突に姿を現したリュカとプックルの姿に、敵の群れは明らかに慌てふためいた。それを好機にと、リュカはプックルの疾風のような速度の中で、敵の群れに剣を振るって行く。
アンクルがバズズの群れに囲まれる寸前、イタチの何とやらと言うように正面に攻め込んでくる敵に間近から、雄たけびをかましてやった。身をすくませた敵を目敏く捕らえ、その腕を掴むなり、まるで敵の身体そのものを武器のように振り回す。己の周りを囲もうとする敵の群れを近づけさせない。
敵にはあらゆる呪文攻撃が効いていた。砂漠の岩山に監視役として在ったキラーマシンとは異なり、遠くからでも呪文攻撃を浴びせれば打ち負かせる敵だと、ティミーは両手を暗黒世界の空に広げる。常に暗雲渦巻く空にはすぐさま稲光が煌めく。それを目にしたポピーもまた、即座に呪文の構えを取る。
敵の群れ全体に先ず起こったのは、爆発だった。呪文の才に優れているポピーは、まるで息をするのと同じように呪文を使いこなす。常に敵の群れと距離を取っていることもあり、彼女が呪文を使うことを敵がいち早く察することもない。三十体にも及ぶバズズの群れが一斉にその爆発の影響の中に、一瞬でも身を縮こまらせた。
直後に、敵の群れに雷が降り注いだ。森に、草原に、轟音が響き渡る。激しい轟音の中に、敵の群れから叫び声が溢れ出す。草原に倒れる敵の姿は多い。宙を飛んでいたバズズも飛ぶ力を削がれ、地に落ちた。しかしその中にもまだ一命を取り止め、戦いに向かって来ようとする者もいる。
敵の群れの中に在ってリュカはふっと、森の中に潜む一匹のバズズと目が遭った。仲間のバズズ全体に指揮を出していた一匹だ。森の中に光る目は爛々としており、その目には敵側における正義を感じた。それが却って悪魔のようだと、リュカはプックルにその方向へ向かうよう剣先を森の中へと向ける。
プックルが駆け出すや否や、森の中で戦況を見ていた一匹のバズズの身体が輝き始めた。新たな攻撃かとリュカとプックルはその場に止まり、様子を見るが、敵に攻撃呪文を放った様子は見られない。リュカは敵の放つその空気を、どこか身近なものに感じた。向かってくる呪文の威力はない。ただ敵の悪魔猿の身体が森の中で煌々と光を放っているのだ。その光は悪魔の力と言うよりも寧ろ、聖なる魔力と言った雰囲気さえ漂わせている。
草原に倒れていたバズズらが嘘のようにその場に起き上がり始めた。中には絶命していた敵もいたはずだ。それが次々と命を蘇らせ、この世界に戻ってきてしまった。メガザルという自己犠牲の下で仲間たちをこの世に蘇らせる呪文だと言うことを、リュカは当然のように知っている。
リュカがプックルに乗ったまま森の中へと突っ込む必要はなかった。メガザルの呪文を放った指揮者となるその一匹は既に息絶え、その姿ごと消えてしまっていた。彼らの後ろでは再びの戦いが始まっていた。こちらは体力も魔力も大いに削られた状況。一方で敵側は、指揮者である仲間の尊い犠牲の下に、全勢力を復活させてしまった。こうなればもう、勝ち目はない。
ティミーが慌ててスクルトの呪文を唱えて、皆を守ろうとする。しかし敵は呪文の使い手だ。マヒャドの嵐が再び仲間を窮地に追いやる。すぐにでも死に至らしめるほどの猛吹雪の威力を少しでも防ごうと、ゴレムスが皆をまとめて中に包み込む。そして瞬時に、ゴレムスの巨大な身体は凍り付き、動かなくなってしまった。皆は凍りついてしまったゴレムスの作る洞穴の中から、精一杯の反撃を試みる。
取り囲まれ、ゴレムスの作る洞穴の中に敵が一斉に猛吹雪を放てば、それで家族は、仲間たちは尽きてしまう。敵にはリュカとプックルが突進していく姿が目に見えているはずだが、敵の群れは互いの力を合わせて、好機を逃さんと言うように、マヒャドを一斉に放つタイミングを見計らっている。
仲間たちも決して諦めてはいない。凍りつくゴレムスの身体の隙間から火炎が飛び出し、少しでも敵を遠ざけようとする。しかしその威力も徐々に弱まって来た。これほど激しく呪文を放ち続けていれば、未だ魔力が底を尽かなくとも、息切れを起こしてしまうのは当然だ。
その時、敵の中に異変が起こったのをリュカは見た。両手を前に突き出し、呪文の構えを取っている一匹のバズズががくっと、宙から落ちそうになったのだ。次にはその隣に飛ぶバズズもまた、同じような現象を起こし、まじまじと己の両手を見つめている。そうかと思えばその二匹は呪文の構えを完全に解いて、ゴレムスの身体の中に籠る敵目がけて飛び込んでいく。
その二匹を迎え撃ったのは、ゴレムスの身体の守りから抜け出してきたピエールだ。ドラゴンキラーを振りかざし、器用にゴレムスの凍りついた身体の上を跳ねて敵に斬りかかる。と同時に、左手に構える盾を、今も呪文の構えを解かない敵に向かって突き出した。
仲間の冷静な戦いに、リュカも追随した。呪文を唱える敵の力を削ぐために、リュカはプックルに乗って駆けながら、マホトラの呪文で敵の魔力を吸い取って行く。敵の魔力を根こそぎ取ってしまえば、究極の蘇生呪文メガザルさえも唱えることはできないと、リュカはプックルの背に乗りながら己の身体にも呪文を施した。
マホキテの呪文がリュカの身体を包み込む。プックルが地に降りている敵の群れに突っ込んでいく最中、リュカは戦友の背から飛び降りた。注意を引き付けるための呪文を唱える。真空呪文バギマで十分だと、敵の群れに真空の嵐を向けた。
敵の群れの視線が一斉にリュカへと向けられる。リュカの身体はゴレムスの守りの中に在るわけでもなく、装備も軽く、まるで無防備のように見える。一人の弱き人間が偉そうに突っ立ているとせせら笑うように、バズズは一丸となってリュカへと呪文の構えを取る。リュカは敵の放とうとする呪文の威力に持ちこたえられるよう、その場に留まり、ただ己の精神を高めた。
既にマヒャドを唱えることのできないほどに魔力を消耗している敵もいる。しかしそれでもヒャダルコを唱え、凡そ十体の敵の群れが巨大な吹雪の渦を巻き起こす。リュカは濃紫色のマントを前面に張り、集中して防御態勢を取る。吹雪がリュカの身体を飲み込む。同時に彼の身体に敵が放出した魔力が流れ込んでくる。敵もリュカが集団の指揮者であることに気付いたようだった。それ故にこの人間の男を一人仕留めてしまえばと、古代から生きる根っからの悪魔猿の顔に嬉々とした表情を浮かべながら、激しい吹雪を浴びせかける。
背面ががら空きになったところを、プックルが突っ込んでいく。ピエールは吸い取った敵の魔力を利用し、連続してイオラの呪文を唱える。宙から多くの敵にベギラゴンの呪文を浴びせるのはアンクルだ。ゴレムスの作る洞穴に閉じ込められていたアンクルも今は、戦線に完全に復帰した。
見れば、ゴレムスの身体が元の通り動いている。リュカが敵を惹きつける間を逃さず、ティミーがゴレムスの命を呼び戻していた。好機はこちらにあるのだと言うように、ゴレムスが近くにいるバズズを一匹捕まえたかと思うと、そのまま振り回し、森の彼方へと投げ飛ばしてしまった。今は人間の仲間たちを守っている時ではないとゴレムス自身が戦う。そしてビアンカ、ティミー、ポピーはゴレムスの足元から呪文を放つ。
リュカのマントが完全に凍りつき、しかし仲間の援護もあり、リュカは敵の放つ猛吹雪にどうにか耐えた。そして自身に漲る魔力を解き放つように、仲間たちが放つ攻撃呪文の威力を高めるべく、バギクロスの呪文を唱えた。
火炎は巨大な渦を起こし、敵の群れを飲み込んでいく。爆発で損傷を負った直後に真空の竜巻が追い打ちをかけ、敵の群れは呪文の嵐から逃げることができない。ただただ混乱の中に悲鳴を上げ、この苦しみから逃れるようにと願うだけだ。
リュカは両手を下ろした。バギクロスの呪文が止む。まだ彼の魔力は尽きていない。敵の魔力を吸い取り己のものにしてしまったリュカにはまだ余力がある。敵はまだ生きている。ゴレムスが遠くの森の中へ吹き飛ばしてしまった三体を除き、満身創痍ながらもまだ一匹たりとも命を落としてはいない。
リュカが呪文を止めるのに合わせ、仲間たちも一斉に攻撃の手を止めた。この地にだけ起こっていた嵐が唐突に止み、一気に耳鳴りのするほどの静けさが辺りに満ちる。離れたところにいる仲間たちの激しい息遣いさえ聞こえるような状況だ。
「もうお前たちも戦えないだろう」
リュカの言う通り、既に魔力の尽きたバズズは多くいた。リュカに浴びせるマヒャドで魔力を使い果たした者、ゴレムスの囲いの中に向かってマヒャドやヒャダルコの呪文を放っていた者、リュカやピエールに魔力を吸い取られた者。魔力が尽きた敵に残されている攻撃手段は、直接的な攻撃のみだ。
「森に戻るなら、追わない。逃げるなら逃げろ」
リュカが話しているのは人間の言葉だが、今のこの状況で、古代から生きるバズズには一人の人間が何を話しているのかが理解できていた。魔物の誇りにかけて戦いを止めるわけには行かないという思いもある。しかし今の状況で戦いを挑めば、確実に根絶やしにされると考える冷静な頭も持っていた。
「戦わなくていいなら、それが一番いいんだよ」
この言葉だけは、敵に通じなかった。暗黒世界に生きる魔物として、古代から生き続ける伝説の魔物の子孫として、戦わなくて良いという考えには思いが至らないのも当然なのかも知れない。
ぎゃあぎゃあと、リュカたちには分からない言葉を残して、バズズの群れは森の中へと引き返していく。その言葉の意味が何であれ、リュカたちはもう敵の群れを追いかけ仕留めるなどと言うことはしない。復讐してやると言い残して去って行ったとしても、リュカたちはもう敵の手の内を知っている。戦い方を練ることができる。
黒い森の中へ、バズズの群れは姿を消した。敵である魔物もしばらく休息を取らなくては体力も魔力も回復しないのは人間と同じだ。その群れの消えた森の景色を見つめていたリュカは、しばらくの間はその場に立ち完全にバズズの群れが残す魔物の気配が消え去るのを待った。それを見送るリュカの凍り付いたマントがみるみる溶けて行くのを感じると、ようやく大きく息を吐いて身体の緊張を解いた。
「がうっ!」
プックルが突然一声吠えた。彼に続いて後ろを振り向けば、大きな影が迫っていた。目指す方向は光源の見える先だが、その光源を背に立つ大きな姿は、紛れもなくあの巨大黄金竜だった。先ほどまでのリュカたちの戦いに気付かないわけはない。そこに危険があると、グレイトドラゴンがのっしのっしと様子を見に来たに違いない。
「リュカ! どうするの?」
「……お父さん、あれって、もしかして……」
「一体じゃないわ! 後ろにあと……三体いる!」
グレイトドラゴンの影が合計で四体。その内の一体が先鋒として迫ってきている。戦っていたバズズの群れに気を取られ、これほど近くにドラゴンが迫るまで気づかなかったのだ。
「ふっざけんなよ! オレ、魔力が切れかけてるんだけど!」
「身を隠すとなれば森……ですが、今行けば先ほどの敵と再び戦うことに……」
「がうがうっ!」
「……そうだよなぁ。とにかくやってみるしかない」
最も乗りたくはないプックルの案に嫌々賛成し、リュカは今一度気を入れ直す。敵となるグレイトドラゴンは既にこの暗黒世界に紛れ込んできた人間を見据えているようで、まるで狼煙をあげるが如く、口から炎を吐き散らしてきた。明るいその火の明かりにも、今は半ば絶望しか感じない。リュカは右手に父の剣、左手にドラゴンの杖を握りしめ、顔をしかめつつグレイトドラゴンの姿を落ち着いて見つめた。

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  1. ケアル より:

    bibi様。

    やっとビアンカ覚醒しましたね、魔界でまだベギラゴン覚えていないとさすがにきついですもんね。
    でもベギラゴン覚える描写が熱い!炎だけに。母強しですな!

    ゲームでは、bibi様もそうだと思いますが、魔界に到達したじてんでティミー・ポピー、上位呪文覚えているかと思います。
    ビアンカはまだ成長段階だからベギラゴンやメラゾーマはまだかもですが、ギガデインとミナデイン、イオナズン覚えていますよね?
    執筆事情もあるかとは思いますが、とくにポピーのイオナズン有るか無いかで描写が変わってきそうですね。

    メガザル来ましたかぁ。
    30匹いるバズズのHPと死からの復活は絶望であります。 しかしピンチ脱出方法がマホトラとマホキテ描写ドキドキしましたよ。
    リュカのメガザルの描写どうなるんだろう…涙うるうるなことになりそう…。
    次回は、来ましたグレイトドラゴン戦!
    bibi様ずるいからアニメみたいにすんごぉく気になる所で辞めちゃうんですもんブーイングです(ブーブー)
    次話早めに希望しま~す!
    お待ちしてますね。

    • bibi より:

      ケアル 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      ここでビアンカにベギラゴンを覚えてもらいました。・・・私の場合、覚えるというよりも、気合いでどうにかしてるのが殆どですよね(汗) そんなんでいいのかしらと思いつつも、呪文に関しての難しい表現などを取り入れると、話に勢いがなくなりそうなのでこんな感じの仕上がりとなっております。ま、ただ表現能力に乏しいだけなんですけどね。

      ゲームだと、そうですね、子供たちは既に上位呪文を・・・いや、私の場合、怪しいです。覚えてたかな。ちょっと後程確認してみたいと思います。覚えていない可能性もあり・・・。お話の中ではまだ子供たちはその辺りの呪文を使えないので、これからどこで使えるようになるか、お楽しみにっ!(笑)

      バズズはDQ2では中ボスなんですよね。それがDQ5では一般化・・・とは言え、魔界での敵なので強いです。もしかしたらDQ2でも、地上のあの世界では中ボスになっていたけど、DQ2の世界にも魔界と言う場所があったなら、同じようにうじゃうじゃいたりして。破壊神はどこぞから呼ばれて出てきたんですもんねぇ。その呼ばれる前にいた世界が魔界のような場所だったりして。

      次回はグレイトドラゴンとの戦闘、もうね、町に着くまでどんだけ戦うのってくらい戦うかも知れません。でもあまり長引かないように、頃合い見て町に到着できればと思います。

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