えっ。これは自己責任でヤバイ。
時刻は出勤時刻デッドラインを2分ほど過ぎている。なんでこんな時間になったんだろう。今日はりんちゃんのせいにできることは何もない。
ドタバタと準備をして、私は振り返る。
あっけにとられたような愛猫に「じゃ」と告げる。
行ってきます。
私は走る。
カラフルなランドセルを背に歩く小学生をすり抜け、
素敵なコーディネートに身を包んだOLさんを追い抜き、
容赦なく向かって来る自転車をかわし、地下鉄の駅へ。
もう、マスクをつまんで外気を入れないと息苦しくなるくらいゼイゼイしている。
地下鉄の中でもマスクをつまんだまま。
2駅くらいは隣でスマホを見ているお姉さんからチラチラ視線を向けられながら息を整えた。
地下鉄を降りてからもダッシュ。
普段長い信号待ちをするところも、えーい、非常事態だ、突破する。走る、走る。
背中のリュックが激しく揺れる。
お弁当は大丈夫だろうか。きっと乱れていることだろう。
職場に到着。
おお、9時5分前。良かった~。
席に着く。PCの電源を入れる。
何事もなかったようにまた1日が始まる…。冷水がおいしい!
と、何気に手で額に触れたら、あなた、汗ぐっしょりじゃありませんか。
給湯室へ行ってハンドペーパーでおでこを押さえた。まるで真夏の朝。
すると、背中のあたりにも違和感が。秋冬用あったかインナーがぐっしょり濡れている様子。このままじゃ風邪をひいてしまう。
更衣室へ行き、インナーを脱いだ。どうしよう。
そうだ、制服更新の時に提出し忘れた旧制服のブラウスがあった。それを代用する。
着替えた後はぐったり。一気に疲れが出た。
11月も末になって汗だく通勤しているなんて。
私は初冬の夏女、ソニアか。
夜。そんなことを、まったく聞く気のない愛猫に報告し続けた。