Spring ten years later | 偽・乱筆記~himagine~

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当たり障りのない日常の日記や雑記の類です

昨年末に会社で部署が変わった。
私は今の会社の企業風土に全く馴染めず、
出世街道のレールからはすっかり外れてしまい
大した昇給も見込めないため、
6、7年も前から転職を考えていた。
環境が変われば上手くいくのかと言えば、
それも自信が無いのだが、
それでも環境によっては
自分をもっと活かせる可能性があるのではないかと
試してみたい衝動がずっと頭の片隅にあったのだ。
しかし昨今のコロナ禍で転職市場も冷え込み
完全に機を逸してしまったので、
不遇ではあれ、もうしばらくはしがみついていくしかない、
と腹を括った矢先のことだった。
何もかもが上手くいってない。
慣れない仕事で、且つ慣れてる諸先輩方でも忙しいような環境で、
冬の間は夜遅くまでひたすら仕事漬けの日々だった。
その上さらに緊急事態宣言でジムの閉店時間が早くて通えなかった分、
やろうと思って買っておいた縄跳びも
寒さで外出するのが面倒になり結局ろくにやらず、
ただ仕事で忙しいばかりでいまいち充実感のないまま、
2021年の春を迎えている。

2021年と言えば、あの東日本大震災からちょうど10年後だ。

子供の頃から大正時代に起きた
関東大震災のことを散々教わってきたが、
昔から見せられる資料は白黒で画質の荒い写真ばかりで、
伝説とか神話を聞かされてるような感覚でしか受け止めていなかった。
阪神大震災の時は貧困なフリーターで、
今以上に貧乏暇無しな生活をしていたので
報道を見る暇もなく、震災というモノをいまいち体感できなかった。
そして訪れた2011年3月11日。

私は会社に居たが、縦に突き上げてくる揺れを初めて体験し、
その奇妙な揺れは“やばい”と思わせる嫌な感じがした。
それから縦横関係なくぐらんぐらんと
振り回すような激しく揺れるようになり、
私は“関東大震災が来たんだ”と思った。
とりあえずネットで状況を確認しつつ、
サンダルから靴に履き替えて、荷物をまとめ始めた。
逃げる準備をするためだ。
そのオフィスビルでは「ビルの中は安全です!外に出ないでください」
と繰り返し館内アナウンスが聞こえていたが、
“こんな揺れを経験するのはどうせ初めてなんだろ!
安全かどうか分かる人なんか居ない筈だ!”と思い、
あまり信用はしていなかったのだ。
その時私は震源地にかなり近いところに居るのだろうと思っていたのだが、
ネットの速報では東北の太平洋沖が震源地で、
東北の方が強振だと分かったのは意外だった。
実際に東北の震度は6、7で、東京は5強で、
それでも体験したことないレベルだった。
誰も体験してない事態で会社も早い時間で帰れそうな人には帰宅支持が出て、
会社の最寄りの地下鉄はその時点で全線運休していたので、
私はとりあえず当時住んでいた横浜に帰るべく
JRの駅を目指して歩くことにした。
その時点ではどの電車も運転を見合わせていたが、
歩いてる間にも運転再開するであろうという目論見もあった。
当時はスマホも持っていなかったので、
会社で印刷したグーグルマップだけが頼りだった。
初めての道程であっさりと道に迷ったが、
その近所の人らしいおばさんや派出所のお巡りさんに助けられながら、
なんとか目的の駅まで辿り着いた。
その頃は夕方の5時くらいだったと思う。

地下鉄は倒壊の恐れもあるだろうから運休なのは解かる。
だが日本の鉄道は世界一タフで、
それまでも私の知る限りでは
台風や地震で一時的に運休することはあっても
少しすれば復旧していたので、
地上を走る電車ならば少し待てば復旧するだろうと思っていた。
それから少しして駅のアナウンスが聞こえてきた。
「本日はJR全線を終日運休することになりました。本日電車は走りません」
マジか!?私の拙い経験則を超えた事態になり、
改めてこれからどうするか再検討する羽目になった。
それで考えたのが“JRが駄目でも京急なら再開するんじゃないか”という予測だ。
以前に台風でJRが運転見合わせをしていた時に振替で乗ったことがあるので、
その可能性に期待して、京急の始発駅品川まで歩くことにした。
道中はFMラジオ付きのウォークマンでJ-WAVEを聴きながら歩いた。
ラジオも特番で当時ナビゲーターだったショーンKが都内の状況を伝えていた。
歩いている間も10分置きくらいにわりと大きな揺れがあり、
少しでも状況を把握したかったのだ。
その道中で見かけたコンビニは何処も大混雑していたが、
1ヶ所だけ比較的に入りやすそうな店があったのでそこに立ち寄った。
念のため乾き物のお菓子や飲み物を買っておこうと思ったのだ。
“念のため”と思ったくらいだから
その時点で終日運休の可能性も少なからず考慮していた。
だから野宿になってもお腹をくださないように
食べ物は乾き物にしようと思ったのだ。
その店では飲食物は殆ど売り切れていたが、
辛うじて普段買わないような“あられ”とお茶を買うことができた。
それから少しして目的地、品川に到着した。

早速京急の改札を探して向かうと、
改札にはチェーンがかけられて中には入れなかった。
駅員の姿を見かけて声をかけると、
まさかの「終日運休」の返事だった。
馴染みのない場所で立ち往生する羽目になり、
ここからどうすべきか、またしても私は判断を迫られた。
私は頭の中で普段電車から眺めている車窓の風景を思い浮かべた。
そしてその道のりを自分が歩くのを想像した。
私は街歩きや山歩きが好きで経験上平地なら30km、山道でも20kmは歩けた。
そしてそれが限界だと思っていたので
ギリギリイケるんじゃないかと想定した。
勿論決して楽ではないとは思ったが、躊躇してても野宿しかない。
そう思いさっさと覚悟を決めると歩き始めた。






【蛇足】
なんかもう気力体力が無い。汚部屋化している。