都政新報から(左をクリックして下さい。)

 

 前回に引き続き、今日も、連載コラムで、足立区シティプロモーション課舟橋左斗子さんのコラムをご紹介させていただきたいと思います。

 

 自治体政策のススメ

 されどチラシ③

 足立区シティプロモーション課 舟橋左斗子

 

 「全区民が対象」では届かない

 

 「ターゲットは全区民です」。足立区のシティプロモーション課では区役所内全課のチラシや広報物の相談に応じ、年間400件以上の広報物を住民に届くものに変えるお手伝いをしている。

 

 初回相談で必ず聞く質問が「このチラシで、誰にどういう行動を起こしてほしいのですか?」というものだ。その「誰に」に対し、前述の「全区民」と答える職員は少なくない。しかし、残念ながら全区民という漠然としたイメージでチラシを作ると、全区民どころか誰にも届かないチラシができあがる。一見、全住民が対象に思える事業にも、必ず狙いを定めるベきターゲットがある。

 

 長谷川

 これって基本の「き」だと思いますが、どうしても公務員のみなさんって「全体の奉仕者」の意識があるから、そうなっちゃうよなあ~とは思います。

 

 広報物を作る時、最初に考えたいのは「誰に届けたいのか」ということだ。例えば足立区の障害者週間記念事業イベントのチラシは以前、「障がい者週間記念事業」の文字がチラシのメインになっていた。

 

 改めて担当者に「このイベントは、障害者やそのご家族などに来てほしいのですか?」と聞くと「もちろん関係者もですが、障害者と関わりのない方に来ていただき理解を深めてほしい」と言う。だとすると「障がい者」の文字がセンターをはり、それ以外は文字のみのチラシでは関係者以外の目に留まらないのでは?そう話し、障害者の皆さんの作った作品の写真を見せてもらうと、何ともアイデアにあふれユニークで、普段、障害のある方と接点が多いわけではない私にもとても楽しめるものだった。それなら作品写真を掲載しようと、インパクトある虎の張子の写真をど~んと大きくセンターに置くことを提案した。

 

 ここでまた一もんちゃくあった。「出品団体は数多いので1作品だけを大きくするのはまずい」として、写真を載せるなら全団体から1作品ずつと言う。しかし何十もの小さな写真を載せ、目に留まるチラシを作るのは難しい。ここでまた聞いた。「来てもらいたいのは出品団体の皆さん?それとも普段関わりのない一般の方?」

 

 長谷川

 これもありがちな議論。っていうか、基本的にはこういう意識でクレーム回避をしようとする姿勢がありますよね。(笑)。

 

 結局、担当者は「虎ど~ん」に納得し、各方面を説得してくれた。その後も様々なユニークな作品がセンターを飾るチラシを制作、来場者数が年々増加するイベントとなっている。

 

 

 足立区では広報物にとどまらず、ターゲットをしっかり絞る事業で成果を上げているものが多い。例えば全区民を対象にしていた健康増進事業を「糖尿病予備軍」をメインターゲットに絞り込んだことで(もちろん広報物も)、区民の健康寿命が伸びたという成果を上げている。

 

 

 広報物はまず、ターゲットと目的を明確にすることから始めるのが、効果を上げる近道である。

 

 ふなはし・さとこ

 広告代理店勤務、フリーライターを経て、2010年、足立区が東京23区初のシティプロモーション課創設時、経験者公募に応募し、任期付き職員に。現在は会計年度任用職員として同課で広報改革に取り組み、21年「住民の心をつかむ自治体チラシ仰天!ビフォーアフター」(学陽書房)発刊に携わる。