とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

舞台『フランケンシュタイン』感想その1(追記あり)

2014年02月15日 01時21分44秒 | SHERLOCK/シャーロック



ネタバレなし感想をさらっと。

来週の上映もすべて終わったら、ネタバレありで書くつもりです。


ちなみに今回演劇のシネマビューイングは初体験でした。ゲキシネもMETライブも観たことない人間の、素朴な感想ですので、そのつもりで読んでやってください。



ともかく、これを言いたい。お近くの劇場で観るチャンスのある方は、ベネディクト・カンバーバッチのファンであろうとなかろうと、観るべき。強力におすすめします。


*追記1:
鑑賞はTOHOシネマズ梅田。小さめのスクリーン7。ほぼ満席(9割が女性)。
来週は大きいスクリーンになってるといいなあ。


シネマビューイング体験についてひとことで言うと、


ほんものの舞台が観たくなった!


「シネマビューイングがあるから舞台は観に行かなくていーや」と、思う方もいるでしょうし、それもアリでしょうけど、わたしは猛烈に生の舞台が観たくなりましたね。今日の上映で観たものがこれだけすばらしいんだったら、舞台は100倍すばらしいだろう・・・


この体験があれば、ロンドンへ行ったときにはナショナルシアターに足をはこんでみよう、と思っちゃいますよね。


上映スタート前、ナショナルシアターの観客のざわめきが、ちゃんとバックグラウンドで聞こえるようになってるのが、おもしろかった。臨場感ね。



ジョニー・リー・ミラーの怪物。すばらしかった。いつまでも彼を見ていたいと思うほどに。

なんというか、超天才の悪ガキみたい。イノセントで、おろおろして、でも強靭で。ワーキングクラスの怪物、と言うのもおかしいけれども、いかにも貴族的なベネディクトのフランケンシュタインと、完璧な一対をなしていた。












かたやベネディクトは、天才の貴族の青年という、あまりにもハマリ役といえばそうなのだけど、だからこそ細かいところまで神経のゆきとどいた演技に、感銘をうけました。フランケンシュタインの科学者としての身勝手さ、葛藤、エリザベスへの屈折した思い。そういうものが、あからさまに表現はされないのに、手にとるようにわかる。











創造主と、被造物。主人と、奴隷。フランケンシュタインと怪物の関係性が、しだいに複雑にもつれあってゆく過程に、圧倒されました。登場人物は多く、場面もどんどん変わっていく舞台ですが、主演ふたりの対話にこそみどころがあった。


本編上映前にながれるメイキング映像では、1931年の映画『フランケンシュタイン』の場面が使われていました。ジェームズ・ホエール監督の傑作ホラーです。未見の方は、この機会にぜひ観てみてください。

イギリスの下層階級出身で、ゲイであることを公にしていたホエールは、みごとな脚色で怪物の孤独をフィルムに焼きつけました。











ダニー・ボイルと脚本家のニック・ディアーは、映画から一歩進んで、孤独が怪物だけのものではなかったんだとかんがえた。孤独は、怪物をつくりだしたフランケンシュタインも共有するものである。だからこそ、ふたりの役者が交互に演じるというやりかたが、単に客寄せのためのギミックじゃなくて、演劇的な必然性をもってるんですね。

それを実現するために、もう一度原作小説に立ち戻る必要があったのでしょう。原作にかなり忠実でありながら、モダンな解釈が提示されていることに、興奮しました。


回り舞台、壮大な照明、火や水を実際に舞台上でつかう演出など、エンタテイメントとしてもとてもおもしろかったと思います。




最後に、シネマビューイングに関して、すこしだけ気になった点を。


まず、映像のクオリティがもっと良ければ・・・ま、あたりまえっちゃーあたりまえの希望ですけど・・・もっと臨場感を感じられたのになと。


そして、これは次回の演目以降改善されていくであろうと、希望もこめてかんがえてますが、字幕が非常に見づらかったです。文字のサイズが小さいのに加え、白いステージのうえに白い文字がのっかると、まったく読めませんでした。


和訳は、もしかしたら短期間の突貫工事だったのかもしれませんが、意図のわからない意訳が多かったかなという気はしました。たとえば heart beat を「動脈」と訳してたり。芝居の文脈的にも「動脈」とする必然性はなかったと思うので、なぜこの訳語をわざわざあてたのかがわからなかった。訳し足りないかなと思うところも散見しました。



*追記2:
観た方のツイートをいろいろ見てると、劇場によっては客足が悪かったところもあったらしい。と、なると、先行抽選が果して妥当だったのか、という疑問はやはりわいてきてしまいます。手数料をあれこれ払っても座席指定ができなかった先行抽選組。かたや劇場で直接チケットを買って、手数料なしで座席も選べたお客さん。不公平感が出てしまったのは、否定できない。もちろん、満席になった劇場では、先行抽選で席を確保できたというメリットはあったのですが。



しかし、何をおいても大事なのは、この舞台を日本で観ることができた!という信じがたい喜びです。ファン友さんと「署名活動でもすっか!?」とまで話していた、待望の舞台でしたから・・・終わった時、思いきり拍手したかったわ。拍手が起きた劇場、ありましたか?


シネマビューイングを実現してくれた東宝さんならびに関係者のみなさんの尽力に、心からお礼を言います。そして、それを後押ししたのは、まぎれもなく日本のカンバーコレクティブ/ビッチーズ/ベイブなのだ!われらがファンダムの同志諸君にも、感謝をささげます。




来週の別バージョンを観るのが、待ちきれません!










*追記3:
ナショナルシアターのパンフレット(PDFファイル・英文)をこちらでダウンロードできます。








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18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私も全く同感U+2757U+FE0F (カンバーナニー)
2014-02-15 10:26:56
こんにちは。ブログを拝見してから足掛け二年。いつも楽しく合いの手を入れながら拝見しています。
私も、NTLiveをみやいと思ったもですが、全国のTOHOでは19:00スタートしかなく、夜のお出掛けが出来ない身の上の者にとっては、本当に悔しい思いでした、でも、でも、追加公演決定のニュースがTwitterにU+2757U+FE0F
それもそれも午後の上演でした。昨日の大雪ににもめげず一目散にTOHOへU+1F603客席は天気のせいもあってか2,3割の入りでした。
感想は、全く同感でしたU+2757U+FE0F
ミラーのフランケンは切なかったなぁ。来週もベネさんフランケンを見る予定ですが、あの感じは出ないのではと不安。
最後の場面では、泣きそうでした。スタンディングオベーションしたかったけど、日本人の性が押し止めました。
字幕に関しては、あれではない方が良かった。(英語難民の私ですら、違うだろう!と何度も叫んだ、こころの中で)
これからは、War Horseなどどんどん上映して欲しい。出来るなら秋のハムレットを現場で見たい。


カンバーナニーさん (ファイアー)
2014-02-15 17:00:44
コメントありがとうございます。
いつもブログを読んでいただいて、感謝です!

雪の中、たいへんでしたね。昼間の追加上映があって、ほんとうによかったです。
ネタバレをおそれすぎてあまり書けませんでしたが、わたしも何度も目頭が熱くなりました。
ジョニー・リー・ミラーがあれほどすばらしかったことが、うれしい驚きでしたね。
(って、JLMファンに怒られそうですが(笑))
ベネディクト版がどう違うのか、本当に楽しみです。
またご感想を教えて下さいね。
感動しました! (yas)
2014-02-16 12:43:03
いつもブログを楽しく拝見させて頂いております。

私はチケットの先行発売があることも知らず、午前の回を直接購入しました。
ご指摘の通り席は埋まっておらず、ベストポジションで観ることが叶いました。
場所はちなみに六本木です。
私もこのような舞台をスクリーンで観ることは初めてだったのですが、
ナショナル・シアターの円形舞台、美術のクオリティーが素晴らしく本当に感動しました。
私は思わず拍手してしまいました。小さく他にも聞こえました。
来週も本当に楽しみですね!他の舞台は勿論、実際に足を運びたくなりました。
yasさん (ファイアー)
2014-02-17 10:03:11
コメントありがとうございます!
いつも読んでくださって、ありがとうございます。

六本木は夜はほとんど満席のようでしたが、昼は空いてたみたいですね。
おお、yasさん拍手なさったんですね。すばらしい!
少人数の方ができたのかもしれないですね。
ニューヨークの上映ではスタンディングオーベーションが起きたりするらしいです!
日本でもやりたいですよね~

>他の舞台は勿論、実際に足を運びたくなりました

ほんと、今回の上映が演劇ファンも一挙に増やしそうですよね。
ジョニーの演技とか、舞台の美術とかをちゃんと評価するカンバーコレクティブのみなさんは
ステキだなあと感じました^^
また感想をお寄せ下さいね!
来週末も楽しみです (YM)
2014-02-17 18:48:32
はじめまして。いつもこっそり楽しく拝見させて頂いています。
私は九州(しかも鹿児島です)在住ですが、九州では福岡の天神TOHOシネマズだけの上映だったので、これは九州全土のベネディクトファンのチケット争奪戦になるのでは!?と異様に緊張&頑張ってチケットを入手したにもかかわらず、当日(夜の部です)行って見れば前から5列までは不自然にほとんど空いていました。
私は先行予約だったのに一番左の端っこで、どう見ても当日券を購入した方数人が前から5列目のど真ん中に上映寸前に駆け込んでこられました・・・
ま、そんな不公平感もファイヤーさんのご指摘どおり、多少ありはしましたが、内容は言葉が出ないほど素晴らしかったです!何といっても迫力がすごかった。客席近くまで迫ってくる舞台装置、炎や点滅するライト。中でも特にドキドキしたのがミラーの声です。モンスターとしての彼の声、話し方は圧倒的でした。映像であの迫力ですから生で聞くとどれほどのものだろうかと想像します。
ベネディクトのフランケンシュタインは、予想したとおり繊細な若き天才でした。この頃のベネディクトは痩せこけててかえって若々しいですね。コスチュームを見てう~んやっぱりロングコート似合うなあとかブーツ履いたひざから下が長いわ、とかついつい思ってしまいました。
来週はベネディクトがモンスターをどう演じてくれるのかとても楽しみです。
隣に座ってたお嬢さん方も、エレベータで一緒になった女性数人も来週の話をされてたので、きっと私と同様に九州のベネディクトファンは来週末も再集結だろうと思います。
YMさま (kuwachann-2_0)
2014-02-18 02:31:20
鹿児島在住のベネディクトファンというお言葉に反応です。現在米国のマサチューセッツ州に在住ですが3/7から3/9まで鹿児島に行きます(里帰をかねて)。

鹿児島のファンというのが何となく嬉しいです。もし良かったら私のブログからお返事いただけますか。コーヒーでも如何でしょう?

ファイアーさん、横やりでごめんなさい。
YMさん (ファイアー)
2014-02-18 20:27:40
コメントありがとうございます!
九州は福岡だけでしたか。うーむ。
中四国なんて一軒もやってませんしね・・・
鹿児島からわざわざ、おつかれさまです!!
なかなか遠くから遠征しづらくて客足が遠のく、っていう悪循環かも?

>中でも特にドキドキしたのがミラーの声

わかります!
あのダミ声というか、いい意味で荒っぽい声がクリーチャーにぴったりでしたよね。
ベネディクトの声は美しすぎて、どーなるの!?
それもまた楽しみですね!
ベネネのロングコート、やっぱり似合いますよね・・・袖ふわふわのブラウスも・・・
今週はもっとにぎわうといいですね。
またどんな感じだったか教えて下さいませ^^
kuwachann-2_0さん (ファイアー)
2014-02-18 20:29:08
kuwachannさん、九州の女だったのですね^^
わたしも会いたかった~~
関西に来られる用事はない・・・ですよね。
里帰り、ゆっくり楽しんでくださいませ!
関西 (kuwachann-2_0)
2014-02-19 00:17:34
ファイアーさん、
今回も京都に3日間行くのですが、息子夫婦を連れて行くのでスケジュールがびっしりです。次の機会に是否!
ベネちゃんのクリーチャー (カンバーナニー)
2014-02-21 21:45:57
今日、見てきました、ネタばれ(すでにミラーバージョンで暴露てますが)しない程度の感想です。
Sherlockですっかり慣らされたのか、クリーチャーのセリフは聞き取りやすかったです。
声も、まだ枯れていなかったし。途中で、ベネちゃんが演じていることすら忘れて、のめり込んでいたほど。
博士にいろいろ懇願するシーンや彼の漠然とした不安感がよーく伝わってきて、胸がキューンと。また泣けました。
隣の女性もハンカチを使ってましたU+2757U+FE0F

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