奈良 【奈良市】

ピアノ・声楽・ソルフェージュ

Ei Musica音楽教室

西浦まゆ美です。

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すっかり春と言うより初夏というべき気候ですね。
週末は何とも不思議な芝居、ビターなミュージカルを観て来ました。
「Next to Normal」ブロードウェイミュージカルでトニー賞3部門を受賞し
その翌年にはピュリッツァー賞も受賞された作品です。

 

 

 
今回の劇場は兵庫県立芸術文化センター中ホール
素敵なホールです。
オペラの大劇場も素敵なのですが、演劇などに使われる中ホールが素敵なんです。
個人的にはこちらの方が好きかもしれません。

 

 

 
入り口には苦悩するベートーヴェン先生が。
そう言えば望海風斗さんの退団公演はベートーヴェン先生だったなぁ。
…と懐かしい気持ちになります。
このような音楽ホールならではの彫刻やモニュメントを見るのも楽しみですよね。
ホールへの思いが出ているように感じます。

 

 

 
そして中ホールは木の質感が素敵なホールです。
阪急西宮北口駅からの導線も楽しいですね。

 

 

この日はチームNの千穐楽公演でした。
初演からのチームAも観たかったのですが日程の都合で無理でしたので
望海風斗さんのダイアナを主軸とするチームNの公演を観て来ました。

 

 

 
「Next to Normal」はヒロインのダイアナは一家の主婦ですが双極性障害です。
双極性障害は気分が高まったり落ち込んだり、躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気です。
 激しい躁状態とうつ状態のある双極I型と、
軽い躁的な状態(軽躁状態)とうつ状態のある双極Ⅱ型があります。
 躁状態では、気分が高ぶって誰かれかまわず話しかけたり、
まったく眠らずに動き回ったりと、活動的になります。

その障害が起こった原因が登場人物の中にあるのですが…と言うのはネタバレ。
一家の太陽であるダイアナが双極性障害である事で
家族にはどんどん歪が生じて来る様子はとてもリアルでした。
この心理状態を歌の中で声の色や僅かな歪を作る事で表現するのは
本当に至難の業だと思います。
スコアを見ていないので何とも言えませんが、オケの音との合わせ方など
技術的にも本当に難しい作品だと思います。
それを今までと発声法も全部変えて来る事によって望海風斗さんは表現されていました。
音に感情を乗せる技術だけでも凄い事だと思うのですが
1年前まで男役を演じて男役の発声でやって来られた方ですから…
並大抵の努力でできる事ではないと感心しかありません。

夫のダンの渡辺さんはイントゥ・ザ・ウッズの時の王子と違って妻を献身的に支える夫
その献身こそが家族を追い詰めて自身も追い詰められて行く様がリアルでした。
良い声で本質はとても善良である事がそれだけでわかる。
それだけにその善意が妻も家族も追い詰めて行くのが辛かった。
長男のゲイブの甲斐さんはとても若々しく魅力的で動き方も体重を感じさせない。
まるでこの世のものではないような動きなどが物語の核心だったと後でわかりました。
まだ若くて声もこれからもっと良くなって行くのだろうから、再演が楽しみです。
こんな息子…ダイアナにはきっと自慢だったのだろうな。
長女のナタリーの屋比久さんは沖縄の方なのですね。
強い喉と声で鬱屈した精神状態が良く出ていたと思いました。
けれどとても小さな身体でその細さや頼りなさが声と裏腹で
母娘の物語でまだまだ母を頼りたい娘の切なさが出ていました。
次はもっと伸びやかに歌う役で見てみたいです。
ナタリーの彼氏のヘンリーの大久保さんはナタリーの強く硬い声と違って
どこか抜けたような温かみのある声でホッとする存在でした。
精神科医の藤田さんは掴みどころのない感じの声でした。
ダイアナをどうしたいのだろう?本心の見えない歌でしたが
他の登場人物たちの写し鏡なのかもしれません。

ミュージカルは愛や夢だけではなく、とてもリアルな現実も描きます。
そこにある現実、そこにある普通の生活を写し取って行く
オペラが終えてしまった役目を引き継いでいるのですね。
今回の作品はとても胸に刺さるものでした。
1度しか観れなかったのが本当に残念でした。
普通の生活って何だろう?その普通の向こうに行く事は?
自然に全登場人物に感情移入させられてしまって、胸が苦しかったです。
それでも音楽はとても美しい。
観る人によって感想がかなり分かれてしまう作品だと思いますが
もう一度、今のキャストで再演が観たいと思いました。
って言うか、こういうの歌いたいなぁ…
 

 

 

BW版とは日本初演から再演で随分演出が変わったようですが
本当に面白い、考えさせられる作品だと思います。
観劇された方の考察を読むのもとても面白いです。

 

 

芸文と言えばこの夏はコロナ禍で一旦中止になったオペラ「ラ・ボエーム」が
再び同じスタッフで上演される事が決まったようで楽しみです。
ボエームは様々な人に観て頂きたい作品ですね。
青春の全てがそこにあるので。
今まさに青春の人も、遠い歴史になった青春の思い出も。

青春は常に美しくほろ苦いものである、それがプッチーニの甘く切ない響きです。

そして私はそろそろエンジンを掛けて自分の歌をもう一度磨こうと思います。
その磨いたものは必ず、生徒の皆さんにフィードバックしますからね。
新しい事、そろそろやりたいかなぁ。
さて、頑張ろう。

 

最後までお読み下さいましてありがとうございました。

明日からもがんばってブログを更新するモチベーションが上がりました。 


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