大垣祭り・中町 布袋軕 天井画(天井絵)制作〈その6〉、転写から本画・骨描きへ | 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

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後藤仁ブログ2~絵師(日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙)後藤仁の日本画・絵本・展覧会便り。東京藝大日本画卒,後藤純男門下。「アジア/日本の美人画」をテーマに描く。東京藝大,東京造形大講師。金唐革紙製作技術保持。日本美術家連盟,絵本学会,日中文化交流協会会員。

「大垣祭り〔ユネスコ無形文化遺産・国重要無形民俗文化財〕・中町 布袋軕(ほていやま)」(岐阜県大垣市) 
 天井画(天井絵)制作


 絵師(日本画家・絵本画家) 後藤 仁、GOTO JIN

  (※フェイスブック Facebook に記述した内容から、今回、杉板への転写から本画・骨描きの途中までの工程を、まとめています。)

                 

2021年9月1日(水)。本日、大垣祭り「天井画」”大下図(鉛筆による原寸大の下図)” を、”念紙(ねんし/日本画の転写用の和紙)”で杉板に転写しました。
 私は自家製の”念紙”を数色、用途(下地の色等)に応じて使い分けます。今回は最初、普段最もよく使う「赤口代赭色(あかくち・たいしゃいろ)」の念紙でやろうとしましたが、板ではほとんど写らないので、かなり濃い色の「松煙粉(しょうえんふん/松を燃やしてできる煤粉)」の念紙で転写しました。板には筋目があるので、転写するのは、なかなか難しいのですが、上手く出来ました~。 !(^^)!
 この次は、明日以降、最も大切な工程の一つ、”骨描き(こつがき/墨による最初の線描き)”に入ります。
 いよいよ、楽しみですね~、乞うご期待~❣❣



大下図と杉板。転写開始~☆

私の自家製・念紙。現在、「木炭」、「赤口代赭色」(新旧2枚)、「胡粉」(大小2枚)、「松煙粉」があります。
 前は、「黄土色」もあったのですが、カビが生えていたので処分。「弁柄色」の念紙も作った事がありますが、弁柄は粒子が細か過ぎて、あちこちに散るので、念紙には向かない事が分かりました。


杉板に大下図を合わせる。

こんな感じで、転写します。

転写中の、後藤 仁。私はたいてい、赤色のボールペンで転写します。

「赤口代赭色」の念紙では写らないので、「松煙粉」の念紙を使用。

転写時は、こんな感じに重ねます。

転写中の、後藤 仁。手先に集中します。

転写中の、後藤 仁。手先に集中します。

4分の1、転写完了!

眼鏡をはずさないと、老眼で手元が見えません~。 ( ;∀;)

眼鏡をはずさないと、老眼で手元が見えません~。 ( ;∀;)

半分、転写完了!!

集中、集中~。

4分の3、転写完了!!!

転写終了!!!! 今日、使用した画材と。

杉板絵『黒龍と四つ姫の図』(後藤 仁) 転写終了❣


9月3日(金)。本日から、大垣祭り「天井画」 ”本画(杉板絵)” 制作に入りました。
 今回の作品に使用するは、大学時代から使っていて信頼度の高い栄寿堂(現在は、残念ながら廃業しています)の「瑞龍」と、同じく栄寿堂の「清風」を中心に用いようと思います。その他、龍の眼等の特に重要な箇所には、私が大学時代に中国の旅で購入した、とっておきの古墨を使おうと考えています。膠が弱いであろう、懸念はあるのですが・・・。
 これは、私が東京藝術大学4年生の1995年8月~9月に「中国写生旅行(北京・西安)」をした時に、北京の画材店街・琉璃廠(るりしょう)で購入した大変貴重な墨です。当時は中国の物価は日本の5分の1位でしたが、この墨は確か6000円位したと記憶しています。琉璃廠は基本的に信頼度の高い画材店街ですが、それでも、これは多分、吹っ掛け値ではないかと思います・・・。しかし今、この質の墨を中国で(日本でも)買おうとしたら、間違いなく、1万円を下らないのではないかと、信じています。「乾隆年製」と記されていますが(現在、TOKYO MXテレビで放送されている、中国歴史ドラマ【如懿伝(にょいでん)】で演じられている、清の皇帝・乾隆帝(けんりゅうてい)の時代の製造という意味)、これは多分、中国画材の慣習上の記載に過ぎなく(乾隆年間は芸術文化が興隆した事に由来する)、本当は清朝終了(中華民国)以降の製造だと思います。しかし、作りが極めて高精細で、結構、古いものである事は確かです。
 は、これも私が重要な作品にしか用いない一品で、やはり、同じ中国の旅にて、北京の百貨店で購入したものです。「端渓硯(たんけいけん)」(ただし、新端渓)ですが、当時で2000円位はしたと思います。今なら新端渓でも、もっとずっと高いはずです。
 墨を丁寧に十分にすりおろし、表面の油膜を取ってから、小皿に移して用います。は、「コリンスキー毛描(大)」(清晨堂)を使用しました。
 この”骨描き(こつがき/墨による最初の線描き)”は、日本画の作画の中でも、最も重要な工程の一つです。最初はなかなか手がなじまず、良い線が描けません。しばらく描き続けると、調子が出てきて、伸びやかで良い線になってきます。
 直線は、”溝引き(みぞびき/定規とガラス棒と筆で、直線を描く技法)”で描きます。これには、多少の経験を要します。
 今日は、腕慣らしとして、全体の枠線(円・直線 等)のみを、描き終えました。明日以降は、龍や姫君を描いていこうと思います。
 ますます意気軒昂にて、乞うご期待~❣❣



端渓硯、栄寿堂の墨「瑞龍」「清風」

端渓硯、栄寿堂の墨「瑞龍」「清風」

昔、中国で購入した古墨。墨の表には、双龍の文様と、「御製詠墨詩」という字が記されています。これは、台湾の国立故宮博物院に収蔵されている本物の乾隆御製詠墨詩墨を模造した墨のようです。現在、安く出回ってる粗悪模造品もあるようですが、この品は比較的、完成度の高い、高品質な模造品だと思われます、・・・と、そう信じたい~?

古墨の裏には、コウモリ(中国では幸福の象徴・縁起が良いとされる)の文様と、「養性殿蔵墨 乾隆年製」という字が記されています。実際は、清朝終了(中華民国)以降の製造だと思われます。

墨を丁寧にすりおろす。

墨汁表面の油膜をのぞき、小皿にとる。

今回使用した筆、「コリンスキー毛描(大)」(清晨堂)

骨描き開始~。慎重に、丁寧に、かつ、筆勢を活かして~!

骨描き開始~。慎重に、丁寧に、かつ、筆勢を活かして~!

直線は、溝引きにて。

直線は、溝引きにて。

曲線は、フリーハンドで。

今回使用した画材と。

全体の枠線(円・直線 等)の骨描きを、描き終えた状態。


9月15日(水)。本日は、杉板絵 の「骨描き(こつがき/墨による最初の線描き)」を進めて、「四人の姫君」「四辺の装飾」を描き終えました。
 板には筋目があるので、長時間描くと目がくらんで、描きにくいです。雑用等により、なかなかはかどりませんが、今の所、想定通りに、良い感じにできてきていると思います。この続きも、乞うご期待~ 💑



「四人の姫君」を骨描き。

「四辺の装飾」を骨描き。

「四人の姫君」を骨描き。

「四人の姫君」を骨描き。

「四辺の装飾」を骨描き。

「四辺の装飾」を骨描き。

今回使用した画材と。

「四人の姫君」と「四辺の装飾」の骨描き、終了。


9月17日(金)。本日は、
中国向け新作絵本〈第3弾〉「第3場面」の”彩色(さいしき)”を進めました。究極の美人像が、だんだんと浮かび上がってきました~。 😻
        *
 少し休憩してから、大垣祭り「天井画」杉板絵「骨描き(こつがき/墨による最初の線描き)」を進め、龍の周囲や手足にかかる、”雲海”を全て描き終えました。
 今日はあまり時間が取れずに、ここまでしかできませんでした・・・。明日以降、いよいよ龍の骨描きに入っていきたいと思います。
 今回の天井画制作は、公共的な仕事でもあり、遠い大垣の関係者への制作報告も兼ねて、かなり丁寧に画像記録を取って、一般公開しています。タイマー撮影なので、けっこう手間がかかります。最初、ビデオカメラでも撮影していたのですが、10年以上使用したビデオカメラが故障してしまい、動画撮影・再生不可に~。 ( ;∀;)
 この続きも、乞うご期待~ ❣❣



龍の周囲や手足にかかる、雲海の骨描きをします。

中央の玉を描く。

龍の周囲や手足にかかる雲海を描く。

今回使用した画材と。

龍の周囲や手足にかかる、雲海の骨描き、終了~。