大垣祭り・中町 布袋軕 天井画(天井絵)制作〈その11〉、彩色から金箔押しへ | 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

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後藤仁ブログ2~絵師(日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙)後藤仁の日本画・絵本・展覧会便り。東京藝大日本画卒,後藤純男門下。「アジア/日本の美人画」をテーマに描く。東京藝大,東京造形大講師。金唐革紙製作技術保持。日本美術家連盟,絵本学会,日中文化交流協会会員。

「大垣祭り〔ユネスコ無形文化遺産・国重要無形民俗文化財〕・中町 布袋軕(ほていやま)」(岐阜県大垣市) 
天井画(天井絵) 『黒龍と四つ姫の図』 制作

 絵師(日本画家・絵本画家) 後藤 仁、后藤 仁、JIN GOTO、고토 진


 (※フェイスブック Facebook に記述した内容から、今回、黒龍・四つ姫・周囲の文様の彩色より、純金箔押しまでの工程を、まとめています。)

             

 2022年11月15日。11月4日~15日、2週間弱かけて、「黒龍」「四つ姫」「黒龍の背景」の彩色・墨起こしを進めました。

 まず、「四つ姫」「日輪」の彩色を重ね、黒龍の背景の「紫雲」の藤紫色と「中央の玉」の黄土色を重ね塗りしました。
 次に、「黒龍」の顔部分の墨起こしをして、天然 岩黒で彩色を重ねました。
 次に、「黒龍の目」に胡粉を濃い目に塗り、その他の箇所と合わせて、特殊な反射絵の具で重色しました。周囲の「紫雲」の胡粉も重ね塗りしました。
 そして本日は、「四つ姫」の輪郭線の墨起こしを施しました。墨による極微細な線の描き起こしは、最も集中力を要し、疲れる創作過程です。しかし今日は、なかなか良い線が引けたので、全ての「四つ姫」~桜姫・藤姫・竹姫・蝶姫 を描き起こしました~🥰 
很好〰❣ 很漂亮〰〰💑

 これでようやく、全体としては、8割弱の完成度です。いよいよ完成像が見えてきましたが、この後、“金箔押し”という最高難度の大仕事が待っています。一切の気のゆるみと妥協は許されません〰〰😤😤 皆様、この後も、乞うご期待~💖😘



 「黒龍」「四つ姫」「背景」の彩色・墨起こしを進める。


 「四つ姫」~桜姫


 「四つ姫」~蝶姫


 「四つ姫」~竹姫


 「四つ姫」~藤姫


 2022年12月8日。11月16日~12月7日、3週間程かけて、ゆっくり・じっくりと、
『黒龍と四つ姫の図』を描き進めました。

 まず各所に、仕上げ用の白色絵の具:胡粉(飛切)で重色。「黒龍」の角を象牙色系の色で彩色。「四つ姫」の衣装の花や蝶の部分を岩黄で彩色。
 次に、「黒龍」の角を岩金茶で重色。「黒龍」の各所を岩黒・灰色系の岩絵の具で彩色。角・爪・背のトゲを、特殊反射絵の具で重色。「日輪・月輪」とその背景を重色。さらに、「黒龍」の各所に岩黒の彩色を丹念に重ねる・・・。
 次に、周囲の一辺の、「男の子・女の子」を墨で描き起こし、彩色を重ねる。「黒龍」を墨で描き起こす。周囲の一辺の、「鳥」2羽を彩色。

 この段階にくると、色を何度も重ね塗りして、墨で描き起こし、また重ね塗りするという工程が繰り返され、色の深みや精度を極限まで高めていきます。一見すると、あまり変化が無いようにも見えるでしょう。しかし、この繊細で地道な工程に非常な時間と労力を費やすのが、私の絵の特長かも知れません。そんな理由もあり、完成までには、とても長い時間を要するのです〰🥵
 今年中に、金箔押し工程まで、いけるといいのですが・・・。皆様、この後も、乞うご期待 ────🥰💖



 「黒龍」「四つ姫」「周囲の四辺」の彩色・墨起こしを丹念に重ねる。


 2022年12月14日。12月8日~14日、1週間の間に
『黒龍と四つ姫の図』を描き進めました。

 まず、周囲の一辺の、「男の子・女の子」の彩色・墨起こし、「黒龍の玉」の墨描きをしました。その他、要所要所を墨で描き起こし、「雲」の胡粉を少し洗いました。
 次に、仕上げ用の胡粉(飛切)を要所要所に重ね塗りし、周囲の四辺の要所要所に微細な彩色をしました。
 本日は、金箔を貼る部分の赤口本朱を重色し、「黒龍」の口や目に赤口本朱で陰影を入れました。

 これで、金箔を貼る下準備は、ほぼ整いました。来週、気合が充実しているようなら、いよいよ、金箔押しに入ろうと計画しています。乞うご期待~~
 (^.^)/~~~


 周囲の一辺の「男の子・女の子」の彩色・墨起こし、「黒龍の玉」の墨描き、等を進める。


 金箔を貼る部分の赤口本朱を重色し、「黒龍」の口や目に赤口本朱で陰影を入れる。


 2022年12月20日。前日までに、箔を押す部分に「捨てドーサ液」を塗っておきました。こうした方が、箔の貼り付きがしっかりするのです。
 本日はいよいよ、
『黒龍と四つ姫の図』に純金箔を押します(箔を貼る事を、美術用語では“押す”と言う)。この工程は職人技による一発勝負なので、集中力が相当に高まった時にしか行えません。ここの所、かなり気合が入ってきたので、今日、一気に、全ての金箔を貼り終える計画です。

 まずは、箔をあかします。箔の裏の“あかし紙”(最近では、顔の脂取り紙として人気があります)をはがし、バレンで油類をごく薄く塗って、また、箔に貼り付けるという工程を、「箔あかし」と言います。この作業には、極めて高い集中力と豊富な経験を要します。特に純金箔は超極薄なので、超微風やわずかな吐息でも、吹っ飛んでしまいます〰。箔あかし用の油は、古来は椿油・胡麻油 等の植物油が用いられましたが、近年では、ポマード等を用いる人もいます。私は、ポマードや油類はベタベタし過ぎてやりにくく、臭いが強過ぎる物が多いので、ある時、ワセリンを使ってみたら丁度良かったので、以来、ワセリンを用いています。
 箔を切る時は、古来より、皮板(鹿皮台・箔盤・箔台 等とも言う/子鹿の革を張った板、かなり高価です)と竹刀を用います。ただ、切箔・野毛や截金(きりかね)のように超微細に切る時以外は、今回のように、丸カッターと定規・カッター台で切った方がやりやすいです。箔が付かないように、道具には全て、シッカロール(ベビーパウダー)をまぶしておきます。
 箔下糊は膠でもいいのですが、ドーサ液の方が強力に貼り付くので、今回は和紙のにじみ止め用ドーサ液より、やや濃い目のドーサ液を用いました。
 人によって、多少、方法は異なるかも知れませんが、私の場合、箔を押す時は、右手に箔箸を持ち、左手は指のまま(シッカロールを付けて)で、箔の左右中心部分をつかんで、押します。正確な作業工程は、慣れた人が行うのを実際に見ないと、よく分からないと思います。ご関心のある方は、私の日本画教室にでも、お越し下さいね〰。(^.^)/~~~

 今回、集中力も程よく働き、なかなか上手く、「金箔押し」が完了しました。明日、余分な箔を払い、はがれた部分等を微補修し、ドーサ液を塗って、「金箔」工程は終了となります。この続きも、乞うご期待~~



 今回、「箔押し」に用いた画材。〈左下より〉 純金箔、絵の具用スプーン(ワセリンを取り分けるため)、ドーサ用の筆、箔箸、竹刀、皮板、ドーサ液、膠、乳鉢・乳棒(生ミョウバンをすりつぶす)、竹製バレン、生ミョウバン、ワセリン、シッカロール、カッター台、丸カッター、(その他、定規も使用)。
 (ただし今回は、皮板と竹刀は使用しませんでした。)


 雑然とした、我が画室(アトリエ)です〰。箔押しの準備完了!!


 「箔あかし」工程
  純金箔の裏の“あかし紙”を、箔箸ではがす。この“あかし紙”に、バレンで極薄くワセリンを塗る。


 あかし終えた、純金箔。一度に無理をせず、3枚位ずつ、あかしていきます。


 箔を押す部分にドーサ液を塗り、純金箔を押す。


 “あかし紙”を、そっとはがす。(時間をおくと取れなくなります。)


 純金箔3枚を押し終える。


 金箔押しを続ける。


 あかし終えた純金箔を、半分に切る。今回は、丸カッターと定規・カッター台を用いた。


 半分に切った純金箔。


 狭い部分には、半分サイズの純金箔を押す。


 金箔押しを続ける。


 さらに、金箔押しを続ける。


 純金箔を押す私。


 純金箔を押す私。真剣勝負です!! (@_@;)


 金箔押しを終えた画室。


 一通り、金箔押しを終える。


 一通り、金箔押しを終える。
 フラッシュをたいたら、反射して、とても綺麗だ


 金箔押しを終えた画室。


 「大垣祭り〔ユネスコ無形文化遺産・国重要無形民俗文化財〕・中町 布袋軕」(岐阜県大垣市)
 天井画 『黒龍と四つ姫の図』
  純金箔押しを終える。


 2022年12月22日。12月21日、前日、純金箔を押した
『黒龍と四つ姫の図』の仕上げです。
 まず、純金箔の余分な破片を箔箸で大まかに取って、残りは筆で丹念に落としていきます。この金箔片は、補修や砂子(すなご/箔の微粉末を散らす技法)用に大切に取っておきます。次に、耐水ペーパーで、要所要所に軽くやすりがけをしました。その後、箔の貼れていない部分等を丁寧に補修。前日にあかした金箔の、貼り残した部分が上手く使えました(油が硬化すると、次の日には使えない場合もあります)。今回はけっこう上手く貼れたので、補修箇所は少ないです。純金箔はとても高価なので(現在、セール期間でも、50枚で1万6000円以上します)、このようにして、最後まで大切に使い切ります。

 22日、本日は、「ドーサ液」を塗っていきます。「ドーサ液」とは、膠に生ミョウバンを少量入れた液の事で、和紙や絵絹のにじみ止めや、絵の具や箔を定着させる為に用います。また、箔の上に塗って、上から描けるようにするのも重要な役割です。
 私はいつも自分で「ドーサ液」を調合しますが、膠やミョウバンの濃さは、長年の経験と勘が頼りです。今回は、和紙のにじみ止め用よりも、かなり濃い目のドーサ液を作りました。
 金箔部分全体に「ドーサ液」を引いて、完全に乾いてから、もう一度、部分的に微補修をしました。このまま明日まで置いて、完全に乾かします。この続きも、乞うご期待~~



 純金箔が完全に乾いた状態。
 (一晩、置いたのですが、没想到! 驚く事に、冬期のせいでしょうか、ほんの一部、まだ乾いていない箇所がありました。)


 純金箔のはがれた破片を、箔箸で大まかに取っていく。


 純金箔のはがれた破片を、箔箸で大まかに取っていく。


 純金箔の残りを、筆で丁寧に落としていく。


 純金箔のはがれた破片を取り去った状態。


 純金箔のはがれた破片を取り去った状態。


 昨日使用した、あかし紙に残った純金箔を使って、貼れていない微細な部分を、丁寧に補修していく。


 あかし紙に残った純金箔を使って、貼れていない微細な部分を、丁寧に補修していく。


 純金箔の補修を終えた状態。


 純金箔の補修を終えた状態。
 カメラのフラッシュをたくと、反射して綺麗だね~💖


 ドーサ液を引くための画材類。ドーサ液、ドーサ刷毛、ドーサ用の筆(ドーサ液が絵の具に混ざると良くないので、必ず、絵の具用の筆とは分けて用います)。


 ドーサ液を引く私。
 今回は塗る範囲が狭いので、ドーサ刷毛は用いずに、ドーサ用の平筆と彩色筆で行いました。


 2022年12月23日。純金箔の微補修を完了し、「ドーサ液」を塗り終え、完全乾燥しました。
 ここに来て、なかなか集中力が整い、純金箔を上手く押せました~。豪華絢爛🌟~極めて美しく芸術的な
『黒龍と四つ姫の図』が現出してきました~~。天啊〰💖 很漂亮❣ 非常好❣ 非常棒❣❣ ──────
 これで、およそ9割強の進捗度でしょうか。この後、さらに彩色の仕上げを進めます。乞うご期待~~


 豪華絢爛~極めて美しく芸術的な『黒龍と四つ姫の図』が現出
❣❣

 純金箔を押し終えた、「大垣祭り〔ユネスコ無形文化遺産・国重要無形民俗文化財〕・中町 布袋軕」(岐阜県大垣市)
  天井画 『黒龍と四つ姫の図』 と、私・後藤 仁