旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

旅の口実、旅の目的

2021年05月01日 | 旅行一般

 あれは今年の3月のことだったと思います。時折、E&Gの生存確認がてら立ち寄っていただくお客様が来店。差し入れのビールを飲みながらひとしきり話していたのでありました。

 もちろん話題は旅についてのいろいろな雑談。そんな中で旅する動機や行き先への興味のきっかけ、そして旅するときにも訪問先を理解する基礎的な知識として、いろいろな歴史をかじってみることが効果的なのではないかという話が出たのです。

 このとき、結構酔も回って、少し眠くなっていた私の頭に突然、今までうまく表現できなかった自分の旅への思いが形をなしました。このブログでも何度も挑戦して、何度もうまくまとめられなかった、そして私の頭の中でもずっと霧の向こうにあった考えが、突如姿を見せたのです。

 私は話します。
 ”確かにきっかけとか、理由とか、そういうのもアリですが、そんなのは多分旅の”口実”に過ぎないんだと思います。旅ってもっと内面的なもので、そういうきっかけで旅するうちに出会う出来事に自分がどう反応するかとか、どんな変化を体験するかとか、そんな自分への興味なんじゃないですかね。”

 ”そうかなぁ”

 ”それじゃあ、こういうのはどうですか?”
 ”例えばいろいろな歴史を調べていくうちにトルコのカッパドキアへ行ってみたいと思って旅に出たとします。色々あって、その旅では結局カッパドキアへはたどり着かなかったとしたらどうですか?その旅は失敗?”
 
 ”それはどうでもいいなぁ。”

 この答えを聞いたとき、どうしてこのお客様と妙に馬が合うのかが理解できた気がしました。何度も口論まがいの議論もしたけれど、結局旅への思いが同じだからE&Gの企画が性に合うに違いありません。

 ”でしょ?カッパドキアへ行こうと思ったけど、行けなくて、その代わりこんな体験をしたって事で我々の旅は成立するじゃないですか。だから目的とか目的地って最終的にはどうでも良いんですよ。旅する口実。大切なのは旅することそのもの。自分の内面と向き合うこと。”

 ゲーテやT.Sエリオットといった詩人も旅は目的日到着するためのものではなく、旅そのものに勝ちがあるという意味の言葉を残していますが、その、旅することそのものというのは私は自分の内面と向き合う事だと思っています。

 周りを見回してみれば、インターネットやSNSで自分を周囲にアピールできる場は格段に増えました。そういうツールで自分をアピールすることに夢中になりすぎてはいないでしょうか。何カ国行ったとか、何カ国バイクで走ったとか、それはそれで価値あることだと思いますが、1カ国しか行っていなくてもその旅で自分とじっくり向き合った旅人は100カ国行って、自分が100カ国行ったことを他人にアピールするだけに心血を注いでいる人の旅よりずっと良い旅ができているのではないでしょうか。


 これが私の旅に対する思い。そしてもしかするとこのブログで書きたかったことの全てなのかもしれません。

 これからも、私が考える企画は常にこの考えに基づいて考えられていきます。みなさんが手っ取り早く”箔が付く”旅をするお手伝いをするのでもなければ、沢山の国を効率よく訪れるお手伝いをするのでもない。
 
 参加者誰もが自分の内面と向き合うきっかけとなるような旅をアレンジするのがE&Gの任務。

 メールマガジンでも書きましたが、そういう意味では今はたびに出る必要がありません。新型コロナウィルスの流行下という非日常が2年も続いている日本は十分自分の内面と向き合う機会のある旅先です。”新しい日常”とやらにを見つめながら、今まで当たり前と思っていた毎日の中での自分の内面と向き合って”コロナ禍の日本の旅”をどう過ごすかを考えてみるのもまた一つの旅。



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