スパニッシュ・オデッセイ

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映画『誰が為に鐘は鳴る』

2021-12-03 17:26:38 | スペイン語
  昨日、テレビで『誰が為に鐘は鳴る』を見た。以前見たような気がしていたが、実は初めてだった。
 原題“For whom the bell tolls”は16~17世紀のイギリスの詩人ジョン・ダン(John Donne)の詩からとられていることはあまりにも有名だが、 ここでは触れない。
 『誰が為に鐘は鳴る』の舞台はスペインなので、当然スペイン語についてのトリビアについて述べる。
 主人公ロバート・ジョーダンの個人名のロバート(Robert)のスペイン語形がロベルト(Roberto)なので、映画でもそう呼ばれていた。この程度のことでわざわざ記事を書くには及ばない。
 山賊パブロ(Pablo、英語形は Paul)の女房のピラー(Pilar、スペイン語読みはピラール)がロベルトに呼びかけるときの言葉について述べる。その前にピラール(Pilar)について一言しておく。ウィキペディア「ピラール」には次のように記述されている。

 ピラールはスペイン語圏、ポルトガル語の女性名、また姓。原義は「柱」で、ピラールの聖母にちなんで人名に用いられるようになった。

 ピラールの愛称は Pily という形が一般的なようである。
 
 さて、映画の中でピラーがロベルトとの会話の最後に「イングレス」と言っていた。エディ-・マーフィーが「~、man」というようなものである。日本語字幕では“man”は訳されないが、「イングレス」も日本語字幕には訳語は現れなかった。
 「イングレス」というのは「イギリス人、英語」という意味のことば “inglés" である。ロベルトはイギリス人ではなく、アメリカ人なのだから “inglés" ではなく、“americano” でなくてはならない。しかし、イギリス人にしろ、アメリカ人にしろ、英語 “inglés" を話すのだから、細かいことは気にしなかったのだろう。

 次に「エルソルド」または「ソルド」という登場人物について述べる。これは本名ではない。スペイン語表記すると、“El Sordo”、“Sordo” で、英語にすると “(The) deaf” で、「聴覚障碍者」という意味である。当然映画の中でも耳が遠い人物として描かれている。
 で、日本語字幕はどうなっているかというと、翻訳しないで、カタカナで「エルソルド」、「ソルド」となっていた。映画の本筋とはあまり関係がないので、それでもかまわないのだが、日本での公開当時(1952年)は今では差別用語とされている「つ〇ぼ」と訳されていたのではないかと推測する。字幕としては「聴覚障碍者」よりは「エルソルド」の方がましであろう。
 
 原作者のヘミングウェイはキューバともゆかりが深いので、ヘミングウェイ研究者にとってはスペイン語学習は必須であろう。『誰が為に鐘は鳴る』に限らず、西部劇でもアメリカ先住民(昔は「インディアン」と言っていたものだが)がスペイン語を話す場面がある。英語学習も大事だが、ある程度英語を習得したら、是非簡単なスペイン語でいいから、学習してほしいものである。   



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