スパニッシュ・オデッセイ

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Salir con un domingo siete

2022-05-16 18:18:36 | スペイン語
 1920年に出版された “Los Cuentos de mi tía Panchita” (パンチータ伯母さんのお話)を読んでいる。著者は Carmen Lyra(本名 María Isabel Carvajal Quesada)。詳細についてはウィキペディア‟Carmen Lyra”を参照されたい。スペイン語だが、機械翻訳をかければ大意はつかめるだろう。
 この書籍の中の一つに“Salir con un domingo siete”という話がある。
 タイトルを英語に逐語訳すれば、“Go out with a Sunday seven”になる。「7日の日曜日に出かける」のかと思うが、そうではない。「7日の日曜日」ならスペイン語では“el domingo siete”で、定冠詞を使わなければならない。本文を読むと、“un domingo siete”は「日曜日で7つ」という意味だということがわかる。 話の一部を紹介する。

 魔女たちがパーティーをやっていて、その中で単調な歌を歌っていた。
“Lunes y martes y miércoles tres"(月曜日と火曜日と水曜日で3つ)というフレーズを繰り返すだけで、それが延々と続いていた。
 そこへ、道に迷ったコブ男が迷い込み、盗み聞きをしていたが、退屈のあまり、‟Jueves y viernes y sábado seis”(木曜日と金曜日と土曜日で6つ)という歌詞を付け加えた。魔女たちはそれを聞いて、大いに喜び、男の喉からコブを取り、さらに褒美として金貨を数えきれないぐらい取らせて、家に返してやった。 
 家に帰ると、強欲な隣人(こちらにも喉にコブがある)も金貨が欲しくなり、魔女たちの家に出かけていく。魔女たちはパーティーをやっていた。歌は例の歌で、‟Lunes y martes y miércoles tres. Jueves y viernes y sábado seis”という歌詞をひたすら繰り返すだけだった。そこで、この男は‟Domingo siete”(日曜日で7つ)という歌詞を付け加えたのだが、魔女たちは喜ぶどころか、怒り狂って、この男を踏んだり蹴ったりして、さらに、先に切り取ったコブをこの男の喉にくっつけて、追い払った。

 全く、コブ取り爺さんそのもののお話である。
 さて、何で魔女たちが‟Domingo siete”(日曜日で7つ)に怒り狂ったのだろうか。「月、火、水、木、…」とくると、「日曜日で7つ」とくっつけるのは当たり前ではなかろうか。意味の上では確かにそうなのだが、韻の点から考えると、これではぶち壊しなのである。
 ‟Lunes y martes y miércoles tres” で、音節数は10。[es]音で韻を踏んでいる。“Jueves y viernes y sábado seis”で、音節数は10。韻は完全ではないものの、sábado 以外は[s]音で韻が踏まれている。
 これに対して、強欲男が追加した‟Domingo siete”は音節数が5。さらに韻が全く合わない。それで魔女たちが怒ったのである。
 ここから、‟salir por un domingo siete”は「余計なこと、頓珍漢なことをする(言う)」等の意味の成句になった。さらに「思いがけず妊娠する」という意味も持つようになった。ただし、この成句はラテンアメリカでしか通用しないそうだ。
 You Tube にアニメがアップされている(ただし、スペイン語)。

 【お知らせ】
 2022年5月25日に国書刊行会より拙訳本「コスタリカ伝説集」‟Leyendas Costarricenses”が刊行されます。ちょっと値は張りますが、よろしくお願いします。

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