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新型コロナは〝ただの風邪〟ではないが、恐れすぎる必要もない



 2019年12月末、中国は武漢市に端を発した新型コロナウイルス感染症(COVID−19。以下、新型コロナ)は瞬く間に世界中に広がり、全世界で2506万人が感染し、84万人が亡くなったとされる(20年8月31日現在)。


 新型コロナそのものによる感染者数・死者数のインパクトの大きさもさることながら、新型コロナを制圧するために、日本も含めた世界中の人が大きな社会的・経済的制約を受けている。欧米を中心に〝New normal〟(日本では、〝新しい生活様式〟と訳される)に向けて社会変革を試みる動きがあるが、多くの国では新型コロナのコントロールと社会経済活動の再開のバランスの間で苦しんでいる。

新型コロナの
基本的な特性とは

(出所)各種資料を基にウェッジ作成 写真を拡大
 では日本は今後どのようにこの感染症と向き合っていけばいいのか。それを考えるにあたり、まずは、新型コロナの基本的な特性をおさらいしておきたい(右図参照)。

 新型コロナの特性の一つにあるのが、感染してから症状が出るまでの潜伏期間や無症状者であっても他人にうつす可能性があることである。過去に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)は、感染すると原則として何かしらの症状が出て、症状が出てから他人にうつすという特徴があった。現時点では、新型コロナにおいては症状が出る1日~2日前が最も他人にうつす可能性が高いとされている。この点が新型コロナの〝封じ込め〟(ウイルスを日常生活から完全に排除すること)を難しくしている理由であろう。

 また、新型コロナは若年者から高齢者まで幅広い年齢層で感染を引き起こすが、現在のところ重症化するのは高齢者や何らかの基礎疾患がある人(糖尿病など)に多く、若年者での重症化は極めて稀である。日本において6月5日までに入院した3403例を分析した結果をみても、重症化率は、29歳以下で2%、30歳~49歳で4%のところ、50歳~69歳で13.9%、70歳以上で13.1%となっている(8月24日付厚生労働省アドバイザリーボード資料)。

 致死率は国によって大きく異なるものの、現時点では0.25~3%程度とされている。この致死率も年代によって大きく異なることが特徴で、例えばイタリアからの報告によると若年層(0歳~49歳)ではほぼ0%程度と極めて低いものの、70代では12.8%、80代では20.2%と高い。

 これまでに流行したSARSやMERSでは致死率がそれぞれ10%前後、34.4%とされている。他方で季節性インフルエンザでは0.01~0.1%以下程度であることを考えると、SARSやMERSほど高い致死率ではないものの、高齢者や基礎疾患を有する人に対しては〝ただの風邪〟と片付けてしまうのはいささか乱暴である。

 ちなみに、巷では「インフルエンザで年間1万人が亡くなっているのに対してコロナでは1000人しか亡くなっていない、インフルエンザの方がよっぽど大変だ」と述べている人も散見される。だが、新型コロナに関しては、毎年の季節性インフルエンザの流行時期のように、個々人・飲食店などにおける感染予防や在宅勤務の奨励など産業界の協力なしに普通の生活を送っていれば、死者数はこの程度では済まないとみるべきである。

3密の回避はあくまで
クラスター発生の予防策

 この新型コロナに対して、日本ではこれまでクラスター対策と自粛要請を対策の中心に据えてきた。その理由は、2月~3月の初期の頃に発生した新型コロナ患者の動向を分析したところ、約8割の人は二次感染を起こさず(次の人に感染を連鎖させず)残りの2割の人がさらに感染を拡大させていたという特性が分かったことによる。

 さらに、この2割の中のごく一部の人が、〝スーパースプレッダー〟とされる、複数の人に同時に大量の感染を引き起こすことも判明した。この、特定の1カ所で一度にたくさんの患者が発生すること(厚労省では5人以上と定義している)をクラスターの発生としている。

 その上で、過去にクラスターが発生した場所を詳細に分析すると、いわゆる3密(密接、密集、密閉した空間)で発生していることから、この3密を回避すれば、感染力のある感染者がいてもクラスターの発生を防げることが分かり、それを中心において対策が進められてきた。

 ここで大切なことは、個々人の間での感染予防はあくまでもマスクや手洗い(接触・飛沫感染対策)であり、3密の回避はクラスター発生の予防であるということだ。一部、3密を回避していれば感染そのものを防げると思っている人もいるが、それは違う。

 さて、このようなクラスター対策を中心に据えた日本の対策は、欧米諸国のような強烈なロックダウンを伴わずして、とりあえずの初期の流行の収束には成功した。欧米諸国と比較して人口当たりの死者数が桁違いに少ないのはもちろん、同じアジア各国と比較しても、日本の突出して高い高齢化率を加味すれば、初期対応としてはある程度うまくできたと言えるであろう。

 しかしながら、7月に入った頃から東京を中心に流行の再燃がみられ始め、そこから全国各地に飛び火する形で感染者が拡大した。緊急事態宣言の解除とともにできるだけ社会経済活動を再開させたいという希望とは裏腹に、収束の兆しはみえず、それによる恐怖も広がり、社会経済活動も思うように再開できずにいる。

 重要なのは新型コロナの特性を踏まえると、感染者数=PCR検査陽性者数という指標だけをみても、その対策はしきれないということである。

 重要な指標の一つに実行再生産数(Rt)が挙げられる。これは、一人の人が何人に感染を拡大させているかをみる指標で①Rt>1であれば感染は拡大傾向、②Rt=1であれば横ばい、③Rt<1であれば感染は収束傾向にあるとみることができ、③Rt<1の状態を目指すことが重要である。実のところ日本は、PCR検査陽性者数は緊急事態宣言解除の前後で大幅に減ったが、このRtについては一瞬1を下回ったものの、緊急事態宣言の解除後からすぐに全国で1を上回っている状態が2カ月以上続いた。

 5月25日、これ以上の継続は経済が壊滅するという声の高まりを受け、政府は緊急事態宣言を解除した。筆者の個人的考えではこのとき、Rtが常に少なくとも1を下回っているか注視しつつ、さらに約2週間程度、緊急事態宣言を継続していれば、その後少なくとも夏の間の流行の再燃はなく、「Go To トラベルキャンペーン(以下、Go To)」や夏の旅行等をはじめとしたさまざまなな社会経済活動の再開がもう少し可能だったのではないかとみている。

 ただし、諸外国をみると、一部の国では〝封じ込め〟を目指した国もあるが、多くの国では社会経済活動の再開に伴い感染の再流行がみられている。経済活動への影響を考えると繰り返しのロックダウンや自粛要請は現実的ではなく、多くの国ではある程度の感染者数は許容しながら徐々に社会経済活動を再開させていくところに落ち着いている。


社会の何を守るのか
国民のコンセンサスが必要

 治療薬やワクチンは、実用化までにはまだ当面の時間を要するだろう。こうした事情も踏まえると日本も諸外国と同様に、ある程度の感染者数を許容しつつ、社会経済活動を再開させるのが現実的だ。

 社会経済活動の再開の大前提として正しい感染症対策を行っていくことが必須である(手洗い、マスク、3密回避、厚労省・接触確認アプリのインストール等)。県をまたいだ移動そのものよりも、結局のところ感染の拡大を阻止するのは日常生活でも旅行先でも個々人がどれだけ感染予防策を取れるかにかかっている。


その上で課題となるのが「誰を守るのか」「社会の何を守るのか」の国民のコンセンサスがないまま、日々の感染者数の推移に一喜一憂していることである。コンセンサスとなりうるのは、「重症化しやすいハイリスク者を保護し、医療崩壊を防ぎつつ、新型コロナの流行がなければ発生することのなかった死者を出さない」ことだろう。

 それを実現するために必要なことは、前提となる①正しい感染症対策を続けること、②一見すると相反する政策が行われることを理解し許容すること、③感染者の発生を過度に恐れないこと、の三つである。

 例えばGo Toでは、一部地域で感染拡大の兆しがみえる中で開始したことに対し、かなり強い反発がみられた。しかし、流行の収束はいつになるのだろうか? 今年の冬や来年の夏に収束しているかどうかは誰にも分からず、その時期まで観光業や周辺産業が耐えられる保証もない。Go Toを行いつつ、その中でどう感染予防を行うのかを、建設的に議論することが大切である。

 また、「Go To登録の旅館でクラスター発生!」などの報道がみられるが、このような報道も厳に慎むべきである。Go To登録の有無とクラスターの発生は、現時点では明らかになっていない。また、Go Toに登録するという行為自体も、もちろん罪ではない。先にも書いた通り、大半の人は新型コロナに感染してもその後、二次感染を引き起こさない。

 昨今、旅行は「遠出より近場」といった傾向もあるが、個々人が感染予防を行っていれば感染リスクは下げられる。つまり、旅行先の歓楽街で3密で会食するなど、自らが3密の構成要員の一部となるような行動を慎んでいれば、旅行者が現地でクラスターを引き起こす可能性も低い。

 これは出張においても同じである。3密での会食などを避け、個々人が基本的な感染予防をしっかりと行えば、出張先で感染を拡大させる可能性はさほど高くはない。また、帰省の際にも、例えば自宅に宿泊しないでホテルに宿泊する、家族での会食を極力避けるなど、飛沫・接触感染のリスクを下げることを個々人が行えば、感染のリスクを下げることは可能である。

 新型コロナの特性や感染経路が明らかになりつつある今、社会経済活動の一つ一つを敵視しても意味はない。人の往来が盛んになれば、ある程度散発的に陽性者が発生することも許容していくべきである。


医療提供体制の問題は
医療従事者の確保にある

 一方で、社会経済活動を活発化させていく上で問題となるのは、現時点でハイリスクとみられる高齢者へのケアと、医療提供体制である。

 高齢者については、単に「高齢者を隔離する」という単純な話にはならない。高齢者と最も接点が多いのは彼らと同居する家族や、医療・介護施設でのスタッフであろうが、市中で感染が蔓延すると、彼らを介して高齢者にも感染が伝播する可能性がある。また、高齢者が社会との隔絶を強いられることによる認知・精神機能の悪化といった問題もある。単に新型コロナのコントロールという観点だけでなく、高齢者にとってより良い生活とは何かという大きな視点が必要になる。

 医療提供体制については、病床数の空きや病床占拠率をもって医療の逼迫状況が語られることが多いが、重要なのは、そこで働く医療従事者の確保はどうするのかということである。

 かねてから、日本の救急集中治療を担う医師は不足しており、その影響は地方で特に顕著である。また、重症患者の対応には医師だけでなく看護師や臨床工学士などさまざまな医療職が必要となるが、このような高度な専門職はすぐに育成できるものではない(医師免許を有していても全ての医師が人工呼吸器管理に長(た)けているわけではなく、そのためには数年程度のトレーニングが必要となる)。

 20年初頭から続く新型コロナの対応に、現場の医療従事者の疲弊は最大に達しており、彼らに対する金銭的補償やメンタルケアの必要性も高まっている中で、単に病床の空きだけで医療の逼迫を判断することは、彼らのモチベーションをさらに下げかねない。

 新型コロナは、高齢者や基礎疾患がある人にとっては、特効薬やワクチンがない現状において、怖い病気である。だからこそ、急激な医療現場への負担の増加を避けつつ、社会経済活動を活発化させていくために、個々人が社会の構成員として、手洗いをしたり、密閉空間ではマスクを使ったり、少なくとも発熱があるときには人と接触するのを避けたりするなど、正しい感染予防を行っていくことが必要である。

 大切なことは、感染予防をわれわれの生活に根付かせつつ、コロナ禍前とまったく同じ形の社会経済活動にただ戻ろうとするのではなく、これを機に新たな社会を作っていくことである。

 今こそ、個々人の正しい理解と冷静な行動が求められている。



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