「呼び覚まされる霊性の震災学」と臨床宗教師 | 災害レジリエンス“羊が獅子となるまで”

災害レジリエンス“羊が獅子となるまで”

~震災復興と首都防災に取り組む「防災士」の日記~


3.11

東日本大震災発生から

5年。



今年も東北地方をはじめ

全国各地で追悼のセレモニーが

おこなわれました。


私も職場で黙祷を捧げ

5年たった今現在でも

取り組み続けられている

暮らしの再建、地域の再生、

そして生きる人々の「想い」

について 静かに深く

思いを巡らしていました。



今年になって

東北学院大学の学生たちが

震災における「死」 という

デリケートなテーマについて

様々な点から取り組んだ研究論文を

まとめた本が発刊されました。


呼び覚まされる 霊性の震災学/新曜社
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石巻・気仙沼のタクシードライバーから

聞き取り調査した

「幽霊を乗せた」話の研究をはじめ、

名取市閖上の震災慰霊碑における
「記憶」

南三陸町の「震災遺構」防災対策庁舎

山元町中浜の墓地復興にみられる
「埋め墓/詣り墓」の様相

震災復興の陰で見過ごされる
「コールドスポット」

672もの「ご遺体」を掘り起こし「改葬」した
石巻市葬儀社の仕事

という 震災で失われた存在と

いのちに対する深い問いかけ


地域ボランティア以上の働きをする消防団

原発避難区域で害獣駆除に取り組む猟友会

の活動についても 丁寧に論述されており

マスメデイアが伝える「震災の記録」

とは異なった 「割り切れないもの」を

深く抱えて 震災の経験を生き続ける

人々の実情を読むことができました。




こうした大災害による「生と死」の問題をケアし、

現場で取り組むなかで 宗教の分野から

「臨床宗教師」

という役割が立ち上がりました。



2011年の東日本大震災を機に、東北大学で養成がはじまり、

龍谷大学、鶴見大学、高野山大学、武蔵野大学、種智院大学等の

大学機関もこれに取り組んでいます。

今年2月には将来の資格化を視野に、研究者と修了者らが

「日本臨床宗教師会」を設立しました。


布教や伝道を行うのではなく、

相手の価値観を尊重しながら、

仏教、キリスト教、神道など、

さまざまな信仰を持つ

宗教者としての経験をいかし、

自身から公共空間へ赴いて

苦難や悲嘆を抱える方々に寄り添う

活動をおこなっています。

そのなかで

「傾聴」

という姿勢を大切にされています。


かき消されるような

「小さい声・弱い声」

に耳をすます


そこにこそ

人には伝えきれない

伝わりづらい

本当の「想い」や願いが

発せられている

かもしれない


そうした真摯な態度が

苦難を共に生きてゆく

心のレジリエンスを

呼び覚ますのでは

のではないでしょうか。





私たちひとりひとりの

いのちと心が

世の暗闇を 仄かに照らす

小さなあたたかい

ともしびで 

ありますように


合掌。


“羊が獅子となるまで”