A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【盤魔殿リターンズ11/29開催予定】FREE ZINE『盤魔殿アマルガム』公開~ Soupコンピ/Satori/Position Parallèle/大野松雄/ブリグリ/Sun Ra/VAKULA

2020年11月27日 00時34分00秒 | 素晴らしき変態音楽



盤魔殿DJ 今月の1枚  
盤魔殿DJ陣が毎月お気に入りの音源をご紹介。こだわりの選盤からどんな世界が広がるかお楽しみください。

●DJ Athmodeus a.k.a. 持田保
V.A. / Flowers in concrete -Compilation for SOUP- (SLUG TAPES)


未だ収束の気配すら見えない新型コロナウイルス騒動により社会的スケープゴート化されたライブハウス。もはやライブハウスという業態そのものが存続の危機にさらされているなか、2006年新宿区落合に誕生し長らく東京エクスペリメンタル・シーンを牽引してきた地下実験音楽スペースsoupもその例にもれず現在経営的な苦境に立たされている。「自助、自粛、自己責任」を「三本の矢」とする行政には何ひとつとして期待できないsoupの状況を少しでも打破すべく、ゆかりの国内外アーティストたちが集結して制作されたのが本ベネフィット・アルバムだ。そもそもは今年6月にBandcampにて発表された”Flowers in concrete-Side International-””Flowers in concrete-Side Japan”というふたつのコンピレーション作品を2CDフィジカルパッケージ化したもので、新トラック追加&soup音響担当、西山伸基による新規マスタリング、そしてex Whitehouse、現Cut Handsのウィリアム・ベネットがライナーノーツ寄稿(音源参加はしていないが)が特典として付いている。トラック提供はAaron Dilloway、Being、Daniel Menche、Fecalove、Kiran Arora、Lasse Marhaug(Jazkamer)、Leah P、Matmos、Purgist、Purgist、Shredded Nerve、Sickness、Torturing Nurse、Unsustainable Social Condition、Vomir、黒電話666、GxCx、Government Alpha、Kazuma Kubota、Kazumoto Endo、LIKE WEEDS、LINEKRAFT、P.I.G.S.、PAINJERK、scum、shikaku、T.美川+John Wiese、Wolf Creekによるもの。メンツをみての通りハーシュ・ノイズが中心であり、僕自身最近のシーン事情に疎遠だったこともあってか、かつて90年代にノイズ・コンピ作品を買っては全く予備知識ない未知のアーティストたちに胸ときめかせていた若い頃を思い出してしまった。soup救済という名目のみならず現行ハーシュ・シーンを知りうるうえでも重要な良コンピなので盤魔殿関係者たちにもぜひ購入していただきたいアイテムである。


●DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
Satori / Kanashibari


あのBROKEN FLAGにも名を残す、英国のダーク・アンビエントユニットSatoriが2008年にリリースした8thアルバム。LPヴァージョンはDOGMA CHASEよりリリースされ、CDは当時メンバーであったJUSTIN MITCHELL運営のUKレーベルCOLD SPRINGよりリースということで、版元が異なるせいか、LPとCDではジャケが違うんですよねぇ。で、内容に関して言うと、ぼやけたパーカッションと暗黒金属音塊、どこまでも深いドローン・レイヤーが生み出す漆黒のアンビエント世界を感じる「ENTITY」が秀逸の出来栄えで素晴らしい上に、全体的にエレクトロニクスを中心とするミステリアスでエクスペリメンタルなサウンドスケープが展開する抜群の出来栄えの好作品...でも、タイトルがちょっと笑えるんだよねぇ!(笑)


●DJ Bothis a.k.a. 山田遼
Position Parallèle- En Garde À Vue (2017) LP Hau Ruck!


Dernière Volonté名義での活動が著名なGeoffroy D.とAuto-Immune名義での活動で知られるPierre Piのフランス人二人によるシンセ・ミニマル・ポップデュオによる2017年発表の3rdフルアルバム。そして出版レーベルはご存知Der BlutharschのAlbin Juliusが主宰のオーストリアのレーベルHau Ruck!からとなると、このPosition Parallèleというデュオが、一般的な意味でのポップという枠組みから逸脱していることが窺える。そもそも、Geoffroy D.によるDernière Volontéの作品を初期から現在まで順番に聴いてみると、王道のマーシャル・インダストリアルから徐々にマーチングドラム主体のエモーショナルなミリタリー・ポップというような独自の路線へと進化を続けていることが確認できる。そのようなGeoffroy D.がよりポップなシンセ・ミュージックを具現化したのがPosition Parallèleであり、その彼らの代表曲と言える完成度を誇る名曲が、本作『En Garde À Vue』の一曲目にあたる「Quelques Aiguilles」であろう。無駄の無い空間認識と、どっしりとした安定感を伴って刻まれる小気味良いリズム。世界中の闘争音楽や、シリアスなインダストリアルミュージックを通過してきた人が聴いても「あぁなるほどね」と納得できる労作。


●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
Sun Ra Arkestra / Swirling (2020)


自称“土星生まれ”の作曲家/ジャズ・ピアニストにしてバンドマスター、宇宙哲学者にして古代文明継承者、映画監督兼俳優でもあるサン・ラのことは盤魔殿に関わる人なら名前くらいは聞いたことがあるだろう。1914年生まれの彼が50年代に結成した総勢20数名のビッグバンドがアーケストラ。Ark(箱舟)+Orchestraという名前の由来のノアの方舟に乗り込んだ家族と動物の如く、総帥サン・ラの指導のもと共同生活を送りながら演奏旅行に出かけては、行く先々でライヴを録音した少数プレスのレコードを販売して日銭を稼ぐ日々を送った。フリージャズの嵐が吹き荒れた60年代ニューヨークで美術館に楽器を持ち込みレコーディングするなど斜め上を行く活動で異彩を放ち、70年代の反動保守ジャズ・フュージョン勢力の向こうを張って、奇怪なコスチュームのお祭り集団として欧米日のジャズフェスで乱痴気騒ぎのステージを繰り広げた。リリースしたレコードは200種とも300種とも言われ、誰も全貌を把握できない。メルツバウが当初の活動目標に「サン・ラを超える数のレコード・CDをリリースする」と掲げていたことは有名。93年にサン・ラ本人は地球を旅立った(逝去した)が、一番弟子のサックス奏者マーシャル・アレンが総帥の遺志を引き継ぎ、96歳になる現在までサン・ラ・アーケストラの活動を続けている。本作『Swirling(渦巻く)』は21年ぶりのスタジオ録音アルバム。サン・ラ神が見下ろす惑星で渦巻きの方舟に同舟したマーシャル・アレンと楽団員を描いたジャケが秀逸。一般的に宇宙人ネタ/エジプト太陽神コスプレ/電波系発言などで稀代のペテン師/色物のイメージがあるが、ニューオリンズ、スウィング、ビバップ、フリージャズからR&B/ゴスペル、エキゾチカ、サイケ、電子音楽、スペースロックまであらゆる音楽を坩堝化したサウンドは、世界文明を攪拌・濃縮した自家製ミックスジュースのように馨しい。現在も過去のアーカイブの再発が続々登場するので「どれを聴いたらいいか分からない」と戸惑う人も多いに違いない。そういう人には自信をもってこの最新作をおススメしたい。「え?でもサン・ラ総帥が入っていないじゃん」と反論する方にはこう答えよう。聖書を書いたのはキリストですか?仏典を記したのは仏陀ですか?コーランをまとめたのはムハンマドですか?--すべて弟子たちの偉業じゃん、と。


●DJ BEKATAROU a.k.a. 伊藤元
大野松雄 / 茶の木仏のつぶやき


慶應元年に京都の山城で創業した茶問屋 “宇治香園”。
同社が創業155年という記念すべき年を機に音と光で茶を表現する”Tealightsound”シリーズを開始し、これまでにコンピューマ氏、竹久圏瞬間Enitokwa氏アキツユコ氏、CARRE氏らが音源をリリースしてきた。

今回、紹介させていただく2020年にリリースされた本作は大野松雄氏が宇治香園の思いを受け、昭和30年前後に京都の古道具屋で出会った茶の木仏の原始的な姿から受けた印象が発端となり、制作に至ったったとのこと。

みどりに囲まれた静謐な茶室で亭主の御手前をいただき、口から溢れ出た茶が喉へと流れる一瞬を感じるような心持ちでオーディオに正対していると
はじまりの一音が空気に触れ、僕の意識を宇宙へと一気に広げた…
あゝオープンリールによるエコーの何という素晴らしいことか…
あたかもゆらゆらと揺蕩う膜のようになって宇宙の波動が運ぶ鳥の囀り、樹々の騒めき等
様々な事象を巻き込んでは飲み込んでいく。
プリミティブなリズムは原始の記憶へと導き、
呼吸するたびに音の波の晴れやかさやみずみずしさがが体内の小宇宙を巡るように思えてならない…
60年以上に渡って音と向き合い、試行錯誤しながら創造してきた氏だからこそ表出できる正に他のどこにもない作品である。


●DJ Ipetam a.k.a. Rie fukuda
the brilliant green/ the brilliant green


1998年リリースのデビューアルバム。退屈なJ POPが溢れかえる中に久しぶりに新鮮な風が吹き込んだ様だった。ボーカルと詞を担当していた川瀬智子は当時20歳位だったのではないかな。
後のソロ作でもわかる様に、フレンチロリータ風味にイギリスの音楽がいかにも好きそうで、そこに60年代前半が香るムードを付け合わせたクレバーな戦略が当たったと思う。戦略と言ってもレコード会社の思惑ではなく、バンドのセンスである所が強かった。彼女は実際、後にアイドルグループのプロデュースも行っている。
60年代風ムードのミュージシャンは勿論あのネオGSブームで土台があったものの、ブリグリの洗練度はその比では無かった。早い時期にドラマ主題歌に使われた事もあり、忽ちメジャーシーンで活躍する様になる。
このデビューアルバムは、乾いた情感にほんの少しのアンダーグラウンドな感触、唯一無二の内向性が影を落とす原石の様な一枚。
川瀬智子氏のセンスの良さは間違いないと思われるが、ベース担当の奥田氏と入籍し、その後ギタリストが脱退、そしてバンドは彼女のソロプロジェクトに近いスタイルに変わったらしい。
私は松井氏のギターが好きだったので、この脱退はとても残念だった。下世話ながら、バンド形態の力関係やバランスの難しさを痛感する。いやこれは、私が勝手に邪推している事であって。
最後に、アルバムの中の印象的な一節を。
"振り返る様に、夢から覚めた"「冷たい花」より  

          
●DJ Qliphoth a.k.a. 宇田川岳夫
地下音楽この1枚 VAKULA-IN SEARCH OF ANCIENT CIVILIZATION


ウクライナ出身のVAKULAはこれまで数多くの変名で多数の音源をリリースしているミュージシャン。ポストビートダウン/ディープハウスシーンを代表するウクライナの才人といわれている。2008年に鮮烈なデビューを飾ったUzuriをはじめ、Firecracker、Prime Numbers、Ethereal Sound、Archipel、Quintessentials、Dekmantelなど人気レーベルを総ナメし、自身主宰のレーベルLelekaも立ち上げている。VakulaのほかにVやVedomirといった名義を使い分け、シカゴ、デトロイト系ディープハウスからサイケデリックダブテクノ、フューチャービートダウンなど、実に幅広く活動している。また、Steve Reichのリミックスや、日本のレーベルSound of SpeedからはKuniyukiとのコラボ作品も発表。他にも国内レーベルでは、Crue-LやMule Musiq、Catuneからリミックス作品をリリースしている。
2013年にFirecrackerよりリリースした珠玉のコレクションアルバム『You've Never Been To Konotop (Selected Works 2009-2012)』は、インターネット上のダンスミュージックバイブルRAで「4.5/5」のハイスコアを獲得し、FACT Magazineでも「THE 50 BEST ALBUMS OF 2013」に選出された。2015年には『A Voyage To Arcturus』を発表。タイトルはDavid Lindsayによる1920年発表のイギリス古典SF小説(邦題『アルクトゥールスへの旅』)からとられたもので、同著の章のタイトルをとった全16曲が収録されており、高評価を得ている。2020年発表のこの作品は古代宇宙人説にインスパイアされた、古代文明と宇宙人の遭遇を陰謀論とロマンに満ちた内容で語る、クラウトロック・リバイバルともサイ・トランスともいえる2枚組LPでロシア盤。

コロナ禍の
第3派到来
気をつけよう

今週日曜日に開催!(予定)


盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 リターンズ (vol.35)
2020.11.29 sun 渋谷DJ Bar EdgeEnd
18:30 Open/Start(*開演を当初の予定より30分早めました)
1000 Yen + 1 drink別 

出演:DJ Qliphoth / DJ Necronomicon / DJ Bothis / DJ BEKATAROU / DJ Vaby / DJ Ipetam

2020年2月以来8ヵ月ぶりの『盤魔殿』。レギュラーDJ陣が自粛中に掘り起こした異端音楽の数々をたっぷりプレイします。アフター・コロナの異端音楽祭、祝いましょう。

タイムテーブル
18:30 Open
18:30-19:00 DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
19:00-19:30 DJ Bothis a.k.a. 山田遼
19:30-20:00 DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
20:00-20:30 DJ Ipetam a.k.a. Rie Fukuda
20:30-21:00 DJ BEKATAROU a.k.a. 伊藤元

*新型コロナ感染状況によっては延期する場合があります。ご了承ください。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【本邦初インタビュー】THE H... | トップ | 【イベントレポート・音源あ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

素晴らしき変態音楽」カテゴリの最新記事