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★前広島市長・秋葉忠利氏「これで核は使えなくなりましたね」となぜ首相は言えなかったのか

2023年06月05日 08時26分12秒 | ●YAMACHANの雑記帳

秋葉忠利(前広島市長)

「核なき世界」をライフワークとする、被爆地が地元の岸田首相が議長を務めたG7広島サミット。内閣支持率は上昇し、共同通信の世論調査によると、岸田首相がサミットで「指導力を発揮した」との回答は62.3%に上る。一方、被爆者であるサーロー節子さんは「わざわざ広島まで来て、これだけの内容か」と批判。被爆者からは失望の声が上がっている。広島サミットは核廃絶に向け前進したのか、後退したのか──。広島市長を12年務めた秋葉忠利氏に聞いた。

  ◇   ◇   ◇

 ──G7サミットをどう評価されていますか。

 表面的にとらえて「成功」したと受け止める方が少なくありません。表に表れたことと裏側に意図されてきたこと、そして、被爆者の思いは実現したのかの3つに分けることが大事です。
■資料館を見た首脳の反応を知りたい
 ──原爆資料館視察の際、岸田首相自らG7首脳に被爆の実相を伝えることを求める署名を募りました。
 5月9日から10日程度で1万7000筆集まりました。資料館を視察した人は、ほぼ全て心を揺さぶられます。2016年に当時のオバマ米大統領が視察した時は、資料館の入り口に入り、すぐ出てきた。滞在時間はわずか10分だった。今回、G7首脳は岸田首相の案内で40分間視察し、約10分間は被爆者の小倉桂子さんの体験話にも耳を傾けました。
 ──実相は伝えられたのでしょうか。
 オバマ大統領の際の批判を受けた対応と思われ、表面的には実相を知ってもらうことが実行されたようには見えますが、実質的にどうだったか検証する必要があります。
 ──視察の中身は開示されていない。
 小倉さんとどんな話をして、首脳がどう反応したのか、知りたい。また、スナク英首相は三輪車やボロボロの服装を見て心が揺さぶられたと言っているので、それなりのものは見せたのでしょうが、だったらなぜ、資料館全体を見せないのか。本館に入っていない。40分あれば、駆け足でも全体は見られます。
 ──署名では、視察を終えた直後の首脳に対し、岸田首相が「核不使用」を念押しするよう求めました。
 首脳らは「核抑止論」の立場に立った政治家ですが、悲劇の実相を目の当たりにした直後、人間として心からの反応が出てくるはずです。リアルな政治家に戻る前に岸田首相から「これで核は使えなくなりましたね」と言われれば、どう感じるのか。さすがに「そうですね」とは言えないでしょうが、自分の心の中に葛藤が生じたとすれば、それは一生消えずに、これからの政治判断で岸田首相の一言が脳裏をよぎるかもしれない。核廃絶に向け、こういう積み重ねが大事なのです。この要望は実行してもらえませんでした。
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 ──岸田首相は「被爆地出身の首相」を強調しています。

 普通の首相ではないのです。「被爆地出身」との言葉に伴う責任が生じます。それは被爆者を理解し、思いを代弁することです。
 ──サミットで被爆者の代弁はできたのですか。
 発表された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」には「被爆者」という言葉が一言も出てこない。また、被爆者の悲願だった核兵器禁止条約(核禁条約)にも全く触れられていません。テーマは被爆者でも、被爆者の願いでもなかったのです。被爆地出身を強調するリーダーが被爆地で開いたサミットで、被爆者を代弁するどころか、無視をした。これはヒロシマを冒涜するものです。
 ──では、何がテーマだったのですか。広島ビジョンには何が書かれているのですか。
 真実に近寄らないような“工夫”が、いたるところで行われています。
 ──と言いますと。
 看過できないのは2つの「想起」です。原爆投下の結果として〈かつてない壊滅と極めて甚大な非人間的な苦難を長崎と共に想起させる広島に集った〉とあります。壊滅と苦難を受けた広島に集ったと事実を語ればいいのです。例えば、「○○大学は私が卒業した学校」とは言わず、「卒業したことを想起させる学校」と言っているようなものです。変な意図を勘ぐらざるを得ない。
 ──2つ目の「想起」は?
 昨年11月のG20バリ首脳宣言には〈核兵器の使用又はその威嚇は許されない〉との文言がありました。広島ビジョンでは〈ロシアを含む全てのG20首脳によるバリにおける声明を想起する〉となっている。今回のG7の首脳は現地でバリ宣言にサインしているのですよ。想起はおかしい。つまり、被爆地ヒロシマで核軍縮についてのバリ宣言を踏襲どころか、後退させてしまったのです。
 ──核をめぐって、ロシアについては問題にしていますね。

 バリ宣言に限定はなかったが、広島ビジョンではロシアに限定し、核の威嚇を許さないとしている。一方で、核抑止の正当化が明記され、G7の核威嚇は許されることになっている。被爆者の主張、努力に反しているし、これではロシアは説得できない。
■核抑止力は核ではなく被爆者
 ──ロシアをどう説得すればいいのですか。
 ロシアの核使用はダメ、でもG7の核はよいでは平行線です。最低限、こちらも核を使わないから貴国も使わないように求めるべきです。
 ──-難しそうな交渉です。
 欧米各国はできないから、主導できるのは唯一の被爆国であり、NATO(北大西洋条約機構)にも加盟していない日本です。欧米とロシアの両方に核不使用をお願いするのです。その際に、核の「先制不使用」を宣言している中国とインドの力も借りるのです。
 ──最近、「核による核抑止」が幅を利かせているようにも見えます。
 核抑止力を持つのは核ではなく、被爆者自身です。被爆者が自分の体験を基にして、「こんな思いは他の誰にもさせてはいけない。だから、こんな兵器があってはいけないんだ」というのは何よりも説得力があります。
  ──被爆者は年間1万人ペースで減少し、12万人を割っている。説得力がある生の証言に接する機会も減っていく。
 被爆者が少なくなると、“被爆者による核抑止”も弱まってしまいます。力による解決を信じる人も多く、核の使用や保有を望む勢力が台頭すれば、それこそ、核戦争が現実味を帯びかねない。力ではなく、法や対話により解決する努力がますます重要になってくる。
 ──法や対話による解決に向けた“手がかり”はあるのですか
 それが国際法上の効力を持つ核兵器禁止条約です。核兵器廃絶に向けた法的手段はすでにあるのです。少なくなったとはいえ、被爆者が健在なうちに核兵器禁止条約を前に進めるべきです。
 ──日本政府は核保有国との「橋渡し役」を繰り返し口にしますが、米国の「核の傘」に依存している上、締結国会議にオブザーバーとしての参加もしようとしません。
 唯一の核被爆国である日本が率先して自ら批准し、核保有国に対して批准を促す。それが橋渡しなのです。核保有国の側に立つのが現実的だとして、核禁条約を無視するのは明確に被爆者の意思に反します。
 ──被爆者の声は岸田首相に届きますか。
 広島サミットの岸田首相の対応に被爆者から失望の声が上がっているのは紛れもない事実です。松野官房長官は反論したようですが、まずは、しっかり反省してほしい。今回、G7首脳を原爆資料館に案内したのですから、現職の閣僚にも足を運んでもらい、内閣として被爆の実相を直視することが世界へ発信する上での出発点です。これはすぐできます。私は米国に長くいましたが、原爆の話をするとパールハーバーが先だろうと言われた。原爆資料館の視察も含め、工夫を重ねながら粘り強く対話を続け、核廃絶についての理解を広めてきました。諦めてはいけない。岸田首相には一縷の望みをかけたいと思います。
(聞き手=生田修平/日刊ゲンダイ)
▽秋葉忠利(あきば・ただとし) 1942年、東京都生まれ。東大数学科卒。米マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号取得。90年から衆院議員を3期務め、99年から3期広島市長。「数学書として憲法を読む」など著書多数。2022年度「アハマディア・ムスリム平和賞」受賞。

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