福聚講

正和四年三月二十一日、後宇多法皇が「宸筆弘法大師傳」（国宝、大覚寺蔵）をお書きになっています。
「第八祖大日本國贈大僧正法印大和尚諡弘法大師者、讃岐國多度郡人也、法諱空海、遍照金剛號、大唐青龍寺恵果和尚之付法也、以大日如来七葉相承、両部大法、漢梵無差悉以傳受、猶寫瓶、夫両部秘法者、諸佛之奥蔵、即成之經路也、訶陵新羅之英傑、劔南北方之俊才、各得一果（注１）、不能兼聴、亦以両部灌頂、雖授義明供奉（注２）不流法水、是知、法師如来正脈、獨屬大師一流而已矣、大師生在父母家、童稚夢見與諸佛語、造佛作禮為事、志學随石淵贈僧正、受虚空蔵法呂、入心念持、名山勝地、悉地速成、年廿出家、二十有二受具足戒、乃佛前發誓、感得大毘盧遮那経於日本國高市郡久米東塔下、渡海大願、於是萌中心、蓋是和尚鉤索之加持、三蔵師負之因耳、遂乃延暦廿三年、飛孤帆於松浦之波、浴五瓶於蓮臺之月、乃和尚告曰、汝在西地、接我足吾也東生入汝室、莫久留、吾在前去地（注３）、先投金剛杵、卜南山勝地、則以大同元年帰朝、録請来秘教、上表以聞、自爾以降、一人三公、接武耽翫、
四象萬民稽首鼓篋、神泉祈雨、神龍現形、金閣震居、金色放光、或日輪夜照、蘇生于途、難思加持力、非楚竹所記、弘仁十四年、勅許東寺、永為密教場、帝經四朝、奉為國家、建壇修法、五十一箇度、鎮護之基、無不大師加持力者乎、天長九年、住紀州南山、深厭穀味、専好坐禅、此地去弘仁七年、表請為入定處矣、承和二年三月十五日、告諸弟子等、曰、吾擬入定、來廿一日寅刻、吾入定間、往兜率他天、而待慈尊、五十六億餘之後、必慈尊御供下生、可問吾先跡、未下之間、見微雲管、可察信否、是時有勤、得祐、不信者不幸、期日爰至、乃結跏趺坐、奄然入定、春秋六十二、夏臈四十一、慧炬秘法、法雷猶春、肉身不壊、松檟封閉、運歩泣恩、于嗟悲哉、
正和四年三月廿一日」

（注１、 恵果の弟子に、剣南の惟上、河北の義円（金剛一界を傳受）、新羅の恵日（大師の恵果和上碑文には「新羅の恵日、三韓に渉りて頂戴す」とあり）、訶陵の辨弘（胎蔵一界を伝受）等がいるが密教辞典には正嫡は大師と義操（唐）とする。）
（注２、大師の「恵果和上の碑」に「訶陵の辨弘は五天（印度）を経て接足し、新羅の恵日は三韓を渉って頂戴す、剣南にはすなわち惟上、河北にはすなわち義円、風を欽うて錫を振ひ法を渇ふて笈を負ふ（恵果の教えを求めて旅に出た）、もしまた印可紹接せる者は義明供奉其人也。不幸にして車を求るは滿公これにあたれり（不幸にして恵果より先に死んだのは義満である）・・」）
（注３、大師の「恵果和上の碑」に「汝は西土にして我が足に接す、吾は東生して汝が室に入らん、久しく遅留すること勿れ、吾前にあって去らん」と恵果和上がおしゃったと有ります。）