2020年10月15日

本で読むクルーズ

船旅のことを書いた本の代表作は「どくとるマンボウ」だと思っていた。

マンボウ先生が、お母様の斉藤輝子さんとクイーン・エリザベス2に乗った話など、面白く読んだものだ。


なんと、その時のクイーン・エリザベス2のテーブルには、この本「女王陛下の阿房船」の著者阿川弘之夫妻や平岩弓枝夫妻など、作家グループが居たそうだ。

阿川先生は別の時に狐狸庵先生(遠藤周作)ともクイーン・エリザベス2に乗っている。

海軍出身の著者は、船に詳しいし特別な思いがある。
ホランドアメリカのロッテルダムには毎年のように乗船して、クルーや乗客とも顔なじみだったそうだ。

今は亡きロイヤルバイキングスターの展望室から、戦争中やその後を過ごした揚子江を、 特別な思いで眺めたりしている。

この時代(1970年代から80年代)のクルーズ船には、第二次世界大戦中に各国の海軍にいた人たちが、船長や航海士、乗客にもいたそうだ。

そういう人同士はお互いの事情がわかって、親近感を示したり複雑な思いを持ったり。
その微妙なやり取りが書けるところが、当事者ならではだと思った。

客船クルーズは戦前からの長い歴史を持つ、本物の優雅な旅行方法だったんだとよくわかる。

クイーン・エリザベス2の部屋係は、初代のクイーン・エリザベスから船に乗っているベテランで、
「最近の船は政府の規制で、壁や家具やじゅうたんに全部不燃材を使っていて、 たいそう安っぽい。かつての大西洋客船は本当に豪華で素晴らしかった。 今とはまるきり格が違う」と語ってくれたそうだ。

著者と一緒に船に乗った人たちは皆、クルーズが大好きになって、次の回にも同じメンバーが登場する。

遠藤周作と同室で船旅する前や最中のやり取りなど、狐狸庵先生はユーモアエッセイの著者とは大違いの人物に描かれていて、その意外さが面白い。

ゲラゲラ笑ったり、へーーーー、と感心したり。
久々に夢中で読んだ本だった。

もっと読みたいな。

この本を読んで見つけた他の船の本

柳原良平「船の本」シリーズ

筋金入りの船キチガイぶりに、思わず笑ってしまう。
日本の各船会社の違いもよくわかります。

平岩弓枝「幸福の船」


遠藤周作「天使」

短編集の中に、かつて住んでいた中国大蓮をクイーン・エリザベス2で再訪した時のエッセイ「クワッ、クワッ先生行状記」がある。

クワッ、クワッがなにを意味するかは、読んだらわかる。
お嬢さん(=阿川佐和子)も、ちょっとだけ登場する。

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