2022年4月より成人年齢が18歳に引き下げられた。

以下条文

(成年)

第四条 年齢十八歳をもって、成年とする。

(未成年者の法律行為)

第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

 

以前、17歳又は18歳の学生が、高校を卒業し大学に入学するとき下宿の家を借りにきた。

2022年3月までは、未成年であるためアパートを借りる際の方法は二つ。

①親が借り子が住む。

②子が借り親が同意を与える。

今回18歳は晴れて成人となったため、第4条により立派に単独でアパートを借りれるわけだ。

言い換えるなら、大人なので一人でアパートを借りるような法律行為ができるようになった反面、責任もすべて自分で被り民法第5条2項のように簡単に取り消すことができなくなったわけだ。

 

そこで家を借るとき、ノーペナルティーで引き返すデットラインを書いてみたい。

 

家を借りる流れは概ね次の通りだ。

1 ネット等により自分の住みたい物件を探索

2 不動産業者にアポを取り実際に物件を内検(現在はVRやyoutubeを使ったバーチャル案内もあるが、こういったものは良いところしか撮影しないので注意)

3 物件を申し込む&入居審査

4 重要事項の説明を受ける(本来は対面により宅地建物取引士による説明だが、現在はリモートでも可)

5 契約書に署名捺印(紙の契約書が主流だが、電子契約書へ移行しつつある)

6 決済金の振り込み

7 鍵の引き渡し

契約完了お疲れさん!新生活を楽しもうとなる。

 

 

アポイント&内覧

まず不動産業者の仲介手数料は成功報酬である。

簡単に言えば成約しなければ1円にもならないので1,2の段階では当然無料。

しかしながら、自分の住みたいイメージも沸かず、タダなのでなん十件も案内してもらうのはご法度であり無意味。

特に繁忙期にこんな人がいたら、たくさん見た物件のいいとこだけを集めイメージし無理難題を言うし、費用対効果が上がらないため放置されますよ。

具体的に、まずは①賃料、周辺環境、距離、築年数など優先順位を決められたい。

「新しくて、駅から近くて、環境もよく、安ければ安いほどいい」なんて真顔で言う方がいますが、そんな物件はあり得ません。

 

 

申し込み&入居審査

具体的に条件を絞り、内覧して気に入ったものがあると、3の段階になり入居申込書に記入します。

ここで物件を押さえる為、または借りる意思を明確にするため入居申し込み金を要求されますが、現在では入居申し込み金を預からない指導があります。

しかしながら、本当に借りる意思があるかのバロメーターで求められることもあります。

ここで注意していただくことは、申込金には何の法的効力もなくキャンセルしても没収されるいわれは全くありません。

ちなみに入居申し込み時には、三つのパターンがあります。

1 借主+保証会社

2 借主+人的連帯保証人

3 1+2

これはどれがいいとか悪いとこではなく、貸主の方針ですね。

 

次に本当に契約希望者に借りていただくかどうかの入居審査を行います。

この入居審査を通過すると、初めて契約への第一歩が発生します。

ここで引き返してもノーペナ。

 

 

重要事項説明&契約締結&決済

いよいよ4の重要事項説明に入ります。

日本の民法は「意思主義」を取っており、本来は書面は不要で貸主借主双方の合意があれば契約は原則成立します。

不動産の場合は原則通りではなく例外の方であり、宅建業法により重要事項を説明しなければならない決まりがあります。

逆に言うなら、この重要事項説明がなければ、契約書に署名捺印があっても契約自体は成立しません。(対貸主に対しては別だけど詳細は省略)

尚、意思主義の場合、契約書の存在が契約の成否のカギを担っているのではなく、あとから言った言わない聞いてないを防止するためのものであります。

この重要事項説明は宅建業法35条に規定があり、契約が成立するまでに説明しなさいと規定されています。

ですので意思主義とか難しいことはこの際気にせず、順序として重要事項説明→契約書に署名捺印となることを覚えておきましょう。

これに反する契約は、もめたときに貸主と仲介業者で解決してもらいます。

 

実務上では対面の場合、不動産業者の店舗で重要事項の説明を受け、契約書と決済金請求書を渡され、帰宅後に契約書に署名捺印をし決済金を振り込むという形になります。

リモートの場合は、案内、申込書記入後、郵送にて重説が送られてきてパソコン越しに説明を受け、後日契約書は署名捺印の後返送または電子契約書で契約締結、決済金送金となります。

 

 

引き渡し

ここまでくればあと一歩で契約完了となります。

最後の課題はなにか?引き渡しです。

つまり借りた部屋のカギを貰うということです。

 

 

デットライン

では、ノーペナルティーで引き返すことができるデットラインはどこか?

民法521条以下の契約云々の記載があるが、先程不動産の場合は重要事項説明がないと話が進まないとのべた。

よって重要事項を受けていない限り、申し込みの撤回については何ら制約がない。

 

最近は少なくなったが、売買の規定(民法557条参照)を利用し申し込み後、貸主の承諾が下りているので申込金が手付金に代わり申込金は没収というのがあった。

このロジックは理にかなっており、売買契約の場合には売買価格の1割没収となるが、賃貸の場合は該当せず手付金ももらわないという指導がある。

 

また557条にはこうある。

「買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。」

流れを見ると、

手付金の交付→契約の履行の着手→契約締結となる

とするなら契約書に署名捺印した場合、既にデッドラインは越えており、手付金以上の段階になっているということだ。

例を挙げるなら、仲介手数料、礼金、解約予告違反などの出費を覚悟せねばならないということ。

但し、賃貸物件においては鍵の引き渡しがあり、実務上契約書が持ち回り(当事者が一堂に会さず郵送で順送りにすること)になることが多々ある。

例えば、年内に推薦入試で合格が決まっており、大学が4月からなのでかなり早い段階での契約書の署名捺印の場合があげられる。

この場合は、現代の考え方では引き渡しが行われておらず、契約の撤回の可能性が大いに残る。

また反対に契約書の書面捺印がない場合であっても、持ち回りの性質上、鍵の引き渡しが行われておりかつ契約開始日が迫っている又は経過している場合はデットラインを越していると考えられる。

この当たりはケーズバイケースで考えられたし。

 

 

事前予習&困ったときの為に

我々の所属団体である宅地建物取引業協会では、初めてのの一人暮らしガイドブックなるものが発行されておりそちらも参照されたい。

参考までに表紙と目次を載せておきます。1冊@50円。

中々よくできた冊子で購入は↓

 

無料のweb版は↓

https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/themes/zentaku2020/assets/pdf/products/detail6/detail.pdf

参考にしていただければと。

 

また不動産の無料相談は↓

 

相談員をやっていたが、よく感じたのは時すでに遅しの段階で相談に来られます。
おかしいと思ったら印鑑は押さずに早めに相談しましょう!!

 

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