これは、本当にあったお話です。
卓也さんは、愛知県の三河にある実家で、三世代同居をする20代の大学生。ご家族は仲がよく、卓也さんが運転免許を取得してからは、家族に頼まれれば、心安く駅などへの送迎もしていました。
「自分の車を買うまでは、おじいちゃんの車に乗っていましたが、実は、その車が結構いわくつきで…」
まずは、卓也さんが、白バイ隊員だった父親を、職場まで送った際のこと。
勤務先の警察署までは、ひと気のない山間のルートだったそうで、途中、卓也さんの父親が、道の片側を指差してこんなことを言ったそうです。
「ここだ、ここだ!この小学校と中学校、随分昔に廃校になったんだよ。でも、今は心霊スポットとして有名らしいぞ」
「オヤジ~、気持悪いこと言うの、やめてくれよ~!」
怖がる卓也さんを見て、父親はニヤリと笑ったといいます。
「行きはまだ明るかったんです。それが、父を署に送り届けたら、急に日が落ちたみたいな感じで、帰りはもう真っ暗。街路灯もほとんどないし、怖いのなんの、焦りましたよ」
卓也さんは恐怖を払いのけるために、かけていた大好きな宇多田ヒカルのCDのボリュームを上げました。
卓也さんが乗った車が、その廃校の前を通り過ぎようとした、まさにその時。
「いきなりCDが止まって、ザザザーッと、凄いノイズが響き渡ったんです。もう、心臓が止まるかと思いました。ところが、そこを通り過ぎたら元に戻って、また、宇多田ヒカルが歌い始めたんです。ホントに不思議で…」
「おじいちゃんの車」のエピソードをもう一つ。
それは、卓也さんが、深夜、岡崎方面へ走っていた時。その国道も、夜間はほとんど車の往来も人通りもなかったそうです。
「車一台、人っ子一人いないのに、赤信号に引っかかって、タイミング悪いなぁって。もちろん、渋々止まりましたよ」
ところが、「ふと横を見たら、いつ現れたのか、スーツを着た男性が立っていたんです。しかも、犬を連れていて、ビックリしましたよ」と、卓也さん。
深夜にスーツ姿で犬の散歩とは、それだけで不可解ですが、さらに…。
「その男性も犬もピクリとも動かないんです。僕が信号待ちをしているのですから、渡れるはずなのに、ピクリとも動かない。ゾッとしました」
そして、次の瞬間、またもや車のCDが止まり、ザザザーッと大音響のノイズが響いたそうです。
その後、赤信号が青になり、パニック寸前の卓也さんが車を発進させる際、再びその男性を見ると…。
「何と!無表情の男性の首だけが、ガクガクと揺れ動いていたのです。もう、ギャーッと叫んで、アクセルを思い切り踏みました」
深夜にスーツ姿で犬の散歩をしていた男性は、その交差点で、出勤前の散歩中、事故で亡くなった方なのでしょうか、それとも…。
●おわりに~感謝とともに
昔は、涼を呼ぶ夏の風物詩となっていた百物語。深夜に集った参加者が、一話語る度にロウソクの灯を吹き消し、最後の一話を語って百本目のロウソクを消すと、怪しき物事が現れるとか。時には、「九十八話で止めた方がいい」とも耳にしております。
しかし、私がこの「タマムスビ百物語」を綴ったのは、決して怪談話というつもりではなく、皆様それぞれが、今世限りではない「魂を宿す存在」であることを、お伝えしたかったからです。
そして、この秋より、一日一話綴ってまいりました「タマムスビ百物語」も、本日、第九十九話、終了の日を迎えました。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、「第四十三話」が抜けております。お話のご用意はありましたが、なぜだか抜け落ちました。つまり、実際には九十八話となりました。それも、百物語を無事終了させるための、大いなる存在のおはからいかもしれません。
最初からお読みいただいた皆様、長い間、おつきあいを、ありがとうございました。
途中からお読みいただきました皆様、このブログは、しばらくは残ると思いますが、アメブロさんの更新規定の関係で、いずれ削除となるかもしれません。その前に、他のお話もお楽しみいただければ幸いです。
では、皆様の魂が安らかで、今世の目的にかなう日々をお過ごしいただけますことを、お祈りしつつ…。