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『心』 姜 尚中著

著者、姜 尚中は政治学が専門の大学教授なので、小説家が書いた本とはどこか趣が異なっていると思いながら読みました。

初出は、2011年で東日本大震災があった年から書かれたものを大幅に、加筆・修正したものを、2013年に出版したようです。

『心』 あらすじと感想

姜 尚中氏がどのような経歴を持っているのかも知らないまま、著書が書かれたものを初めて読んだので、かなり素直に読むことが出来ました。

「心」と言う題名もさほど気にとめたわけでもなく読み進めましたが、漱石の「こころ」とは経緯は異なっているものの、友人と同じ女性を好きになったこと書かれていて、夏目漱石の小説を思い出していました。

読後、著者について調べていたところ、漱石についての講演会を聞いたと言う記事を見いだし、漱石に傾倒していたのだろうという思いを抱きました。

『心』 あらすじ

ある書店のサイン会に大学生の西山直広という青年が、読んでくださいと友人の与次郎が死んだことについての問いを、書いた手紙を置いていきました。

その手紙から始まるメールのやりとりが、この本の内容になっています。

最初は死の意味について書かれていたが、友人は死ぬ間際にドイツ文学者である父を持つ萌子というなの帰国子女への思いを書いた手紙を託され、自分はどうしたらよいか分からないので、 直広 の思うようにしてほしいと言われて、迷っているた2週間後に弥太郎は死んでしまったようです。

萌子は素敵な女性で、入ってくるなり「演劇部」を立ち上げ、 直広 も与次郎に誘われて演劇部に入り、萌子とも親しくなって言ったと言います。

そんな中で友人と共に萌子を好きになっていくのですが、病気の与次郎に打ち明けられ、手紙を渡さないうちに与次郎がなくなってしまったことが、 直広にはかなり辛い思い出になってしまったようです。

演劇部を立ち上げ与次郎が元気だったころ、萌子の脚色でゲーテの『親和力』を演じることになっていたが、与次郎が亡くなってしまったので、現代劇に翻案し追悼講演をすることになり、 直広が主役になることになったのでいろいろ教えてほしいとメールが来ます。

しかし、この演劇は公演されることはありませんでした。

「東日本大震災」により、東北は津波と原発事故によるこの世の破滅を見るような状態となってしまったのです。

その現場のリポートに出た私は、 直広に出会うことになります。演劇部の仲間の中学校校長の娘の倫子の実家が津波で飲み込まれ、両親とも行方不明だと言うことでした。

次の日、倫子の父親の遺体が見つかったという連絡を受け、壊れかけた協会に行くと、棺の周りにいる友人とは離れた最後列にいる 直広を見つけ、葬儀に参加して帰ってきました。

その1週間後直広からメールがきて、津波にのまれた方の遺体を海から引き上げるボランティアをやるつもりだと書いてありました。

「死ぬ」ってなんだろう、「死んだ人」ってなんだろう、生きている人とどう違うのだろう、と言うことをもう少しちゃんと知りたいと思ったのですと、書いてありました。

遺体引き上げは、精神的に辛く吐き気がするようでしたが、ものすごく沢山のことを学び、「死」は穢れたものでも忌むべきものでもなく、「生」を輝かせるものだと気づいたので、自分の力でなんとかできるようになりつつあるというような手紙が届きます。

遺体引き上げ作業が打ち切られ、大学に戻った 直広 からメールが来て、「親和力」の後日譚のようなもので演劇をすることにしたと書いてきました。

それに対して、「自然」と「人間」がテーマで震災や大津波を伴った水が大きなキーワードではないかと返事を書きます。

芝居の案内状が来て、夕闇の迫る大学の構内に着くと、篝火の中に人影が浮かび演劇が始まりました。

親和力で意気投合した直広と萌子は輝いて見えました。

その後、萌子はドイツの幼なじみの恋人に会いに行き、直広の元に戻ってきました。

息子が、「末永く、元気で」と言った言葉を、直広に送ろうと書いた最後の言葉は贈ることなく、「心」と言うフォルダにしまわれました。

『心』 感想

息子を亡くした著者は、同年代の直広に出会った時に一瞬息子を思い出し、もう1人の息子と思えるような思いを抱きながら、長いメールのやりとりをすることになります。

読後、夏目漱石の小説について書いていたという、著者は夏目漱石の。「こころ」をどこかで意識しながら書いたのではないかと思いました。

漱石の「こころ」の主人公は、同じ女性を好きになり、抜け駆けてしまったためにその友人が自殺をしてしまったことを一生悔いながら生きますが、直広は、病気で友人を亡くすという違いを超えて、それらのことをすべて受け入れて、萌子と一緒に生きようと決心するという未来に向いた生き方をしようとしていることは、読者に明るさを感じさせてくれます。

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