2022-01-15

『紅の豚』の原作が収録されている『飛行艇時代』は映画版を深く理解するためのマニアック過ぎる豆知識・裏設定が満載で素晴らしい!


スタジオジブリの映画作品『紅の豚』には原作が存在しており、それは書籍『飛行艇時代』と『宮崎駿の雑想ノート』に収録されています。雑想ノートは宮崎監督の趣味全開、ギッチギチの密度で展開されるマニアックな戦記マンガ集で素晴らしいのですが、『紅の豚』を深く知りたいのならば断然『飛行艇時代』がオススメです。




ですので今回は、『飛行艇時代』の魅力を『紅の豚』の豆知識・裏設定とともにご紹介します。

まずこの書籍のメインコンテンツとなるのは『紅の豚』原作となる「飛行艇時代」なのですが、なんとこの作品は20ページにも満たない作品であり、すぐ終わってしまいます。しかし、一コマの密度が半端ないため、それを感じさせない出来となっています。

「飛行艇時代」の1ページ。密度が濃いです。

他にも、ジーナが存在しなかったり、カーチスの名前がドナルド・チャックだったり、ポルコのサボイアS.21試作戦闘飛行艇に「フォルゴーレ号」という愛称が付いていたりと、細かい差異があり、その点も面白く読めます。

原作のカーチスはこんな感じ
なんかちょっとだけ違う…。

そしてファン必見!?ショートヘアにしたフィオ!


そして残りの50ページ超は非常にマニアックな『紅の豚』の関連資料が続きます。ポルコのサボイアS.21に関連して、イタリア軍用機のモノコックボディの写真や、サボイアS.21の三面図(それも原作版のエンジン、劇場版のエンジン、劇場版の改装後のエンジンがあるという徹底ぶり)が掲載されています。


もちろんカーチスの愛機「カーチスR3C-0」やマンマユート団の「ダボハゼ号」も、三面図はありませんが、機体構造の考察、原作版と映画版の描写の違いなど、マニアックに語られています。

登場人物の人物設定もあります。ポルコの生まれ年が1893年であることが書かれているため、これに映画内でのポルコが「1910年の時に17歳だった」と明かしている点を合わせ、さらに作品の舞台となる1920年代末期と加えれば、おのずとポルコの年齢も絞れるようになっています。(あれ?意外と若い…!?)


ちなみにマンマユート団他の空賊たちは、第一次世界大戦後の不況により、飛ぶことを断念せざるを得なかったパイロットたちが空への思いを捨てられず、「空中海賊に身をやつしてでも飛びたい」とあのような姿になったそうです。そう考えると、ほんの少しだけ(本当に少しだけ)気の毒ではありますね。


映画では描かれていない空賊連合の設定も載っています。


実はマンマユート団は空賊連合には加盟していないことや、連合の作中時の会長は真ん中のAであることが明かされています。

後半は濃密な文章が展開されます。第一次世界大戦中である1914~1918年のアドリア海における戦闘飛行艇の戦果を追った「アドリア海航空戦」、『紅の豚』の舞台である1920年代に盛んに行われたスピード競技「シュナイダー・トロフィー・レース」(映画版ではカーチスの愛機が勝ち取ったタイトルだと言及されていました)の記録を追った「冒険者たちの水上バトル!」、宮崎監督の飛行機オタクっぷりがよぉ~く分かる「宮崎さん 模型と飛行機を語る」、宮崎監督を中心としてサボイアS.21をプラモデルで復元しようとする計画や、ラジコンでサボイアS.21を作り上げた方などを紹介した「二馬力飛行倶楽部」などなど…とにかく非常にマニアックで濃いぃな内容になっています。

このように、『紅の豚』の世界を深く知りたい、楽しみたい方にはピッタリの一冊ですので、是非読んでみてください!





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