2022-01-21

押井守監督、実はジブリに勧誘されていた!(喧嘩して決裂)


名クリエイターであり、ジブリに対しての歯に着せぬ発言が面白い押井守監督。



とはいえ、これだけハッキリ言えるのは宮崎監督や鈴木プロデューサーと懇意だからこそであり、嫌いだからというわけではないようです。そして懇意だからこそ行われていた意外な話し合いが、当ブログではもはや名著として扱っている『誰も語らなかったジブリを語ろう』で明かされておりましたので、ご紹介します。

それは『耳をすませば』について語る章で明かされました。以下、その該当部分です。

――監督はジブリのアニメーター、近藤喜文さん。宮崎・高畑両氏以外が監督した初の作品ですよね。原作は柊あおいの同名漫画です。

押井 近藤さんが『中学生日記』が大好きで、これを作ったと聞いているけど。

――そもそも、なぜ近藤さんの名前が浮上したのでしょう。

押井 あの時期はきっと、宮崎・高畑に続く三番目の監督を作り出そうとしていたんだと思う。実際、僕も声をかけられてたから。

――あら、それは面白いですね。

押井 そりゃそうでしょう。スタジオを維持するためには毎年毎年、長編アニメーションを作っていかなきゃいけないわけで、監督がふたりしかいないジブリにとっては相当に大変なこと。1本作るのに最低でも2年はかかるんだから、当然、第三の監督がマストだと考えて探し始めたんだよ。細田守にも声がかかったし、僕も2回くらい声をかけられた。もちろん、決裂しちゃったけど(笑)。

――どんな作品で声がかかったの?

押井 1本は『アンカー』という企画。声がかかった時期は覚えてないけど、高校生の話だった。リレーの最終走者のことだから。
 宮さんの別荘で、宮さん、高畑さん、トシちゃん、(宮崎)五朗くん、そして僕かな。その面子で企画会議をやったんだよ。宮さんは「俺は絶対口出ししない。アンタの好きなようにやっていい」とか言っていたけど、その時点でもう「俺ならこうやる」って言い出してるから(笑)、信用なんてできるわけがない。で、延々と議論して、最終的には決裂。最後は確か、高畑さんと僕の怒鳴りあいだった。


押井監督、ジブリへの参加を打診されていました。そして決裂していました(笑)。企画内容は押井監督が得意とするファンタジーやSFではなく高校生の話であったということは、おそらく系統としては『耳をすませば』に近い感じの青春モノだったのでしょうか?

決裂した議論の内容は詳細に述べられておりませんが(高畑監督との怒鳴り合いの理由は書かれています)、ひとつ私から言えるのは、これはおそらく押井監督だけが偏屈だったわけではないということです。実際、宮崎・高畑の両監督は非常に癖のある性格を持っていることがジブリ内部の人間から少なからず述べられており、下の人間が潰されることも何度もあったようです。

押井監督が述べた「宮崎監督の『俺は絶対口出ししない』なんて信用できない」という言葉も決して考え過ぎなどではなく、ここで名前が出されていた細田守監督がかつてジブリと関わり宮崎監督の“口出し”によって潰されかけていた事実があるために信憑性がある話なのです。


とはいえ、もし押井監督がジブリへ参加していたら、それが成功したにせよ失敗したにせよ、ジブリの作品としては非常に異質なものになったでしょうし、それは見てみたかった景色です。

また細田守監督の場合は、彼の作風はジブリとやや似たテイストも感じますので、作品の相性は良かったように思います。彼もまたジブリで作品を作っていたら…と思うと少し残念な結果になりましたが、今となっては細田監督もジブリを離れた場所で成功していらっしゃるので、これで良かったのかもしれません。





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