人間が行うことだから、ミスは起こるのかもしれませんが、でも、最高裁判所の判例集での誤字脱字や句読点の間違いがあったとか、しかし、中には表現の一部が欠落するなどのミスもあったそうです。この国は一体どうなっているのでしょうか?
最高裁判所は、重要な憲法判断が行われた判決などを掲載している「判例集」に、判決文の原本と異なる誤った記載が100か所以上見つかったと公表しました。
「判例集」は、法律の研究やほかの裁判にも引用される公式資料で、最高裁は「重く受け止め、しかるべき調査を行う」としています。
最高裁判所によりますと、誤りが見つかったのは、重要な判決などを掲載する「判例集」と呼ばれる資料で、昭和23年から平成9年の間に出された12件の大法廷判決について、原本と異なる表現が合わせて119か所見つかったということです。
大半は、誤字脱字や句読点の間違いですが、中には表現の一部が欠落するなどのミスもありました。
このうち「死刑制度は憲法に違反しない」という判断を初めて示した昭和23年の判決では、憲法の解釈について触れている表現の一部が抜けていました。
また、アメリカ軍の駐留が憲法に違反するかどうかが争われた「砂川事件」の判決や、国が教育に介入することが憲法違反かどうかが争われた裁判の判決でも、文章の一部が原本と異なる表現になっていました。
さらに、最高裁がホームページに掲載している判決の記載でも、合わせて248か所の誤りが見つかったということです。
「判例集」は、法律の研究やほかの裁判でも引用されるため、研究者からは「信頼性が揺らぎかねない」という声も出ています。
最高裁は「利用者及び国民の皆さまに大変申し訳なく思っている。重く受け止め、しかるべき調査を行う」としています。
判例集記載ミスの詳細
判例集の誤りのうち、判決文の一部が抜けていたり、別の表現になっていたりしたのは、いずれも重要な憲法判断などが示された著名な判決です。
このうち「死刑制度は憲法に違反しない」という判断を初めて示した昭和23年の判決では、憲法の解釈について触れている部分で「公共の福祉に反しない限りという厳格な枠をはめているから、もし」という一文が抜け落ちていました。
昭和32年に文学作品での性的な表現をめぐり表現の自由の在り方などが争われた裁判の判決では「個人的にも社会的にも変化を生ずる」という一文から「社会的にも」というひと言が抜けていました。
昭和34年、アメリカ軍の駐留が憲法に違反するかどうかが争われた、いわゆる「砂川事件」の判決では、異なる表現になっている誤りが2か所見つかりました。
1つは田中耕太郎裁判長の補足意見の部分で「わが国に対する侵略を誘発しないようにするため」という表現が「わが国に対する侵略を誘発しないため」となっていました。
もう1つは別の裁判官の補足意見で「安全保障措置が効力を生じたと認められた時に」という表現が「安全保障措置が効力を生じた時に」となっていました。
また昭和51年、国が教育に介入することが憲法違反かどうかが争われた裁判の判決では、教育基本法の条文にある「不当な支配」などの解釈に関する一文で「そのような支配と認められる限り」という表現が「そのような支配と認められない限り」と、反対の意味にもとれる記載になっていました。