猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

THE FIRST SLAM DUNK

2024-04-12 21:38:18 | 日記
2022年の日本映画「THE FIRST SLAM DUNK」。

沖縄で生まれ育った宮城リョータ(声・仲村宗悟)には3つ上の兄・
ソータ(梶原岳人)がいた。幼い頃から地元で有名な選手だった兄の
背中を追うようにリョータもバスケにのめり込む。しかしソータは
海難事故で命を落とし、リョータ一家は神奈川に引っ越す。高校2
年生になったリョータは、湘北高校バスケ部で、桜木花道(木村昴)、
流川楓(神尾晋一郎)、赤木剛憲(三宅健太)、三井寿(笠間淳)たちと
インターハイに出場。今まさに王者、山王工業高校に挑もうとして
いた。

1990年から96年まで「週刊少年ジャンプ」で連載され、現在まで
絶大な人気を誇る名作バスケットボール漫画「SLAM DUNK」を
新たにアニメーション映画化。原作者の井上雄彦氏が監督・脚本を
手がけ、高校バスケ部を舞台に選手たちの成長を描き出す。2022
年12月3日の公開から23年8月31日の終映まで約9ヵ月のロングラ
ン上映となり、興行収入は国内歴代13位となる157億円を突破す
る大ヒット作となった。
私はバスケットボールのことはまるでわからないのだが、とてもお
もしろかった。一応昔コミックスも全巻読み、テレビアニメも全部
観ている。主人公は桜木花道だが、映画では宮城リョータとなった。
リョータは沖縄で兄のソータと共にバスケットに打ち込んでいた。
いつも公園で練習をしていたが、ソータは友人たちに誘われ船で釣
りに行く。もっと練習をしていたかったリョータはソータに「バカ
野郎!死んじまえ!」と泣き叫んだ。その後ソータは海難事故で死
んでしまう。母親、妹と共にショックを受けるリョータだが、バス
ケの練習は黙々と続けていた。
家族は神奈川へと引っ越し、リョータは湘北高校のバスケ部に入部
する。そして「絶対王者」と呼ばれている山王工業高校とインター
ハイでぶつかろうとしていた。バスケ用語など全くわからないのだ
が、おもしろく観られるのが不思議。選手たちの動き、試合の進み
具合と、滑らかで且つ緊迫感にあふれていて、日本のアニメーショ
ン技術はすごいと改めて思った。これは日本のアニメにしかできな
いのではないだろうか。湘北対山王の試合もだが、リョータとソー
タの心の絆もメインに描かれていて、それがいい。所々沖縄時代の
回想シーンが挟まれる。男子の兄弟ってこんな感じなのだろうな、
と思った。
花道は試合中に背中を痛めて顧問の安西先生(宝亀克寿)に交代させ
られるが、「あんたの栄光はいつだったんだよ。俺は今なんだよ!
」と言って試合に出る。花道が安西先生のほっぺたをむにーっと引
っ張ったり、顎をたぷたぷたぷとさせるお決まりのシーンもいい。
顧問の先生に向かって本当に無礼だなあ。そして安西先生の「諦め
たらそこで試合終了ですよ」というセリフも久しぶりに聞けて良か
った。これぞ「SLAM DUNK」の世界である。
バスケがわからないのに(わからないと何度も書いているが本当に
わからない)このおもしろさは何なのだろう。試合終盤はハラハラ
する。実際に試合を観ていたら「行けーっ!」と叫びたくなってし
まうのだろうな、と思った。ラストシーンも良かった。9ヵ月に及
ぶロングランも納得のおもしろさだった。ただ欲を言えば、花道の
声はテレビアニメと同じ草尾毅にして欲しかったなあ、と思った。

コメント (5)
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ラブレス

2024-04-07 21:42:12 | 日記
2017年のロシア・フランス・ドイツ・ベルギー合作映画「ラブ
レス」。

一流企業で働くボリス(アレクセイ・ロズィン)と美容サロンを経
営するジェーニャ(マルヤーナ・スピヴァク)の夫婦は離婚協議中
だった。夫婦には既にそれぞれ別のパートナーがおり、新たな生
活のため一刻も早く縁を切りたいと考えていた。2人には12歳の
息子・アレクセイ(マトヴェイ・ノヴィコフ)がいたが、どちらも
新生活に息子を必要としておらず、ある日激しい罵り合いの中で
息子を押しつけ合ってしまう。その翌朝、学校に行ったはずの息
子がそのまま行方不明になってしまい、彼らは必死でその行方を
捜す。

ロシアの鬼才、アンドレイ・ズビャギンツェフによる人間ドラマ。
一流企業で働くボリスと、美容サロンを経営するジェーニャの夫
婦は離婚協議中。12歳の息子アレクセイと3人で住んでいたマン
ションも、買い手が決まりそうになっていた。ボリスとジェーニ
ャは早く新生活を送りたいと考えており、そのことに気がついて
いるアレクセイの様子は元気がなかった。息子に関心のないジェ
ーニャはしょっちゅうスマホで恋人とやり取りをしており、息子
の世話にはイラつきを見せていた。
一方ボリスの恋人は既に妊娠していたが、彼の会社の経営者が厳
格なキリスト教徒のため、そのことを会社では隠していた。そん
なボリスとジェーニャはどちらがアレクセイを引き取るのかで揉
めていた。ジェーニャは息子を寄宿舎学校に入れようと考えてい
たが、ボリスは「子供は母親が引き取るものだ」とジェーニャを
非難し、、2人はいつも激しい口論をしていた。
離婚しようとしている夫婦が子供の親権で揉めるというのはよく
あることだと思うが、この夫婦は親権を押しつけ合っているのだ。
2人とも自分のことしか考えていないのが呆れる。激しい罵り合
いを聞いていたアレクセイのくしゃくしゃになって泣いている顔
は忘れられない。その後、学校からアレクセイが2日も登校して
いないという連絡をジェーニャは受ける。慌ててボリスに電話す
るが、彼は気のない返事しかしない。刑事がやってきて、最後に
アレクセイに会ったのはいつかとジェーニャに聞くが、彼女の記
憶はあいまいだった。
子供が2日も登校していないのに気づかない親なんているのだろ
うか。ボリスもジェーニャも本当にアレクセイに関心がないのが
よくわかる。刑事もそのうち帰ってくるかもしれないからと、あ
まり動こうとはしない。ロシアの警察はそうなのだろうか。日本
だと子供が行方不明になったら大きく報道され、捜査が行われる
と思うのだが。そしてアレクセイの捜索をメインで行うのは市民
ボランティアの捜索救助団体なのだ。ジェーニャとボリスはボラ
ンティア救助団体と共にアレクセイを捜すが、一向に見つからな
い。
ジェーニャは自分の母親の家を訪ね、アレクセイが来ていないか
聞くが、どうもジェーニャと母親は不仲なようだ。ジェーニャは
母親から愛情を受けて育っていないのが見て取れる。ジェーニャ
は妊娠したためボリスと結婚したのだが、母親は「あの時冷静に
なれと言ったのに。中絶して別れろと言ったのに」と罵り、驚い
た。帰り際、ジェーニャはボリスに「中絶すれば良かった」「あ
なたを愛しているから結婚したんじゃなくて、あの母親から逃げ
出したかった」と激昂する。
アレクセイは誰からも望まれずに生まれてきた子だったのだろう
か。アレクセイがかわいそうでたまらない。ある日警察から身元
不明の少年の遺体が発見されたから確認に来るようにと夫婦に連
絡が入る。しかしそれはアレクセイではなかった。ジェーニャは
「私はあの子を引き取るつもりだったのよ」と号泣し、ボリスを
叩く。ボリスはへたり込んで涙を流す。夫婦が親らしさ、人間ら
しさを見せた唯一のシーンだったと思う。子供が行方不明のまま
なのと、死んでいることがはっきりするのと、どちらがマシなの
だろう。寒々しい雪のロシアを舞台にした胸をえぐられるような
重たい映画だった。


良かったらこちらもどうぞ。アンドレイ・ズビャギンツェフ監督
作品です。
父、帰る
裁かれるは善人のみ


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聖なる復讐者

2024-04-02 22:14:39 | 日記
2022年の韓国映画「聖なる復讐者」。

クリスマスの朝、知的障害のある青年・ウォル(パク・ジニョン)が
屋上の貯水槽で無残な死体となって発見される。アルバイト先の監
視カメラには、殺害された夜、不良グループに絡まれるウォルの姿
が残されていた。ウォルの双子の兄・イル(パク・ジニョン/2役)は、
自分とは違って優しかった弟を殺した人物を追い、そして事件の真
相を探るため、不良メンバーのいる少年院に自ら入り、復讐の機会
をうかがう。

逃げた両親の借金返済と祖母を養うため、立ち退かせ屋として金を
稼ぐ18歳のイルと、知的障害を持ち笑顔を絶やさない双子の弟ウ
ォル。クリスマスの朝、ウォルが屋上の貯水槽で死体となって発見
される。死体には無残な暴行の痕があった。前夜のコンビニの監視
カメラには、不良グループに絡まれるウォルの姿が映されていた。
イルは弟を殺した犯人グループを見つけ出し、暴行事件を起こして
犯人のいる少年院へと入り込む。グループのリーダー・ジャフン
(ソン・ゴニ)はイルの執念に驚く。
イルは闇バイトをし、ウォルはコンビニでバイトをしている。ウォ
ルは小学校中学年程度の知能だと言っていたが、それでコンビニバ
イトができるのだろうかと思った。ウォルはクリスマスが大好きで、
クリスマスを心待ちにしていた。何度もイルに「イル、クリスマス
キャロルを歌おうか」と言っていたが、イルは「早く寝ろ」と言う
だけ。イルはそれほどウォルを大切に思っている様子には見えなか
ったが、さすがに殺されたとなると復讐心が芽生えてもおかしくは
ない。祖母もウォルの後を追うように死んでしまう。
少年院にはイルの事情を知っている教官でカウンセラーのスヌ(キ
ム・ヨンミン)や暴力や虐待を平気で行う「狂犬」とあだ名された
教官のハン(ホ・ドンウォン)などがいて、イルの復讐はなかなか機
会がない。スヌはイルに何度も復讐をやめるように諭していた。少
年院の院生たちにイルが何度も「市営住宅のくせに」と言われてい
たが、韓国では市営住宅に住む者は蔑まれているようだ。日本でも
そういう点はあるかもしれない。確かに裕福な人は市営住宅には住
まないだろう。イルはジャフンにいじめられているファン(キム・
ドンフィ)と親しくなり、ファンも復讐に協力するようになる。
おもしろかったが、とにかく暗く、後味の悪い映画だった。院生た
ちは皆同じ年頃で、皆坊主頭、同じ制服を着ているので見分けがつ
きにくい。集団でケンカをするシーンなど、誰と誰が敵対していて
誰が誰の味方なのかといったことがわかりにくかった。カウンセラ
ーのスヌがイルに肩入れしている理由は胸が痛む。イルとウォルの
2役を演じたパク・ジニョンが良かった。同じ人には見えない。こ
の人、「GOT7」というアイドルグループのメンバーでとても人気
がある人だそうだ。ラストもとても後味が悪いが、見応えがあった。



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僕がいない場所

2024-03-28 21:43:53 | 日記
2005年のポーランド映画「僕がいない場所」。

国立孤児院に預けられている11歳の少年・クンデル(ピョトル・
ヤギェルスキ)は孤児院を抜け出し、実の母親の元へ行く。しか
し、家で彼を待っていたのは男たちとの乱れた関係を続ける母の
姿だった。そんな中、クンデルは裕福な家の子供でありながらも、
親に愛されない淋しさや美しい姉への劣等感を抱える少女・クレ
ツズカ(アグニェシカ・ナゴジツカ)と出会う。

ポーランドの小さな町を舞台に、母親の愛に恵まれず孤独に生き
る少年と、彼と心を通わせるようになる少女の姿を描いた人間ド
ラマ。新聞に取り上げられていた実話を基に作られている。国立
孤児院に預けられている詩人を夢見る11歳の少年クンデルは、
孤独な生活を送っていた。彼の反抗的な態度と、度々起こす問題
に孤児院の先生は頭を抱え、クンデルには友達もいない。ある日
クンデルは孤児院を脱走し、母親の住む家へ行く。しかしそこで
寝ていた母親の隣には見知らぬ男が眠っていた。
母親はクンデルとの再会を喜ぶが、男を手放すこともできない。
そのことを嫌悪したクンデルは、母親とも離れ、1人で生きてい
く決意をし、町の川べりに打ち捨てられた舟に住み着く。孤児院
に預けられているとはいえ、クンデルは孤児ではない。母親の育
児放棄である。舟の中にはたくさんの空き缶が放り込まれており、
クンデルはそれらの空き缶や森で見つけたガラクタを鉄くず屋へ
持っていき、少しばかりの金を得て生活していた。母親は町で男
と楽しそうに生活している。
ある時、舟に酒の匂いをさせた少女、クレツズカが現れる。クン
デルと同じ年か1つ下くらいの彼女は、舟の近くに住む裕福な家
庭の子だったが、美しく賢い姉に劣等感を抱き、それを酒で紛ら
わしていた。小学生が酒を飲むとは驚きだが、ポーランドではよ
くあることなのだろうか。孤独な思いを共有する2人は次第に絆
を深めていく。やがてクンデルはクレツズカに一緒に町を出てい
こうと話すが、彼女は返事を濁す。
クンデルは再び母親の元へ行き、町を出ていくことを告げるが、
母親はクンデルの心配よりも、先日クンデルが来て以来彼女の元
に訪れなくなった男のことを気にかけ、「私は誰かに愛されてい
ないと生きていけないの。もう家には来ないで」と言う。母親に
なり切れない、「女」でしかない人なのだろう。男がいないと生
きていけない女はいるものだ。母親からの2度の拒絶に、クンデ
ルはどんなにか傷ついたことだろう。クンデル役のピョトル・ヤ
ギェルスキは監督が見つけてきた素人の少年らしいのだが、表情
演技がうまい。
クンデルがわずかばかりの金を持ってレストランへ行くシーンが
あるが、ウエイトレスは「お代はいらないわよ」と言う。でもク
ンデルは「払うよ」と金を差し出す。ウエイトレスは「じゃあ今
度来た時はいらないわ」と言うのだが、このシーンが好きだ。ク
ンデルに優しくした大人は彼女だけだったのではないだろうか。
社会から取り残された子供たちの気持ちを思うと胸が痛む。ラス
トシーンのクンデルの表情はとても印象に残った。ポーランド映
画は本当に暗い。好きだけど。


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血の学寮

2024-03-23 21:01:37 | 日記
1982年のアメリカ映画「血の学寮」。

大学生のジョアン(ローリー・ラピンスキー)、クレイグ(スティーヴン
・サックス)たち5人は、アルバイトで古い学生寮の取り壊し作業を手
伝いに訪れた。しかし冷酷残忍な殺人鬼に次々と襲われる。

とある学生寮を舞台に繰り広げられる惨劇の模様を描いたスプラッター
・ホラー。新作ということでレンタルしたのだが、観ていると、あれ?
何だか映像が古い…。わざとこういう撮り方をしているのかと思ったが、
何と1982年の劇場未公開映画だった。ということは昔VHSしか出てい
なくて、最近初めてDVD化されたということか。「13日の金曜日」系
の王道のスプラッター・ホラーである。5人の大学生の男女が、アルバ
イトで古い学生寮の取り壊し作業の手伝いに来る。彼らは正体不明の何
者かに次々と襲われる。
冒頭で若い男性が殺されていたが、誰だったのだろう。取り壊し作業に
は学生だけでなく作業員たちも来ているので、よくわからない。もちろ
ん作業員たちも殺される。ある女子学生が車で迎えにきた両親もろとも
殺されるシーンはびっくり。といっても昔の映画なのでグロテスク描写
は控え目で、グロ耐性のない人でも安心して観られる感じ。血の色なん
かいかにも絵の具だ。
殺人鬼の殺し方が釘バットで殴ったり、ドリルで後頭部を貫いたり、釜
茹でにしたり、バリエーション豊富で斬新(私は変態か)。寮の解体作業
をしている場所なので危険なものが色々置いてあるのだ。釜は何だろう
と思うが。こういう、若者が次々と惨殺されていく系のホラーは「犯人
は誰なのか」や「誰が生き残るのか」に興味を持つものだが、犯人は割
とわかりやすかった。ただ動機がサイコパスで思いつかなかった。警察
の無能さもおもしろい。そしてラストは意外だが私は好き。87分と観
やすいし、こういう系統が好きな人にはお勧め。


毛づくろいに余念がないノエル






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