「河野さんがデジタル大臣になった途端に…成果が出てくる」と、そんな勘違いしている人がいらっしゃるようだ。

 

 

国民が行う行政手続きにおいてフロッピーディスクを使わなければならないということは、少なくとも令和以降一切ない。

最後までフロッピーが残っていたのは、郵便局など金融機関の振り込みだったが、それも遙か昔からフロッピーディスク以外でも受け付けることができるようになっていた。

 

各種の要綱や要領、施行規則など様々な場所にフロッピーディスク等での提出との記述が残っている箇所は確かにあるが、フロッピーディスク以外では受け付けないなどという対応をして、国民が不便と感じている部署があるなら是非教えて欲しいが、事実としてない。事実としてないから、当然、教えてもらえることはないだろう。

 

そういうことを理解しているのか理解していないか分からないが、そういう存在しない国民の不便を解消すると述べて、拍手喝采を受けるというのは、河野氏本人のためにも、良いこととは思えない。

 

以前に、河野氏は印鑑を廃止した。

その結果どうなったのか?

 

印鑑廃止に乗っかり、民間企業が発行した印鑑を廃止した各種書類が出回るようになった。

その結果、印鑑がない書類を受け取った側は、その書類が正当なものか分からず、已むなく相手の会社に、その書類の正当性を証明して貰うために以前はしなくて済んでいた連絡をしなければならないという事態が事実として発生している。

 

例えば、会社を辞めて保険証を返却する。その後の手続きとして、任意継続制度を利用しないで国民健康保険に切り替えを考える人が、退職証明書や今まで使っていた保険証がどのタイミングで無効になったかを証明する書類を持参して手続きをしようとしているとしよう。

 

この証明に印鑑がない場合に、その正当性があるか疑問を持たないで、スマホとコンビニのネットプリントで簡単に作れるような書類を全面的に信じて良いかという問題が発生する。全面的に信じた結果、正しい退職日ではない日付から保険証を作れば、正しくない課税をしてしまうことになる。

 

この結果、本来取るべき金額が課税漏れになったなら、河野氏は責任を取って代わりに払ってくれるかと言えば、それは否である。責任を取るのは、偽造した人ではあるが、同時に行政も責任を追及されるだろう。そういうことはめったに起きないレアケースだと強弁する人もいようが、社会保険の資格喪失月を誤魔化すことで、毎月最大で10万円近くの金額がちがってくるのだから、誤魔化したいと考える人間は残念ながら少なからず居るのが現実である。

 

仮に事実と違う書類を作成して提出したところで、無印私文書偽造罪では有印私文書偽造に比べて罪はかなり軽微で、仮に警察に行政が告発しても、誰からもチェックを受けずに自分で作成したので間違いましたと故意ではないと強弁したなら、故意であったことを証明することは警察も難しく、そのままになってしまう可能性もあるだろう。

 

技術の進歩でなんとかしたいところだし、現に社会保険の資格がいつなくなったか調べることのできる情報連携という仕組みが導入されているが、残念ながら反映にはかなりの時間が掛かっており、リアルタイムで参照できるようにはなっていない。登録されている情報は数日から数十日の誤差があると考えなければならないようだ。また、参照するために個人情報保護のための仕組みが色々と組み込まれていることから、それなりに時間が掛かり、マイナンバーカードをかざせば直ちにリアルタイムの情報がでてくるというものでもなく、現状では、書類の正当性を証明して貰うために、以前はしなくて済んでいた連絡を別途行っているため、以前よりも手間が掛かるという状況が色々なところで発生している。

 

手間が掛かるだけなら行政が頑張れば良いとコストを度外視して言っても良いが、その結果、国民の待ち時間が増えたり、折角手続きに来ても、その日(土日祝日や時間外に手続きができていたような先進的な行政機関ほど)のうちに完結できず、再度、来て貰わなければならなくなり便利になるどころか不便になっているのが現状なのだ。

 

無論、印鑑があるなら正当性を疑わなくて良いのかという問題は以前からあったから、今までの印鑑至上主義のようなものが良かったかは別の問題だ。しかし、印鑑を廃止して、どのように文書の正当性を担保するかというのを議論しないまま印鑑廃止だけを謳って、拍手喝采を受けるというのは違う。

 

その議論を抜きにして、印鑑を廃止すると一方的に進めて拍手喝采を受けるというのは私には納得ができない。

 

例えば「印鑑を廃止する代わりに、QRコードを印刷するようにし、印刷されたQRコードを読めば、政府のサイトにつながり、宛先、発行元、文書名が表示される仕組みをつくります。その仕組みは、今までの作業とほとんど同じ文書作成手順で、最後にクリックを一つおすだけで実現させる」などの方針を固め、それを実現したなら、私も拍手喝采する。

 

仮に河野氏が実現したなら、普段からの主義主張はともかく、少なくとも、この件については、評価する。

 

しかし、今、河野氏がやっていることは、ただ見境なく破壊しているだけであり、その後の創造を考えないものだ。

その代償に現場の人間が無駄な汗を流すという現状を知ってか知らずか、拍手喝采を受けて破壊だけを続ける。

 

以前に以下のように述べた。それは今も変わらない。

 

2021-01-18 20:20:01のブログより引用

デジタル化といいながら、やることはオンライン教育とオンライン手続きという程度で、今でも先進県は対応できていることだけです。

民間企業同士の商取引をオンラインで行うサポートをするという視点があれば、

①本人確認を国が代わりに行い、手続きや交渉をするオンラインでの場所を提供する。

②オンラインでの交渉内容や手続き内容を保存し、その内容を契約書面を作成することなく書面作成と同様に効果があることを認定する。

という2点をしなければ政策的にはゼロ点です。

引用終わり

 

FAX廃止というなら、FAXより早く簡単にセキュアなものを開発するために金を出すべきなのだ。

 

例えばだが、カメレオンコードのような映像に映せば、そこから情報を取得できる仕組みを入れて、規定の用紙を作る際に、宛先情報やそのエリアは数字とかの文字種別を判別する情報を含ませ、用紙と常時映像を監視できるカメラとソフトウェアを各病院に配布したなら、カメラの前で手書きした情報を集計することも可能となるだろう。

 

創造なき破壊なら、破壊しない方が良い。

創造するための破壊であるなら、私は正しく評価する。

そして、今の河野氏は評価できない。