寡黙な兵士に四本の剣が襲い掛かる!

その時! 大きな黒い影が棒のようなもので一太刀、四本中三本を
はじき飛ばした。

残る一本を華奢な兵士が銃撃で弾き飛ばす。

「大丈夫ですか、お嬢様」

大きな老紳士は紳士的口調で、寡黙な兵士を引き上げた。

「じいや!」

寡黙な兵士は高い声で嬉しそうに答える。

メットを取り、素顔が露になると……なんと、彼の正体は
太刀川姫子であったのだ。

華奢な兵士が驚いて腰を抜かす。

「お、女の子!? なんということです!」


隊牙は不適な笑みを浮かべながら、姫子のほうを向いて言った。

「ほう、これはこれは姫子お嬢様……まさかあの兵士がお前だったとはね。
驚いたよ。こちらから探しにゆく手間が省けたというもの……クックック」

彼に出来た一瞬の油断と隙をつき、真後ろから大柄の兵士が接近する。

「油断したな隊牙ァァーーッ!! お前の敗因を教えてやるッ!!
それは、自分の強さを過信しすぎたことッーーー!!!」

「オレのパワーは隊の中でナンバー1。夢太郎よりも上だッ!!
てめえのスカした面(つら)をぶっ潰してやるぜェェーーー!!!」

「うおぉぉぉぉぉおお戦重撃(バトル・ハンマー)ッッ!!!」

大柄な兵士は対ムタラ人用ブレードのモードを独自の鈍器モードに切り替え、
右手のブレードをまるで鈍器のような形状に変えていた。
飛び上がり、右斜め上からそれを振り下ろす。

彼の100キロを超える体重と鈍器の重さが重なり、威力は凄まじいもので
あった。隊牙の左頭部へまともに直撃し、彼の頭部もろとも地面に叩きつけた。

地面に大きな、クレーターのような穴が空いてしまった。

「ハァハァ……どうだ。さすがの隊牙でもこの一撃を浴びりゃあ……」

クレーターの中から、大きな男がゆっくりと起き上がる。

「齋藤……い、いくらこの隊牙といえども少しは効いたぞ……」

「なっ!?」

遠くから見ていた夢太郎が、身を乗り出して叫ぶ。

「齋藤さん!!! に、逃げろォーーー!! 逃げるんだッッ!!」

隊牙の拳が、一瞬にして大柄な兵士、齋藤の左腕、右足を吹っ飛ばした。

「ゆ、夢太郎……」

「齋藤さんーーーーッッ!!」

夢太郎が齋藤へと近づく。
息も絶え絶えに、彼は語りだした。

「お、オレとしたことが力及ばず……」

「喋っちゃだめです!」

「隊牙を止めてくれ……ああなっちまったのはオレにも責任が……。
た、たの……」

「……」

大柄な兵士は息を引き取った……。