[66] 細胞から若返るテロメア・エフェクト/エリザベス・ブラックバーン(NHK出版) | 書評 精神世界の本ベスト100

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「なぜ、年をとるスピードは人によって違うのだろう?」──
 たしかに私の友人の中にも、実年齢よりもずっと若く見える人もいれば、逆に老いて見える人もいます。もちろんメイクやファッションなど表面的な「演出」で若く見られるという意味ではありません。もっと奥にある細胞レベルから見た年齢のことです。
 また、高齢になっても元気で長寿を全うする人と、いつも病気がちで短命な人がいることも事実です。この差は何が原因なのでしょうか?

 

 本書は、こうした疑問を解明するために、最新の分子生物学研究によって明らかになった老いの原因について書かれた本です。著者のブラックバーンは、人間の寿命を司っている「テロメア」の分子的性質の発見でノーベル医学生理学賞を受賞しており、この本は著者自身が、その仕組みと働きを一般向けにわかりやすく解説したものです。
 
 では、この「テロメア」とは一体どんなものなのでしょうか? 著者は次のように述べています。
「テロメアは塩基対というDNAの長さの単位で計測され、ちょうど靴紐のプラスチックキャップのような働きをする。つまり、染色体の末端に小さなキャップを形成し、遺伝物質(DNA)がほどけるのを防いでいるのだ。いわば老化の防止キャップだが、このテロメアには時間とともに短くなるという傾向がある」
 靴紐の先(テロメア)がぼろぼろになったら、もうその靴紐は使えない。そうなったら、その紐は捨てられてしまう。彼は細胞についても同じようなことが起こると言っています。
「テロメアがあまり短くなると、細胞は分裂をすっかりやめてしまうのだ。テロメアの短縮は人間の細胞老化の大きな原因の一つである」

 

 それでは、個々のテロメアはグリム童話に出てくる死神の「いのちのローソク」のように、その長さは生まれながらにして決められているのでしょうか。そうだとすると、生まれた時のテロメアの長さで、その人の寿命はすでに決まっていることになります。本当にそうでしょうか。
 たしかに誰でも細胞が分裂するたびにテロメアは短くなります。それが細胞の老化の速度を決定し、さらにそれをもとに細胞の死期が決定されるわけです。
 しかし、最新の研究によってテロメアの長さは伸ばすことも可能だということがわかってきたのです。
「いま私たちの研究や、世界各地のラボの研究からは、驚くべき発見がもたらされている。染色体の末端(テロメア)は伸びることもある──。その発見が示唆しているのは、老化とは早まったり遅くなったりする動的なプロセスであり、ある面においては逆転すら可能だというのだ」
 したがって、私たちは老化を当然のごとく受け入れ、老化によって病気がちになるのは当たり前だと考えることはないと言っています。
「老化とは長いあいだ考えられてきたように、病気や衰退へと一直線に滑り落ちる坂道ではない。人間はみな、年をとる。だが、どのように老いるかを大きく左右するのは細胞の健康状態なのだ」

 

 そして、その細胞状態を若返らせる秘密はテロメアのしくみと働きにあると述べています。少し長くなりますが、次に引用させていただきます。
「私たちを含む科学界の人間が驚いたのは、テロメアが遺伝子コードの命令をただ実行するだけではないことだ。あなたのテロメアは、あなたに耳を傾けている。あなたが出した指示を、あなたのテロメアは吸収する。あなたの生き方は『細胞の老化を速めろ』とテロメアに指示を出してしまうことも起こりうる。何を食べるか、精神的苦痛にどう対応するか、どのくらい運動するか、子どものころストレスにさらされたか、隣人をどのくらい信頼し、どのくらい安心して暮らしているか──。テロメアにはこうしたもろもろの要因が影響を与えているらしい。そしてこうした要因が、細胞レベルの早すぎる老化を防いでくれる可能性もある。つまり、長い健康寿命の一つの鍵は、健康な細胞の再生に必要なことをあなたが行なえるかどうかにあるのだ」


 どうすればテロメアを伸ばし細胞を若返らせ、健康的で長寿を送ることができるのか。著者はそのための科学的に効果のある方法を、自己診断テストや実践プログラム付きで紹介しています。

 私も診断テストをやってみて、このプログラムを実践してみようという気になりました。あなたもぜひ一読をお勧めします。

 

【おすすめ度 ★★★★】(5つ星評価)