福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

4年ぶりのエルプフィルハーモニー

2023-01-27 08:31:23 | コンサート

4年ぶりにハンブルクを訪れている。前回は2019年6月、ベルリンにおけるドイツ・レクイエムを終えての小旅行であり、コロナの足音もまったくなく、初夏の陽気も穏やかであった。

その時に聴いたエルプフィルハーモニーでのエッシェンバッハ指揮のブルックナー「ロマンティック」の清涼で美しい響きと州立歌劇場でのノイマイヤー・バレエ団の完成度の高い舞台が忘れられず、ドレスデン・ゼンパーオパーでのティーレマンの「リング・チクルス」に心惹かれつつも振り切って、再訪したのである。

 

ハンブルクに到着して3夜目の昨夜は、エルプフィルハーモニーに於けるヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会。

ヴォーン=ウィリアムズ: 「すずめばち」序曲、グリーグ: ピアノ協奏曲イ短調
休憩
プロコフィエフ: 交響曲第5番変ロ長調

という魅惑のプログラムで、ピアノ独奏はエルプフィルハーモニー大ホールのアーティスト・イン・レジデンスに指名されたカナダの俊英ヤン・リシエツキ。

写真の通り、正面最上階にての鑑賞。リシエツキの強靱なテクニック、幅広いダイナミズム、美しく粒だつ音色は、高所恐怖症である私に、束の間、ここが高所であることを忘れさせるに十分であった。ペトレンコ指揮のオーケストラも美しく、特に第2楽章に於ける憂愁に打たれた。

アンコールは、ショパン: 夜想曲第20番。グリーグでの感心を感動に塗り替えてくれる名演で、弱音の寂寥感、魂の孤独、その繊細な感性に彼の本物を確信した。
レシエツキは今年の東京春祭でオール・ショパンのリサイタルを開催する(4月7日 東京文化小ホール)。しかも、昨夜聴いた夜想曲第20番もプログラムに入っている! と歓んだものだが、生憎、自分のレッスンと重なって行けないことが判明。都合のつく方、ぜひ、聴いてみてください。

休憩後は、この高さに耐え得る自信がなくなり、下の階のやや左サイドの空席に移動させて貰っての鑑賞。音が近くなり、音圧はグッと上がったけれど、音のブレンド具合は最上階の方が良かったかも知れない。

プロコフィエフ5番は、元々ロイヤル・フィルのサウンドが重量級でないこともあって、ロシア系、東欧系のゴリゴリとした感触とは無縁のノーブルなアプローチとなった。はじめは、それに物足りなさも覚えたが、音楽性に間違いはないし、歌心もあるし、徐々に熱を帯びてきての最終的な迫力は申し分なく、大いに満足した。

しかし、彼らの本領はアンコールのエンターテイメントにあった。1曲目(知っているメロディなのに曲名が思い浮かばない。無念・・)の軽音楽や映画音楽にも通じるような肩の力の抜けた洒落た味わいは、聴衆から演奏途中での拍手や笑いを獲得するほどであり、2曲目のハチャトリアン: レズギンカ(「ガイーヌ」より) の怒濤には、エルプフィルハーモニー全体がロック・コンサートの会場のように、或いは贔屓のサッカーチームが決勝ゴールを決めたときのような歓声に響めいたのである。やはり、コンサート会場で声を出せるって、良いなぁ。


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