2021年民法改正(2023年4月施行)をまとめておきます。

少し長くなってしまうので、全体を2回に分けます。

 

 

改正点のまとめ 

 

 

法令及び公布日・施行日

「民法等の一部を改正する法律」(令和3年4月28日法律第24号)

 

公布日 2021年4月28日
施行日 2023年4月1日

 

改正の目的

所有者不明土地の利用の円滑化

 

 

改正の概略

 

鉛筆相隣関係規定

鉛筆共有制度

鉛筆所有者不明土地管理制度等の創設

鉛筆相続制度

 

 

 

相隣関係制度の見直し

 

 隣地使用権の範囲の拡大(209条1項)

改正前民法は、「境界又はその付近において障壁又は建物を建造し又は修繕するため必要な範囲」でしか、隣地使用を認めていませんでした。改正により、その範囲を拡大しました。

 

・境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
・境界標の調査又は境界に関する測量
・第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り

 

 

 継続的給付を受けるための設備の設置権(213条の2)

 

電気・ガス・水道等のライフライン設備を設置する権利につき、条文が創設されました。

改正前民法では、排水のための低地の通水(改正前220条)等の規定はありましたが、現代的ライフラインの設置に関する明文の規定はありませんでした。

 

・必要な範囲で他の土地にライフライン設備を設置する権利
・他人が所有するライフラインの設備等を使用する権利

 越境した枝を自ら切除できる権利の創設(233条)

改正前民法は、隣地の竹木の枝が越境してきた場合であっても、自ら切除することはできませんでした。改正で、自ら切除することが可能となりました。

 

・ 竹木の所有者が催告後相当期間に切除しないとき(おおよそ2週間程度とされる)
・ 竹木の所有者を知ることができず、又は所在を知ることができないとき
・ 急迫の事情があるとき

 

共有制度の見直し

 

 共有物の変更・管理に関する規律

 

改正前民法は、共有物の変更につき、共有者全員の同意を求めていました(改正前民法251条)。改正によって、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持分の価格の過半数で決定できることが定められました。(251条1項、252条1項)

 

また、持分の過半数で行える短期賃貸借契約期間の範囲が明文で規定されました(252条4項)。

  

     

持分価格の過半数で行える短期賃貸借権等の範囲

 

一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年
二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年
三 建物の賃借権等 三年
四 動産の賃借権等 六箇月

 

これを超える場合は、長期賃貸借となり、全員の同意が必要となります。

なお、借地借家法の適用がある賃貸借については、原則として全員の同意が必要とされます(但し、一時使用や定期賃貸借を除く)。

 

 賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理に関する規律

 

賛否を明らかにしない共有者がいる場合、裁判所の決定を得て、その共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定できる制度が創設されました(252条2項2号)。

 

 所在等不明共有者がいる場合の変更・管理に関する規律

所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の決定を経て、以下のことができるようになる規定が創設されました(251条2項252条2項1号)。

 

・ 所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、共有物に変更を加えること
・ 所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定すること

 

但し、共有持ち分を失うことになる行為は除く。

 

 共有物管理者制度の創設

共有物管理者の規定が創設されました。

 

共有物管理者の選任・解任

→共有物の管理の規定に従い、共有者の持分の価格の過半数で決定(252条1項)。

 

管理者の権限

→共有者の過半数の同意を得ることなく、管理に関する行為(軽微変更を含む)ができる

但し、軽微でない変更を加える場合には、共有者全員の同意が必要(民法252条の2第1項)

→共有者が共有物の管理に関する事項を決定した場合は、これに従わなければいけない(民法252条の2第3項、4項)。

これに違反して行った管理者の行為は、共有者に対しては無効

但し、第三者に対しては対抗できない(252条の2第4項)。

 

 

 共有物を使用する共有者の義務

共有物を使用する共有者は、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を支払う義務を負うとする規定が創設されました(使用対価償還義務)(249条2項)。

共有者は善管注意義務を負うことが明記されました(249条3項)。

 

 

 共有関係を解消する仕組み

・裁判による共有物分割方法の明確化

 

改正前民法では、裁判による共有物分割の方法として、現物分割と競売分割(換価分割)が規定され、判例が代償分割(賠償分割)を認めていました。

改正民法では、代償分割ができることを明文化し、分割の検討順序を明記しました(258条2項、3項)。

 

①現物分割・代償分割(賠償分割)のいずれもできない場合、又は

②分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがある場合

③競売分割(換価分割)を行う

 

・所在等不明共有者の持分の取得(262条の2第1項)

 

共有者の中に所在等不明共有者がいる場合、共有者が裁判所に請求することによって、裁判所に申し立てた共有者(以下「申立共有者」)に所在等不明共有者の持分を取得させられる裁判をすることができる制度が創設されました。

 

・所在等不明共有者の持分の譲渡(262条の3第1項)

 

共有者の中に所在等不明共有者がいる場合、他の共有者が共有物件の売却等の処分を希望するときには、裁判所が申立共有者に所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を付与できる制度が創設されました。

 

この制度は、持分を取得するのではなく、不動産全体を取得する点で262条の2と異なります。

 

これらの制度は、共有の形態が遺産共有(相続開始後遺産分割前までの共有状態)の場合には、相続開始から10年を経過しなければ利用できません。(262の2第3項、262条の3第2項)

 

 

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