宅録ミュージシャン6月14日 「LIAR」  | 脱腸亭日常 ~MY TESTAMENT of trifling beetle~

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名誉も金も、素晴らしい音楽を作り人々を感動させようという気持ちもない、極めて不心得なアマチュアミュージシャンであり、アマチュアアーチストtrifling beetleの遺書。
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「山口百恵のアンチテーゼとしてデビューした松田聖子」に対してのアンチテーゼとしてデビューした、歌姫・中森明菜のボーカルスタイルは、総じて振り幅がかなり大きいことなのではと思う。

ムラがありすぎるのだ、音圧に。

低音とかピアニッシモなところと、エンジン全開部分との差がかなり大きく、ダイナミックスありすぎで、エンジニアは大変だろうなと同情する。

リミッターでどんくらい切るのか、コンプはスレッショルドをどれくらいに設定し、レシオをどれくらいにするか、ノイズ処理は?

空間演出は??

難しすぎる課題のオンパレードという感じ。

いいところ、個性をどれくらい、どうやって活かすかということだなぁ。




暗く、無意味なほど緊張感溢れる「LIAR」は、彼女が自殺未遂事件を起こす直前に発表されたシングル。

なので、それまでの、例えば「難破船」とか同系統のシングルとは毛並みがやや違う気がしてしまう。

というのも、この曲における中森明菜というキャラは、それまでになく生っぽいのだ。

等身大的な言葉とか、言葉の紡ぎ方、そういうものが生々しく、神々しく、ごく控えめに溢れている。

そこに、それまでの代名詞である「お得意の過剰自己演出」は皆無。

なので彼女のシングル曲の中ではかなり地味で、知名度が低いと思う。

涙を堪えながら歌っているような声も演出ではない気がする。




想像の域を出ないのだが、おそらく、この曲に精神的にシンクロしすぎたのではなかろうか。

エヴァではないが、プラグ深度が深くなりすぎたというか。

そういう観点から聴くと、この曲はすごく痛々しいし、そしてすごく恐ろしい。

恐ろしいものに聴こえてしまう。

耳を閉じてしまいたくなる。

イントロのピアノの連打が魔界の鐘の音に聴こえてしまうほどだ。




そういう意味で、この曲の孕む要素には、なんとなくアンタッチャッブルなものが多々ある気がして、沈鬱な気分になってしまう(笑)。

良い曲なんだけどね。