疫病時のジュエリー作家 (または様々な気づき) | 天然石ジュエリーのCanecryのブログ

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伝染病への恐怖から財布の紐が硬くなったのだろうか。商品の出足がよろしくない。

とかいうと誤解を招きそうだが、まぁ、以前ほど、というか、これが普通なのかな?というか、今までが異常だったのかな?というか、自慢ぽく聞こえるから、あんま言いたくないけども、コロナ前は作るそばから売れていたテイなので、在庫が何個かあるだけで、うわー、在庫、どうしよう・・・という気になるのである。

そもそもジュエリーなんてものはゼータク品で、衣食住に比べたら優先度が低く、生存にはなんの影響もない。ダイヤモンド握りしめて餓死、とかいう状態は、落語であれば笑いも取れるが、現実ではまずあり得ない。核戦争後の世界ではダイヤひとつぶではなく、米ひとつぶの奪い合いになるだろう。指が光っていても意味はない。コシヒカリのほうに需要がある。

しかしながら、我々は先進国に居住する文明人である。文明人である以上、腰ミノつけて石槍でマンモスを捕まえてその肉を貪り、洞窟に住んでウホウホしているわけではないので、自分の好きな洋服や装飾品を身に着けるという楽しみがある。

生物学的な生存を目的としていないそういった行為は、一見無駄に見えるかもしれないが、ファッション・芸術を愛でると謂った文化的な行為は、社会が先進的になると同時に発生した様々なストレスなどから我々を開放する一助になるという側面を持つ。そもそも化石人類も骨や石、貝殻などで装飾品を作って身に着けていたではないか。道具で体を装飾する行為は我々サピエンス種だけに備わった文化的特権であり、芸術を愛でることが可能な進化であり、美を体験できる特別な快楽である、と、謂えるだろう。

そして、財布の紐が硬くなった疫病下の現在は、その人類の文化的な特権を放棄し、特定の分野においては一時的に文明が停滞ないし後退したとみなすことができるのである。

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そんなわけで、世間が常態らしからぬテイである以上、わたくしにとって2022年現在は、文明が後退してしまった『核戦争後の世界』となんら変わりがなく、「世界では、食料の奪い合いか...それなら自分の作ったモノなんか見向きもされんわな」と、ばかりにひとり納得しているのだが、論理で納得できても寒い懐が温まるわけではないし、かと謂って非常時に試行錯誤してもどうにもならないので、自分の仕事の第一は ”作ること” であると、ベクトルの舵を切り、地道に努力はしているつもりだが、やはり在庫が増えるばかりだと、意気もあがらない。

無論、在庫が増えて悪いことはない。言うまでもなく在庫とは資産である。他のお店ではどうか知らないが、わがCanecryでは、原材料から加工すると、価値が数倍に増える。故にどんどん加工して手元の資産を増やすのがセオリーなのだが、やはり、仕入れ→デザイン立案→製作→販売、というプロセスの中の ”販売” が完遂できないのは、仕事が終了していない、という心持になってしまうのだ。瞳の入っていない人物画を描き続けているようなものである。仕入れから販売完了までがわたくしの作品なのだ。

普段はジュエリー作家気取り(笑)で、営業アピールもあんまりしないわたくしだが、こういう状態になって気付くのは、やはり作ったものは、お客さんの手元に届いてナンボの話であるという、当然の事実だ。

商売であるのだから、最も重要な点は金銭の授受である、という資本主義的な観点はさておき、誰かに身に着けて貰うべく製作された指環やらネックレスというものは、誰かの指や首元を飾らねばならぬものなのである。そこがゴールだ。つまりわたくしの製作物は、近年ではゴールに到達していないモノが多いということになる。

カバンサイトのリング [ショップページ]


無論、そういった状況下でも売れる商品はあるので、そういったものを作り、口に糊しているわけだが、同じものばっかりをつくっていると飽きてしまう。無茶苦茶に贅沢で我儘なことを謂っているようだが、人気のカバンサイトのリングばっかり連続で30個も作っていたら、確かにお金は儲かるが、もう何が何だか分からなくなる。

そこで、わたくしは所謂、ひとつの製品デザインをいくつも同じように完璧に仕上げる職人気質ではないのだな、と、気付くのだ。職人さんの画一性に至るオペレーションは素晴らしい仕事だとは思うのだが、残念ながらわたくしにその才能は無いようである。オリジナリティと個性を重視した1点ものの装飾品を作るのが、自分の仕事である。

ハーキマーダイヤモンドのリング [ショップページ]


しかしながら、趣味にあかせたブツを作ると、売れないのだ。疫病からこっち、これがビックリするほど動かない。SNSで「新作つくりましたよ~、買ってね~」とかアップするとお客さんはサイトに見に来る。だいたいこの告知で1商品あたり50~100人くらいは見に来る。以前であれば、売れるモノは数日、いや、即日で売れていた。

Canecryの商品の動きはちょっと特殊で、一瞬(または数日)で売れるか、そうでなければ数ヶ月売れない。全ての商品がこの2つのパターンに当てはまっている。つまりはそれほど趣向性が強く、お客さんの好みにデザインがドンピシャで合えば、すぐに売れるし、そうでなければ見向きもされないという極端なデザイン戦略を採用しているのだ。

そしてそれはこれまで一定の効果を上げて来た。当たり障りのないそこらへんのジュエリーショップで売っているようなデザインだと、そういったデザインのものを販売する多数のライバルと争わなければならない。個人事業者のみならず大手のブランドともシェアの奪い合いである。大型ショッピングセンターに挑むホットドッグ屋台だ。そんな戦いを挑むほど、わたくしは愚かではない。

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長々とつまらない文章を書き散らしたが、つまり何が言いたいのかと謂うと、旧作を値下げしたから買ってね、と、こうである。

簡単に『値下げしたから買ってね!』とか言うよりも、なんか効果あるかな~とか思ってダラダラ書いてみた。いや、売れ残りを売りつけよう、とかそういうんじゃないんです。違うんですよ~。

サファイアのリング [ショップページ]


アレキサンドライト(シンセティック)のリング [ショップページ]


アメジスト原石のリング [ショップページ]


デュモルチェライトinクォーツのリング [ショップページ]


ペリドットの原石リング [ショップページ]


おわり