講演「なぜ日本人技術者が海外ファッション業界で評価されるのか」概要 7−1 | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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講演「なぜ日本人技術者が海外ファッション業界で評価されるのか」概要7-1


7-1. 日本アパレルの技術者育成への示唆1

<海外での経験者を国内で積極的に採用する>

ファッション業界における技術者と言われる職業には様々なものが存在します。すぐに思いつく仕事といえばパターンメーカー・機屋(テキスタイル)・縫製工場などですが、これらの技術者(テキスタイルメーカー、縫製工場など様々)はデザイナーからの需要があって初めてその仕事が成り立ちます。せっかくの技術もそれを使いこなす人間がいなければ何の意味も持ちません。つまりデザイナーの育成と技術者育成とは大きく影響し合っているのは明らかで、デザイナーが要求するレベルが高ければ高いほど、技術者もその腕を磨いていくことができるのです。つまり、日本の技術者育成と日本のデザイナー育成とは同義だということになります。では、そのデザイナーを育成するにはどうすればいいのでしょうか。私は以下の3点に分けて考えます


1. 海外での経験者を国内で積極的に採用する

2. 海外進出推進のビジネスモデルと並行し、国内マーケットの刷新を図る

3. 作り手と消費者との距離感を再考察する



それでは各々の点に分けて考えていきます。

1. <海外での経験者を国内で積極的に採用する>

これは既に上記したことですが、海外での経験は間違いなく日本ではできないことであり、ファッションという意味で考えた場合海外でしか得ることのできないことは多くあると思います。それらの経験を積んだ人々が日本に戻ることを将来の選択肢の一つとして考えられないような今の現状は、日本のファッションにとって良いことだとは思えません「日本には日本のやり方があるんだ」「海外でやっているからといって特別視するな」ということをしばしば耳にしますが、それが本当に有効に機能しているのであれば日本のファッション産業自体がその恩恵を享受しているはずです。しかしながら現実は到底その様には感じられません。ということは、何かを変えなければならない、そういう時期に来ているのだと思うのです。例え今の日本の現状が”良い”のだとしても、現状をさらに良くする努力は間違いなく必要です。

昨今ではブランドのデザインはもちろんそのブランディングまでを統括する代表者のことをクリエイティブディレクターと呼ぶことが多くなりましたが、例えばこの仕事はデザインセンス、ビジネスセンス、人脈等、様々な点で高い能力が求められます。ですが、私の知る限りではこの立場に海外で働いている日本人を採用している例は聞いたことがありません。ですから、今の現状に打開策を打ち出したいならば、ブランドを大きく刷新するという意味で海外経験者を採用することは一つの手だと思います。日本国内では全く新しい動きのため注目も浴びるだろうことと、その採用する人間のキャリアそのものを利用することができます。日本のマーケットを知らない人間に任せるのはリスクがあるという人もいるでしょうが、それは全くの間違いで、日本のマーケットが求めるものを常に作れる人が今トップにいるのなら、どの会社も苦労はしていないはずです。本当に大事なのは、多くの人が身につけたくなる魅力的なものを生み出し、今を感じるモダンなものを創り出すセンス、それらを持っているかどうかなのです。日本のマーケットがどうだと縛られていることこそがグローバルな視点から外れているのです。日本でも人気の海外の有名ブランドもアジアのマーケットを意識こそしても、アジアのマーケットのためにコレクションは作りません。それでもアジア人にとって魅力的に映っているのです。この現実を直視し、日本もその姿勢を追求しなければならないのだと思います。新しい風を入れることは初めはおそらく色々意見の食い違いなどもあるかもしれませんが、衝突すること自体がコミュニケーションであり結果として切磋琢磨することになり、時間が経てば必ず新たな段階に到達することになると考えます。


第7章第2項は 『日本アパレルの技術者育成への示唆2-海外進出推進のビジネスモデルと並行し、国内マーケットの刷新を図る』です


<参照用既出リンク>

はじめに
第1章 ファッションのグローバル化 
第2章 世界で活躍する日本人 
第3章 日本人の海外で評価される一般的な特性
第4章 3Dデザイナーの存在
第5章 ヨーロッパのファッション業界の実態、ものづくりに対する意識の違い
第6章 ”日本人が重宝されている”の否定的側面

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