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2020年12月23日水曜日

「卑猥」と「芸術」の境界線



「卑猥」と見るか「芸術」と見るか


上野の美術館で開かれた中央展で奨励賞を獲得した女子高生が話題となりました。


【非コラ】中央展で性的な絵が奨励賞受賞 描いたのは女子高生 フェミさん苦言 : まとめダネ!


この絵が「卑猥」であると目に留まり、フェミニズムを推進するTwitterアカウントから苦言が呈されました。


…と、ここまでは上記に掲載する記事から詳しい内容を知ることができますが、今回は「卑猥」と「芸術」の境界線について少し考えてみたいと思います。


「性的に興奮する絵」の問題は、それこそ人類が絵を描き始めた時から議論が起こっていました。


権威ある絵画展(フランス国家主催のサロン・ド・パリなど)においても、長らく官能的な裸婦像の出展は控えられ、その後は時代の変化やサロン・ドートンヌの出現により、いくらか保守的な思想が緩和されたという経緯があります。


しかしながら、このお話はあくまで18~19世紀頃の大昔の出来事であり、時代のトレンドとなる現代アートの考え方はまったく違います。


現代アートについて語る、村上隆さんのこんな動画を見つけました。


動画の引用元:Mori Art Museum 森美術館公式チャンネル


16:00からの内容になりますが、簡単な要約を以下に記載します。


●ある展覧会のボブ・フラナガンの映像作品について語る

●内容は「怒張した男性の局部に釘を刺して血が噴き出す」というもの

●映像は5m×5mの壁にプロジェクションで映し出す

●展覧会には大人はもちろん子供連れの親子まで訪れる

●フラナガンの強烈な作品を見て印象に残り、『Hiropon』や『My Lonesome Cowboy』を村上氏は生み出す

●日本にいたら思いつかない作品だと村上氏は語る


『Hiropon』と『My Lonesome Cowboy』についてはググれば作品を見ることができるため、ここでは割愛させていただきます。


『My Lonesome Cowboy』に至っては「さすがに悪ノリじゃない?」と現地の人に窘められたそうですが…出展してみれば16億円で落札されたので、現代アート作品として不動の地位を確立したことになります。


作品を披露する「場」を選ぶ戦略が必要



…さて、話を元に戻しましょう。


奨励賞を受賞した作品ですが、「立ち位置」が違えば芸術作品として世界から認められる可能性があります。


大切なのは、こうした作品を披露する「場」を選ぶ戦略が必要なのです。


作品を描いた方はSNS(Twitter)を通して大々的に知られる存在になりましたが、その後フェミニズムを推進するアカウントに通報され、自身のアカウントは凍結されるという憂き目に遭いました。


現代においてSNSのアカウント凍結は死活問題です。


今は凍結も解除されていますが、作品を宣伝したつぶやきは削除されています。


一方で、ネット閲覧者による女子高生の名前を特定するなどの二次被害もあり、普及活動としての傾向は芳しくないようです。


今回、奨励賞を受賞した作品は表現が卑猥であったこと、作者が未成年であったこと、公式の展覧会で披露されたなどがネット閲覧者の目に留まり、論争が巻き起こりました。


論争になれば煽る人や攻撃的な人、素性を調べたりする人が次々と現れるため、芸術家を守る土台のない日本では、息苦しい状況が続いてしまう傾向にあります。


「そういうことではなく倫理観の問題だ」「同人誌の会場で作品を展示すればいい」など色々と意見はあるかと思いますが、作品を披露する場さえ間違わなければ、芸術作品として世界から認められる可能性があることは事実なのです。


それがどの国、どの場所なのかは分かりませんが、少なくとも日本では「公式の場でこういう作品はまだNG」ということが理解できるため、クリエイターたちは頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。


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