「家賃を払っていない味」は、飲食業界という我々から見やすいところにある格差社会の縮図
飲食店(個人経営の)を評価する際に「家賃を払っていない味」という表現があることを知りました。
最初は悪態の一種かと思ったら、逆でした。
味をほめている。
これは単なる比喩ではなく、飲食業界の不動産事情を鮮やかに浮き彫りにするフレーズでして……。
まるで、飲食業界で格差社会を濃縮して見せられたかのような衝撃です。
「家賃を払っていない味」の意味するところ
このパワーワード「家賃を払っていない味」には、大きく分けて2つのタイプがあります。
1. 老舗の償却済み物件。歴史が隠し味的な。
いわゆる、長年商売を続けて「ローンを完済」した存在です。
住宅兼用だったり店舗専用だったりしますが、ローンが終了して経営が楽になった状態。
その分、料理の原価に予算をさけるため、驚くほど安くて旨い一品を提供できるケースがあります。
たまにテレビやWebニュース記事で取り上げられている「昭和みたいな価格設定のお店」は、このタイプではないかと。
2. 太い実家による恵まれた経営基盤。道楽で主婦がはじめたカフェみたいな。
一方、相続で物件や資金を引き継ぐなり、太い実家が場所を提供してくれたりとか、そういうケースもあるんですよ。
茅ヶ崎みたいな片田舎や、もっと地方だと、今でもそういうのがけっこうある。
昔から、飲食店を志す人の中には、やたらと軽い気持ちでカフェ(喫茶店)をはじめる人がいるじゃないですか。
普通の人が店舗の必要な新しいビジネスをスタートするなんて、大変なことですよ。
裏を返せば、普通じゃない人が存在していて、道楽カフェをはじめている実例がある。
そういうところは家賃コストゼロだったり、あり得ない好条件で運営されているので、食材に投資できるわけです。
結果、提供されるのは
「うわ〜、おいしい!これって家賃を払っていない味だわ!」
となるわけです。
オーナーご本人は、「自分の料理の腕」と思っているかもしれませんが、実際には「太い実家という最強の調味料」がしっかり店を支えている……。
昨今のカフェという業態は特に要注意のため、ベンチマークとする店舗は見極めてください。
「家賃を払っている味」の悲哀として、普通の人の頑張りはどう評価されるべきか?
一方で対極となるのが「家賃を払っている味」。
家賃を払っている = テナントを借りる飲食店のオーナー。
この人たちは、腕の良い真面目な調理師であったり、厳しい修行を経ての独立というケースが目立ちます。
各オーナーさんは日々努力を重ね、美味しい料理を提供しようと頑張っています。
ラーメン屋とか、とくにそうでしょう!
今週のお題「ラーメン」
駄菓子菓子、圧倒的に優位なのは「太い実家」をベースにした「道楽で主婦がはじめたカフェ」なのです。
なぜなら、あの方々は家賃という重荷を背負っていないから、価格面のアドバンテージがものすごい。
味も設備投資も、ものをいうのはカネです。
賃貸で経営するというのはビジネスとして普通のことであるはずなのに、厳しいなぁ……。
物価高で個人の生活は苦しくて、価格の高くなるお店には行けなくなる。
そういう負のスパイラルが起きている状況で、家賃を払って頑張っている料理人の店がどんどん苦しくなる。
頑張っている料理人のお店を応援したいんだ
コロナでGo to Eatやってたときもそうなんですが、私は賃貸で頑張って商売をしていそうなお店に行くようにしていました。
お店の紹介に「どこそこで修行したあとに独立しました」とか書いてあると、わかりやすいです。
実家が太い人でも戦略的に「私だって立派に苦労している」アピールをしている可能性はあるので、紹介文で100%とはいえませんが。
ともかく。
「家賃を払っていない味」は、単なる料理の評価ではなく、社会格差にまでスパイスを効かせた、奥深い“風刺的グルメ評”なのでござる。