北西ドイツのライン河流域にある、沢山の邦人が住むことでも有名なデュッセルドルフから南西に25㎞離れてデュック城館が建っているのですが、これはこの地方で最も重要な堀のある城のひとつです。
お城の入り口への道 ・ お城の入り口
この要塞に関する記述が初めて現れるのは、11世紀末の古文書だそうです。14世紀の後半に近隣の貴族たちの争いに巻き込まれて破壊されましたが、10年後に再建されました。そして17世紀中頃、要塞が城館風に改築されたのです。それに続いて18世紀にはバロック様式への改築と拡張がなされ、19世紀の末頃には南翼棟が再設計されました。しかし、この南翼棟は1945年に爆弾によって深刻な被害を受けたそうです。そして第二次世界大戦後、デュック城館は1961年に復元されました。その機会に、18世紀に織られた中国の絹の壁紙が部屋のひとつに適用され、その図柄は中国の職人や農民の日常のシーンを示しているとのことです。20世紀の終わりに、相続人である女性がお城と庭園を庭園芸術と景観文化の中心地としてデュック城館財団に寄贈しました。
お城 1 & 2
お城 3 & 4
お城 5 & 6
デュック城館に関して、歴史的な観点から2つの点が注目に値します。 ひとつは、お城は900年以上にわたってザルム・ライフェルシャイト・デュック家が所有していて、20世紀末に財団が設立され、庭園芸術と景観文化の中心地となった事です。もうひとつは、ケルン、ユーリッヒ、ゲルデルンという権力の中心が居並ぶ中において、数世紀にわたって自治を維持することが出来た事です。
こんにち、城館の施設は堀に囲まれており、その周りは広大な英国風の風景公園です。デュック城館とその周辺では、ほぼ一年中数多くのイベントが開催されています。例えば毎年恒例の「イルミナ」で、宮殿と公園がライトショーと雰囲気のある音楽で満たされます。さらに芸術作品の展覧会もしばしば開催されるのです。
私は古城を訪れるときは何時も、古色蒼然とした雰囲気の建造物を期待しています。
果物 & 植物店 ・ 入り口の建物
お土産店
ところが、デュック城館に近づいて行くとまずガラス張りの大きな店があります。お城に属する農場かどうかは知りませんが、近くの農場で栽培した果物や植物などを販売しています。さらに奥に進むとこれまたガラス張りの建物があり、ここで入場料を徴収されるのですが、中に入るとまず絵葉書や城館の写真集やお城ゆかりのお土産品などの売店があります。古城を見学に来たのかレジャー施設に来たのか判らなくなりそうでした。
庭園の一部 ・ 城館の中庭
そして庭園の一部を見ながら少し歩いてお城の建物に到達します。かなり広く、城塞風の建造物を見ながら歩いて行くと一番奥の城館の中庭に出ます。シーズンオフだからでしょうか、内部の見学は出来ません。
さて、前述の風景公園は18世紀の末頃にそれまでのバロック様式の庭園が放棄され、ザルム・ライフェルシャイト・デュック家のヨセフ王子の下で英国風のスタイルで設計されました。王子自身が植物学者であり、特に公園や複合施設の庭園で栽培されているすべての植物に関する書籍の著者でもありました。彼はまた、主に植物学の本を所蔵する城内図書館を設立したのです。ドイツ記念碑保護財団は、「非常に多くの貴重な樹木や植物の希少性」を理由に庭園と風景公園を高く評価しています。20世紀の末以来、城館は財団によって管理されています。
公園から見た城館 1 & 2
公園から見た城館 3 ・ 公園内の橋
2002年、デュック城館はノルトライン-ヴェストファーレン州の分散型ガーデンショーの際にその中心でした。私が通過してきたガラス張りの建物はこの時に造られたのでしょう。ガーデンショーの目的は、24ヘクタールのかつての耕作地に統合公園を作成することによって、敬意を持って扱うべき既存の構造及び用途を公園としての新しい用途と融合させることでした。
枯山水 ・ その横の竹林
このイベントでは、敷地内にさまざまなテーマガーデンが造園されたのですが、中でも枯山水が造られ、その横に竹林があるのに驚きました。自然の竹林はドイツにはないのです。
レストランの外観 ・ その内部
昼食を、お城の建物のひとつにあるレストランで食べました。現代的なビストロ風の店です。
まず、栗クリームスープを食べました。少々煮詰まっていましたが、栗の味はしました。
栗クリームスープ ・ ヴィテッロ・トンナート
次の料理はヴィテッロ・トンナート(Vitello tonnato)というイタリア料理です。仔牛肉の薄切りとサラダ菜にツナソース (ツナ、アンチョビ、ケッパー、サワークリーム等をすり潰したソース) をかけてトマトとケッパーを添えています。イタリアレストランで前菜として供される料理です。軽くて、美味しくいただきました。
ヴァイツェンビール
飲み物はアルコールフリーのヴァイツェンビールでしたが、寒くなったのでビールを飲むのもそろそろ終わりかな、と思った次第です。
〔2022年12月〕