地球温暖化による気候変動によるニュースが年々増えてきている。
確かに、ここ100年のデータで切り取ってみると、北半球の気温はおよそ1℃上昇している。
平均気温が1℃上昇するとは、大した事の無いように感じるが、東京と宮崎の平均気温差が約1℃なので、東京が宮崎になったと思えば、肌感としてもその大きさが分かる。
スーパーコンピューターの予測では、今後100年で数℃から最大5℃の気温上昇が読まれている。
5℃差といえば、東京が奄美大島になるという事でもある。
農業だったら、1℃も変わったら取れる作物や時期も変わってくるので、5℃も変わったら大問題だ。

地球にとって何にが「正常」なのかを考えるには、過去の地球がどのような状態だったかを知っておく必要がある。


●5億年の気候史
過去5億年の機構変動を観てみると、温暖時期と寒冷の時期を繰り返してきている。変動幅はおよそ10℃。このタイムスケールでみると地球の気候は変化し続けいることが分かる。
「正常」と表現される定常状態が背景にあって、そこから時々逸脱するといったパターンは見えない。とにかく、たえず変化し続ける。
そして、このタイムスケールでみると、現代が大きな傾向の中では、むしろ寒冷な時代であることも見て取れる。今から1億年前は地球は今よりもはるかに暖かく、北極・南極にも氷床は存在しなかった。

●今は寒冷期!?
では、直近500万年のタイムスケールで見てみると、どうなるのか?
現在の第一の傾向は、およそ300万年前頃から地球上では徐々に寒冷化が進行していることが分かる。
第二の傾向は、気候の振幅が増大してきているという点だ。
つまり、寒冷化と連動して、不安定性も同時に増してきている。

●現代は例外的な時代
ではさらに直近80万年で見てみると、どうなるのか?
このタイムスケールで見てみると、増大する不安定性の中では、もっとも温暖な時代に当たっている。しかも、現代は例外的な温暖な時代であることが分かる。現代と同等あるいはそれより暖かい時代は、全体の中の1割ほどしかない、残りのすべては、「氷期」である。
数十万年のスケールで見た場合でも、正常な状態とは氷期のことであり、現代のような温暖な時代は、氷期と氷期の間に挟まっている例外的な時代に過ぎきないという事である。

参考文献:人類と気候の10万年史
中川毅著 講談社 ブルーバックス
2017年発行