とある地方都市。交通事故で、1人の女性が命を落とします。彼女を轢いた車を運転していたのは宗方秀一、そして、親友の森田輝が助手席に乗っていました。秀一は、勤務先の大手ゼネコン副社長の娘、白河早苗との挙式を目前に控えていました。輝は、その司会を頼まれており、結婚式の打ち合せに向かっており、約束の時間に遅れていた2人は、女性を放置して、そのまま打ち合せに向かいます。轢き逃げ事件として警察による捜査が始まります。事件を担当したベテラン刑事、柳公三郎と新米刑事、前田俊は、秀一と輝を逮捕し...。

 

轢き逃げ自体は、左程、難事件というワケではなく、特に盛り上がることもなく解決します。けれど、その裏には...というオハナシ。

 

轢き逃げという一つの事件の解決だけではなく、被害者、加害者、捜査する側の状況が描かれます。加害者側にも、直接事件に責任のない秀一の妻が配置され、秀一の妻と被害者の遺族との関係についても言及され、一つの事件を巡る人間関係や感情のぶつかり合いが重層的に炙り出されている点は本作の魅力になっていると思います。特に、ラストの秀一の妻と被害者の母親が語り合うシーンは秀逸。

 

ただ、被害者の父親がいきなり捜査を始め住居侵入までしてしまい"右京さんじゃないんだから"と突っ込みたくなったりする場面があったりして、観ていて、気持ちが引けてしまう部分も散見されました。題材も良かったし、ストーリー自体も悪くないので、前半から後半にもうちょっと巧く展開することができれば、グッと面白くなった気がします。

 

そして、秀一と輝が前面に出る前半部分と、水谷豊と檀ふみが演じる被害者の両親や岸部一徳が演じるベテラン刑事に焦点が移っていく後半部分の中心人物を演じる俳優たちの演技力に差があり過ぎるのも難点。後半に向かって物語が引き締まっていくこと自体は良かったのですが、もう少し均してほしかったような...。

 

秀一と輝が遊園地で遊ぶ辺りも、どうも、薄っぺらな感じで...。輝はともかく、秀一については、もっと厚みがある人物として描かれている感じがあるだけに違和感ありました。ペラペラだった秀一が、この経験を通して深みを出していくということなら分かるのですが、そんな雰囲気でもなかったような...。

 

全体としては、悪くないけれど、今一歩といった印象でした。

 

 

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